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月刊中小企業レポート
更新日:2006/03/30

特集 地域ブランド確立による地域活性化
~地域ブランドの構築と地域団体商標の位置づけについて~

2 地域ブランドの取り組み事例

■事例1 馬路村のゆず商品(高知県 馬路村)

 地域ブランドとは、地域に対する消費者からの「評価」・「期待」であり、地域が有する無形資産のひとつである。

1 「ゆず商品」の売上等
 高知県にある馬路村は人口約1,200人、村の予算は約18億円である。このような中でゆず商品等の昨年の売上高は村の予算を超える約31億円7千万円であった。売上の半数は産直販売による。また売上の8割は、「ぽん酢しょうゆ」と「ごっくん馬路村(ゆずジュース)」の商品が占めている。ネット販売は2億円弱であり、顧客は約35万人いる。

2 ブランド戦略について  作り手はブランドを作れない。なぜならブランドとは、お客様が決める価値だから…。お客さんに間違いないといわれる「安心」や「信頼」が生まれたときにブランドとなる。この考え方を基本として「情報」「価値」「融合」「顧客満足」を考慮した地域ブランドづくりを行ってきている。

(1)情報
 まずは村のイメージづくりからスタートした。村が知れ出すとやっと商品が売れ出す。ゆずという商品を通して村をPRしてきた。人間は人間に反応する。田舎は都会に憧れ、都会は田舎を欲する。堂々と田舎を売り、人間の商品化を図ってきた。
(2)価値
 価値には「物質」と「精神」がある。物質だけだと工業化し価格競争になり大手に勝てない。価格から付加価値化へ、がブランドにつながった。「ぽん酢しょうゆ」は足し算、「ごっくん馬路村(ゆずジュース)」は引き算の発想から生まれた商品である。徹底的に大手ができないことを考えてやることがポイントとなる。
(3)融合
 うちで生産したものを(1次)、うちで加工し(2次)、うちで販売する(3次)、そして得た利益を生産に戻す。生産するときは「安全」「効率」を考え、エンドユーザー(消費者等)を常に考慮したものづくりを行う必要がある。「BtoB」ではなく、「CtoBtoC」、つまりお客様の声を商品に反映し、それを販売することが大切である。
(4)顧客満足
 「顧客は不満を言わない」ことを念頭におき対応することが必要。不満のある顧客は、不満を言わず離れていってしまう。ブランド維持には品質が重要。売れ始めると品質が下がる傾向があるので注意が必要である。また、請求書送付等でも、例えば秋には紅葉を同封し季節感を演出する等、工夫を凝らしたり、ギフト商品発送時には送り主へのお礼用の葉書を同封する等の顧客満足を実践している。

■事例2 十勝ブランド(北海道)

1 十勝ブランドについて
 十勝地域の基幹産業である農畜産物を、十勝独自に食品の生産振興と利用拡大を促すと同時に、いま消費者が食品に対して求めている「安全」「安心」を提供できるシステムとして十勝ブランド認証制度を活用した地域ブランドづくりを行っている。ブランド化検討品目は「チーズ」「牛肉」「納豆」「豆腐」などで、現在「チーズ」に関して行われている。

(1)コンセプト
「豊かな大地・十勝から、安全・安心で良質な食品を全国の食卓にお届けします」
(2)基本的な考え方
◇安全の追求
 食品衛生法に定められている総合衛生管理製造過程承認制度の導入のため、食品製造加工事業所の自主的衛生管理システムの普及を進めている。
◇安心の追求
 安全と美味しさを追求した十勝産の農産物、加工食品を安心して購入してもらうため、十勝で作られ、正しく表示された、確かな十勝産の製品を提供している。
◇美味しさの追求
 官能評価で認められた製品だけが認証される。

2 十勝ブランド認証基準
 「安心」「安全」「美味しい」の3つのキーワードを満たしている加工食品を十勝ブランドとして認証する。すなわち十勝管内で生産された原料を主原料として、十勝管内で衛生的に製造され、正しい表示がされたものである。

(1)認証の対象品
 加工食品に限定(一次産品は除外)
(2)認証基準
① 安心 商品カルテの作成
② 安全 衛生管理システムの敢行、品質管理システムの敢行
③ 美味しい 官能評価システムにおいて、所定の得点以上を取得

3 今後の目標と課題
 今後の目標は、次の通りとなる。「手づくりの特性を維持すること」「設備投資は慎重に行うこと」「地元、観光客、レストランへの諸費を拡大すること」。そして、この目標を達成するために解決すべき課題としては、主なものとして次の4つが挙げられる。
①人材育成などの人材面
②製造効率や安定化などの技術面
③情報発信などのPR面
④十勝独自の新商品の開発面
 地域ブランドの推進のポイントは、「産」「学」「官」+「金(=金融機関)」の連携。地域ブランドの確立を行うためには、常に資金確保が必要となるため、金融機関を含めた一体的な取り組みが必要である。

■事例3 上勝ブランドの「彩(いろどり)」(徳島県 上勝町)

1 「彩」誕生から現在まで
 上勝町は人口約2、100人。高齢化比率は約46%であり、県下1位である。高齢化比率が高いのに1人当たりの医療費は県下32位と低いのが特徴。ゴミの分別にも力を入れ、2020年までにはゴミをゼロにしようという取り組みも行っている。
 このように高齢者の多い町で女性の仕事はないかを模索中、たまたま立ち寄った大阪の料理屋で、食べるものより飾られているものに感動していたお客様がいたことにヒントを得て、四方を山々に囲まれた自然環境の中で採取された葉や花を出荷する「彩(いろどり)」という商品が生まれた。
 当初は、4人からスタート。商品を使われている現場を知らなかったため、料亭通いで使い方を学んだり、料理人に来てもらい使い方、商品のいわれを学ぶなどを行い、関心が高くなるにつれて生産者が急増した。
 生産主体は女性や高齢者。平均年齢68歳、170名余りが参加している。現在の売上は約32億円。

2 商品の特徴と出荷の仕組み

(1)商品の特徴
 葉っぱが売れるのであれば、どこでも売れる。葉っぱでないところに価値があり、「商品」+「地域」+「人」+「環境等々」=「地域に対する評価」となる。地域の魅力を価値として商品に結びつけることが重要である。
商品の特徴としては
① 行事・イベントにより注文が変動
② 短納期・即日発送を行っている
③ 多品種・少量生産、個別個販
④ 「紅葉」「なんてん」等の約320種類の品揃えがある
(2)出荷の仕組み
 町の防災無線を活用しているのがポイント、他との差別化につながっている。「無線ファックスなのでみんな平等である」「品目毎にも送信可能である」「役場の無線なので送受信料は無料である」「注文取りは早い者勝ちで、1秒が勝負である」などの特徴がある。高齢者専用パソコンを開発したことも業務をしやすくしている。

■その他の事例

 その他の事例としては、次のようなものがある。

1 関あじ・関さば(大分県 佐賀関町)
 ターゲットは、料亭や仲買人のプロ。「生のさばが刺身で食べれる」が差別化=鮮度を保つ。
2 ももいちご(徳島県 佐那河内村)
 甘い桃の香りのする高級いちご。生産量を増やさず、品質を保つため特別のパッケージを開発。実に傷が付かないような工夫を行っている。
3 横須賀海軍カレー(神奈川県 横須賀市)
 横須賀に名物を作るため、海上自衛隊、市、商工会議所がカレーの街を宣言した。テーマに一貫性がある。
4 アドベリー(滋賀県 高島市)
 日本で未定着のNZのボイズンベリーに着目、町内の使用に限定して苗を輸入して栽培。地名にちなんでアドベリーとし、ワインやケーキ等の加工品を開発している。
5 豊岡カバン(兵庫県 豊岡市)
 明治時代に栄えたカバンの産地。下請けからの脱出するため豊岡独自のブランドを積極的に展開。地元の宵田町商店街が「カバンストリート」に変身した。
6 黒壁(滋賀県 長浜市)
 長浜市の観光の中核。黒壁の意思に賛同し、街に古い建物を生かした店舗が続々と登場した。「黒壁スクエア」として、年間約200万人を超える観光客を集める人気エリアに成長している。

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