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月刊中小企業レポート
更新日:2006/03/30

特集 地域ブランド確立による地域活性化
~地域ブランドの構築と地域団体商標の位置づけについて~

1 地域ブランドの基本的な考え方・戦略について

 全国各地で地域ブランドへの取り組みが本格化しているが、地域や人によって「地域ブランド」の定義もまちまちである。また、戦略なくして地域活性化はなく、地域ブランド戦略に取り組む地域が増えている中で、地域ブランドの基本的な考え方、戦略について昨年、中小企業基盤整備機構が作成した「地域ブランドマニュアル」に基づき確認していきたい。

■地域ブランドとは

 地域ブランドとは、地域に対する消費者からの「評価」・「期待」であり、地域が有する無形資産のひとつである。

(1) 地域の特徴を生かした商品・サービスのブランド化(PB=Product Brand)
(2)地域イメージの地域そのもののブランド化(RB=Regional Brand)
 そして、「地域ブランド戦略」とは、これらの2つのブランドを結びつけ、好循環を生み出し、地域外の資金・人材を呼び込むという持続的な地域経済の活性化を図ることといえる。

地域ブランド戦略の考え方

地域ブランドに必要な3つの視点

■地域ブランド戦略とは

 地域ブランド戦略とは、販売量や利益だけを目的とした「いかに売るか」「儲けるが勝ち」という発想ではなく、商品や地域の魅力(差別的優位性)と評価を高めることによって、商品や地域の価値を高めることである。
 タテ軸に「売れ行き」という指標を取り、ヨコ軸には「評判がいい」という指標をとったグラフを作成し、タテ軸を売れ行きがよい商品とあまりよくない(売れない)商品の2つに、ヨコ軸を評判のよい商品とあまりよくない商品の2つに分けると、次の4つに分けられ、取るべき戦略はそれぞれ違う。
(A) 売れ行きも評判もよい ブランドの管理
(B) 売れ行きはいいが評判はあまりよくない   ブランドの構築
(C) 評判はいいが売れ行きはよくない   顧客ロイヤルティ
(D) 売れ行きも評判もよくない   ブランドの構築

■地域ブランドに必要な3つの視点

 地域ブランドを構築するには、次の3つの視点が必要となる。

1 消費者の視点
 消費者からの視点で地域や商品の評価を高めるというもの。地域や地域産の商品がブランドになるには、品質や評判を高めて、消費者からの信頼を高めることが重要である。
2 商品としての視点
 競争が激化している市場で生き残るには他の商品にない付加価値を高めるしかない。
3 地域や住民の視点
 地域ブランドによって地域経済が活性化し、住民の地域愛着が高まることが期待されている。

■地域ブランドの3つの戦略

 自らの地域のブランドへの取り組みは、次の3つの段階において、それぞれどのような状況であるかを把握することが先決である。もちろん、どれひとつ欠けても強い地域ブランドにはならない。それだけに、この3つの視点からブランド戦略がうまく実行されているかを確認することが重要である。

地域ブランドの3つの戦略

1 地域ブランドの構築
 まだブランドとして確立していない地域が、新しい商品などによって地域の認知度やイメージを高め、それをブランドとして構築していこうという取り組み。各地域における地域ブランドへの取り組みは、今はこの段階にあるというケースが最も多い。つまり、地域活性化のために新たに地域ブランドを構築しようというものである。

(1)「地域ブランド・プレミアム戦略」( = 付加価値 )
 地域ブランドおよび地域ブランド商品のプレミアムとは、商品やサービスが他のブランドにはない特徴を明確にしたもの。他の地域のものより優れている「付加価値」を有し、それを商品化したものである必要がある。単に生産量が多いというだけではプレミアムにはならない。
(2)「地域ブランド・コミュニケーション戦略」( = 情報伝達 )
 「コミュニケーション戦略」とは、「誰に伝えるか」という戦略。伝わった人数を単に増やすのではなく、伝えたことによる効果を高めることを考える戦略。従来のマーケティング戦略の基本は、「より多くの人に伝える」というマス・コミュニケーション的な発想による手法が中心であった。ところがブランド・コミュニケーション戦略では、「特別に選ばれた人に、限定した情報を提供する」という手法。
(3)「地域ブランド・ロイヤルティ戦略」( = 顧客満足 )
顧客ロイヤルティとは 「ロイヤルティ戦略」は顧客の満足度を高めて、忠誠心の高い顧客を増やすという戦略。従来、顧客満足度(CS)とは「クレーム(苦情)処理」というイメージが強かったが、これはブランドリスク対策の一部。ブランド構築におけるCSという観点は、顧客の満足度を高めて、再訪問や再購入を促し、売上や利益率を高めるという戦略。

2 地域ブランドの活用
 地域名を使って商品化する(活用)は、すでにその地域の認知度やイメージが確立しているため、そのイメージにあった商品開発を進めていこうという取り組み。例えば四万十川、飛騨高山などのように、日本中に自然資源や歴史的建造物などの観光資源、地域の名産品、伝統工芸品などが豊富に存在している。その高い知名度とイメージを活用した商品作りなどはこのケースだ。名前が全国的によく知られている地域の場合の取り組みがこれにあたる。

(1)地域ブランドを活用した商品化
 地域の名前を商売のネタとして利用するだけではなく、地域名を冠した商品がその地域ブランドのイメージ作りに一役買っていることを、よく理解することが必要。
その商品のイメージが地域のイメージと合うこと
その商品が、その地域のイメージを具現化したもの
その商品が、地域経済に貢献すること
 のいずれかであるとき、その商品と地域はシナジー効果が生まれ、よい循環が生まれることになる。品質面だけによる認証制度ではなく、こうした地域の視点を加味しなければ、地域ブランドには結び付かない。
(2)地域ブランドを活用したマーケティング
 いくら地域ブランドのイメージが良くても、その名前をつけるだけでは商品は売れない。「モノがあるからそれを売る方法を考える」では、消費者を満足させることは不可能である。消費者がそのブランドにどのようなイメージを抱き、なにを求めているかを分析し、そのニーズに合わせた商品展開と販売戦略を行う必要がある。

3 地域ブランドの管理
 地域ブランドを守る(管理)は、粗悪品や偽ブランド品などによってブランド価値が低下しないような仕組みを作り、商標などの権利で守ることだ。商標法の改正で地域ブランドの商標が登録しやすくなったことで、こうした管理手法も大きく変わってきている。

(1)地域ブランドの商標の権利
 地域ブランドの人気が高まるにつれて、それらを真似た(あるいは不当に使用した)商品(類似品)が流通する危険が高まる。そこで、こうした類似品や粗悪品によってブランドが傷付かないようにしようという動きも重要になる。昨年、国会で商標法の改正案が成立し、この4月から施行された。これまでは基本的には「地域名+一般商品名」という組み合わせの文字は商標として認められなかった。ところが今回の商標法の改正により、これが大幅に緩和された(=地域団体商標)。
(2)地域ブランドの管理
 地域ブランドの価値を下がらないようにするためにも、ブランドの管理を戦略的に行うことはとても重要である。ブランドの価値を下げるケースとして主なものに次の4つのリスクがある。
◇裏切る(ブランドの約束を守らない)
◇腐る(新製品がでない、時代遅れになる、飽きられる)
◇浪費する(違うイメージの商品が出る、安売りされる)
◇流出する(類似品の出現、権利や人材の流出など)

主な都道府県別の地域ブランドの例

主な都道府県別の地域ブランドの例
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