ISO9001との関係(2つのシステムの効率的運用)

2つのシステムを効率的に動かす

品質のマネジメントシステムはISO9001、環境はエコアクション21と二つを運用している方々、あるいはマネジメントシステムの入門としてエコアクション21に取組み、これからISO9001に挑戦しようと考えている方々も多いでしょう。そんな場合に参考にしてみてください。

「統合マネジメントシステム」という言葉もありますが、そう大上段に構えず少しづつ効率化を進めてみましょう。最初から「統合」にこだわると結構、大変かも知れません。まずはお互いの共通点を見つけ出し、労力を減らし効果を高めることを目指します。

1.目標をできるだけ重ねて目標の数を減らすことを目指す

ISO9001、エコアクション21どちらも骨格はPDCAサイクルであることはご存知のとおりです。PDCAサイクルとは P:目標とそれを実現するための計画を立てる D:実行する C:どの程度実行できたか評価する A:評価を基に次期への指示を出す 簡単に考えるとこうなると思います。ですから、PDCAサイクルの一番出だしの部分である目標をまずできるだけ重ね合わせることを考えましょう。

このことを理解していただくためによくある品質目標と環境の目標の関係について表にしてみました。(◎大いに効果あり  〇効果あり  △少し効果あり :判断の結果は業種や仕事内容で異なります。)

表 品質目標と環境目標の関係

品質目標 環境との関わり(EA21の必須5項目)
CO2削減 廃棄物削減 水使用量削減 化学物質削減 製品サービス
1.不具合ー製品の不具合/不良の削減・再加工もしくは返品の削減 
2.苦情ー苦情数(または%、または金額)の削減 
3.納期の厳守-作業の効率化、全体を通じたミスの削減
4.コストーコストの低減・ムダの削減 
5.効率ー運用効率の改善 
6.プロセスの能力ープロセス能力の向上・変動性の低減 
7.利益ー利益の向上 
8.安全ー安全の実績向上 
9.従業員ー社員の退職低減・社員の能力向上 
10.スピードー製品のリードタイムを低減・オンタイム納入実績の向上 
11.売上高ー売上高増加・マーケットシェアー向上 
12.在庫ー在庫回転の向上・在庫の削減 
13.改革ー改革・新製品の増進 

例として製造業の場合を考えてみましょう。品質目標として「不具合 不良率の削減」に取組んだとします。不良率の削減に成功すれば余計なモノを作らないので省エネ(CO2削減)になります。もちろん、不良品の出る量は減るので廃棄物も減ります。また、工程に水や化学物質を使用していれば余計なモノは作らないので、当然、これらも減ります。また、不良率を削減すれば「苦情の数」、「コスト」、「納期の厳守」、「効率」の改善になります。品質目標は環境目標と関係しあっているだけでなく、他の品質目標とも関係し合っています。

次に環境経営目標の面から考えてみましょう。「環境との関わり」の「CO2」削減を実行するのにどんな方法があるかを考えてみます。上の表を今度はCO2削減の部分から見て◎、〇のついている品質目標を見て下さい。たくさんあるでしょう。空調機の管理やコンプレッサーの設定圧や漏れ対策は直接上の表には出てはきませんが、こういったものはエコアクション21の独自の活動としても良いですし、4.コスト や 5.効率 の項目として扱うこともできるでしょう。うまくいけば、電力使用量削減につながり、7.利益 に直結していることが解ります。エコアクション21の側から見れば、CO2削減のできる品質目標はたくさんあるということになります。

以上のことをまとめると品質目標は環境目標と大いに関係がありますし、一つ一つの目標はお互いに関係し合っていることも多いのです。ですから現在、将来の自分たちの会社(組織)にとって重要なことは何かを考え、目標を絞り込むことが多くの場合可能ではないでしょうか。品質で目標が5つ、環境で5つでは多すぎると思いませんか?

 

2. システム全体の融合

前述のようにISO9001にしろエコアクション21にしろ、目標を達成するということが最大のポイントですから、ここを重ね合わせることができればかなり合理化ができます。ただ、完全に重ね合わせることは不可能です。そんなことが可能であれば、ISO14001とISO9001ははるか昔に一つの規格になっていたでしょう。ということで、重なる部分と重ねられない部分があることははこちらの図でお確かめ下さい。

ISO9001とエコアクション21の関係図

この図を見るともう一つ解ることがあります。右側の図の黄色い部分が経営とするとエコアクション21もISO9001も黄色をはみ出している部分はありません。これはエコアクション21の活動もISO9001の活動も経営に関係ない部分(すなわち審査を受けて資格を維持するためだけにしている活動)はないということです。そうです。実際に役に立たない文書、ただ、審査の時にしか見ない記録などはないということです。

 

3.事務局も一つにした方が良いか?

ここは結論をはじめにお話ししますと「どちらでも良い」と思います。一つにすると物事はスムーズに進み易いというメリットはありますが、中小企業では 「一つの事務局=ひとりの人」と言うことになりかねません。労力がひとりに集中してしまう危険性が高いですし、ものごとの進め方も複数で話し合って決めた方が良いことが多いので、複数の人で事務局の仕事を分担するのが良い気がします。

そこで、事務局をISO9001を主に分担する人とエコアクション21を主に分担する人の2人として、二つのマネジメントシステムの共通部分に関して、どちらが分担するか話し合って決めておき、お互いに事務局の仕事を減らすのはいかがでしょうか。参考にしてみて下さい。

 

4. ISO9001とエコアクション21の関係を図にしてみました