調査結果
1. 競争力について
2. 競争力と雇用、設備、及び借入金の状況
3. 経済のグローバル化について

3. 経済のグローバル化について

3.1「経済のグローバル化」の影響とその内容
3.1.1 全産業の動向〔図表10~12〕
安価な輸入品の増加
安価な輸入品の増加の影響を全産業についてみると、「好影響を強く感じる」が2.4%、「好影響を多少感じる」が11.2%、「影響を感じない」が31.2%、「悪影響を多少感じる」が32.7%、「悪影響を強く感じる」が22.5%となっている。
安価な輸入品の増加について、好影響を感じている企業(「好影響を強く感じる」と「好影響を多少感じる」の合計。以下では、『好影響計』と言う)は13.6%。一方、悪影響を感じている企業(「悪影響を強く感じる」と「悪影響を多少感じる」の合計。以下では、『悪影響計』と言う)は55.2%と半数を上回り、『好影響計』を大幅に上回っている。
『好影響計』について、その内容をみると、「仕入価格の低下」を挙げる企業が76.4%と最も多い。これに対して、『悪影響計』の内容をみると、「販売価格の低下」を挙げる企業が80.7%と最も多い。

外資の日本への進出
外資の日本への進出の影響を全産業についてみると、「好影響を強く感じる」が1.0%、「好影響を多少感じる」が7.1%、「影響を感じない」が69.9%、「悪影響を多少感じる」が18.0%、「悪影響を強く感じる」が4.0%となっている。
『好影響計』は8.1%。一方、『悪影響計』は22.0%と、『好影響計』を上回っている。
『好影響計』について、その内容をみると、「製・商品、サービスの質の向上」を挙げる企業が48.0%と最も多い。これに対して、『悪影響計』の内容をみると、「販売価格の低下」を挙げる企業が53.6%と最も多い。

日本企業の生産拠点の海外への移転
日本企業の生産拠点の海外への移転の影響を全産業についてみると、「好影響を強く感じる」が1.1%、「好影響を多少感じる」が4.9%、「影響を感じない」が35.0%、「悪影響を多少感じる」が30.7%、「悪影響を強く感じる」が28.2%となっている。
『好影響計』は6.0%。一方、『悪影響計』は58.9%と6割近くに達しており、『好影響計』をはるかに上回っている。また、からまでの「経済のグローバル化」の動きの中で、最も高い比率を示しており、産業の空洞化の悪影響が中小企業に広範に及んでいるものとみられる。
『好影響計』について、その内容をみると、「仕入価格の低下」を挙げる企業が52.1%と最も多い。これに対して、『悪影響計』の内容をみると、「受注量の減少」を挙げる企業が70.2%と最も多い

規制緩和等による諸制度の国際的な同質化
規制緩和等による諸制度の国際的な同質化の影響を全産業についてみると、「好影響を強く感じる」が3.5%、「好影響を多少感じる」が16.6%、「影響を感じない」が54.7%、「悪影響を多少感じる」が20.0%、「悪影響を強く感じる」が5.1%となっている。
『好影響計』は20.1%と、からまでの「経済のグローバル化」の動きの中で、最も高い比率を示しており、好影響を享受している中小企業が相対的に多いものと思われる。一方、『悪影響計』は25.1%となっており、『好影響計』をやや上回っている。
『好影響計』について、その内容をみると、「自社のマーケットの発展」を挙げる企業が40.8%と最も多い。これに対して、『悪影響計』の内容をみると、「販売価格の低下」を挙げる企業が54.6%と最も多い。

海外への人の流れの増加
海外への人の流れの増加の影響を全産業についてみると、「好影響を強く感じる」が0.8%、「好影響を多少感じる」が4.2%、「影響を感じない」が74.4%、「悪影響を多少感じる」が16.5%、「悪影響を強く感じる」が4.2%となっている。
『好影響計』は5.0%。一方、『悪影響計』は20.7%となっており、『好影響計』を上回っている。
『好影響計』について、その内容をみると、「製・商品、サービスの質の向上」を挙げる企業が42.9%と最も多い。これに対して、『悪影響計』の内容をみると、「受注量の減少」、「自社のマーケットの衰退」を挙げる企業がともに47.5%で最も多くなっている。

日本への人の流れの増加
日本への人の流れの増加の影響を全産業についてみると、「好影響を強く感じる」が0.9%、「好影響を多少感じる」が9.7%、「影響を感じない」が72.2%、「悪影響を多少感じる」が13.9%、「悪影響を強く感じる」が3.2%となっている。
『好影響計』は10.6%。一方、『悪影響計』は17.1%となっており、『好影響計』を上回っている。
『好影響計』について、その内容をみると、「自社のマーケットの発展」を挙げる企業が41.2%と最も多い。これに対して、『悪影響計』の内容をみると、「製・商品、サービスの質の低下」を挙げる企業が47.1%で最も多い。

3.1.2 業種別〔図表10〕
安価な輸入品の増加
安価な輸入品の増加の影響を業種別にみると、製造業では『好影響計』は9.8%、『悪影響計』は67.4%と、後者が前者を大幅に上回っている。特に、素材型製造業では『悪影響計』が69.9%と高い数値を示している。この内訳をみると、「悪影響を多少感じる」(31.6%)、「悪影響を強く感じる」(38.3%)と、後者が4割近くに及んでおり、影響の深刻さが垣間見える。
 非製造業では『好影響計』は16.8%、『悪影響計』は45.2%と、後者が前者を上回っている。この内、卸売は『悪影響計』が62.8%と高い数値を示している。
製造業・非製造業ともに安価な輸入品の増加によって悪影響を受けている企業が多い。製造業の悪影響がより広範であるものの、非製造業へも悪影響がかなりの広がりをみせている点が注目される。

外資の日本への進出
外資の日本への進出の影響を業種別にみると、製造業では『好影響計』は8.4%、『悪影響計』は21.4%。非製造業では『好影響計』は8.0%、『悪影響計』は22.5%。ともに後者が前者を上回っている。なお、小売では『悪影響計』が28.4%と他の業種に比べて高い数値を示しており、90年代以降顕著になった外資系流通業との競争圧力に晒されている様子が窺われる。

日本企業の生産拠点の海外への移転
日本企業の生産拠点の海外への移転の影響を業種別にみると、製造業では『好影響計』は5.4%、『悪影響計』は68.4%と、後者が前者を大幅に上回っている。特に、加工型製造業では『悪影響計』が71.7%と7割に達しており、産業空洞化の影響が顕著になっているものと思われる。
 非製造業では『好影響計』は6.5%、『悪影響計』は51.0%と、後者が前者を上回っている。
製造業では、日本企業の生産拠点の海外への移転によって悪影響を感じている企業が7割近くに達している。加えて、非製造業でも過半数。

規制緩和等による諸制度の国際的な同質化
規制緩和等による諸制度の国際的な同質化の影響を業種別にみると、製造業では『好影響計』(20.3%)と『悪影響計』(23.1%)の間に大差はない。一方、非製造業では『好影響計』は20.1%、『悪影響計』は26.7%と、後者が前者をやや上回っている。ただ、規制緩和によるビジネスチャンスの広がりを意識してか、サービスでは『好影響計』(23.8%)が『悪影響計』(17.0%)を上回っている。
規制緩和等による諸制度の国際的な同質化によって受ける悪影響をみると、製造業に比べて(サービスを除くと)非製造業で相対的に悪影響が大きい。

海外への人の流れの増加
海外への人の流れの増加の影響を業種別にみると、製造業・非製造業ともに『悪影響計』(製造業:20.8%、非製造業:20.6%)が『好影響計』(同:5.5%、同:4.5%)を上回っている。因みに、サービスでは『悪影響計』が28.9%と相対的に高い数値を示している。

日本への人の流れの増加
日本への人の流れの増加の影響を業種別にみると、製造業・非製造業ともに『悪影響計』(製造業:19.7%、非製造業:15.0%)が『好影響計』(同:9.9%、同:11.3%)をやや上回っている。因みに、サービスでは『好影響計』(22.0%)が『悪影響計』(14.7%)を上回っている。


図表10 「経済のグローバル化」の影響(業種別)


図表10 「経済のグローバル化」の影響(業種別)


図表11 「経済のグローバル化」の好影響の内容(全産業:上位2項目)
(好影響を感じている企業)


図表11 「経済のグローバル化」の好影響の内容(全産業:上位2項目)


図表12 「経済のグローバル化」の悪影響の内容(全産業:上位2項目)
(悪影響を感じている企業)


図表12 「経済のグローバル化」の悪影響の内容(全産業:上位2項目)


3.2「経済のグローバル化」への対応策
3.2.1 全産業の動向〔図表13〕
全産業の「経済のグローバル化」への対応策をみると、「現在実施中」の対策としては、「人件費以外のコストの一層の削減(以下では、『コストの削減』と略す)」が46.2%と最も多い。以下「パートの活用等による人件費の削減(以下では、『パートの活用等』と略す)」(37.2%)、「営業・販売・接客部門等の標準的な従業員のレベルアップ(以下では、『従業員のレベルアップ』と略す)」(34.3%)となっており、上位3項目が3割を上回っている。さらに、「小ロットの注文への迅速な対応」(23.8%)、「アフターサービスの強化」(23.0%)等の順になっている。総じて、経費削減と顧客満足度の向上のための対策を実施している企業が多い。
「今後必要と考えている」対策としては、「現在実施中」と同様に『コストの削減』が33.3%と最も多く、以下『従業員のレベルアップ』(33.1%)、『パートの活用等』(24.2%)が続いており、上位3項目は「現在実施中」の対策と同じである。以下、「マーケティング活動の充実や企画力の強化」(24.1%)、「国内での取扱製・商品、サービスの絞り込み・高付加価値化(以下では、『絞り込み・高付加価値化』と略す)」(23.2%)が続いている。前者は中小企業が苦手とする部分の克服を、後者は競争力を持っている部分を一層の強化を意図しているものと推察される。
「現在実施中」の対策と「今後必要と考えている」対策を比べると、「マーケティング活動の充実や企画力の強化」(現在実施中:10.8%→今後必要と考えている:24.1%)、「社内体制の国際標準化」(同:13.7%→同:17.7%)、「主力製・商品、サービスの変更」(同:8.9%→同:13.4%)、「地域企業との連携・ネットワーク化による産業構造の高度化」(同:4.1%→同:15.2%)、「IT化による世界中の企業との連携」(同:1.2%→同:6.7%)は「現在実施中」とする企業よりも「今後必要と考えている」とする企業の方が多くなっている。
「経済のグローバル化」への対応策として、現在実施中の対策は経費削減策や顧客満足度の向上策が多いが、今後については、現在実施が多い対策のほか、マーケティングの充実、社内体制の国際標準化、企業間ネットワークの構築といった経営革新に資するとみられる対策への関心が高まっている。

3.2.2 競争力の自己評価別
将来の競争力への評価別にみた「現在実施中」の対策〔図表14〕
将来の競争力に対する自己評価の別に「経済のグローバル化」への対応策として「現在実施中」の対策をみると、『将来に自信がある』企業では、『コストの削減』が44.0%と最も多い。以下『従業員のレベルアップ』(38.5%)、『パートの活用等』(36.7%)となっており、上位3項目は全体と同じく3割を上回っている。次いで、「アフターサービスの強化」(26.3%)、『絞り込み・高付加価値化』(25.6%)等の順になっている。ここから、将来の競争力に自信のある企業では、顧客満足度の向上や競争力の一層の強化にも既に取り組んでいる傾向が窺われる。
一方、『将来に自信がない』企業では、『コストの削減』が47.9%と最も多い。以下『パートの活用等』(38.1%)、『従業員のレベルアップ』(31.0%)となっており、上位3項目は『将来に自信がある』企業と同じく3割を上回っている。次いで、「小ロットの注文への迅速な対応」(25.1%)、「雇用の削減による縮小均衡」(21.9%)等の順になっている。ここから、将来の競争力に自信のない企業では、全般的な経費削減を「経済のグローバル化」に対する中心的な対策としている傾向が窺われる。
『将来に自信がある』企業と『将来に自信がない』企業を比べると、『従業員のレベルアップ』(『将来に自信がある』:38.5%→『将来に自信がない』:31.0%)、アフターサービスの強化」(同:26.3%→同:20.2%)、『絞り込み・高付加価値化』(同:25.6%→同:21.0%)、「マーケティング活動の充実や企画力の強化」(同:13.3%→同:8.9%)等で、前者が後者を上回っている。これに対して、『コストの削減』(同:44.0%→同:47.9%)、『パートの活用等』(同:36.7→同:38.1%)、「小ロットの注文への迅速な対応」(同:22.4%→同:25.1%)、「雇用の削減による縮小均衡」(同:16.8%→同:21.9%)等では後者が前者を上回っており、ここからも右記の傾向が窺われる。

将来の競争力への評価別にみた「今後必要と考えている」対策〔図表15〕
将来の競争力に対する自己評価の別に「今後必要と考えている」対策をみると、『将来に自信がある』企業では、『従業員のレベルアップ』が33.1%と最も多い。以下『コストの削減』(29.7%)、「マーケティング活動の充実や企画力の強化」(26.3%)、『絞り込み・高付加価値化』(23.2%)、『パートの活用等』(21.9%)、「社内体制の国際標準化」(19.7%)等の順になっている。
  また、「現在実施中」の対策と「今後必要と考えている」対策を比べると、「社内体制の国際標準化」(「現在実施中」:14.4%→「今後必要と考えている」:19.7%)、「マーケティング活動の充実や企画力の強化」(同:13.3%→同:26.3%)、「地域企業との連携・ネットワーク化による産業構造の高度化」(同:5.2%→同:16.4%)、「IT化による世界中の企業との連携」(同:1.7%→同:8.7%)等で後者が前者を上回っている。ここから、将来の競争力に自信のある企業では、コスト削減から徐々にマーケティング活動の充実や社内体制の高度化、企業間ネットワークの構築に対策の軸足を移しつつあることが示唆されている。
一方、『将来に自信がない』企業では、『コストの削減』が35.6%と最も多い。以下、『従業員のレベルアップ』(32.8%)、『パートの活用等』(26.0%)と上位3項目は「現在実施中」の対策と同じものとなっている。次いで、『絞り込み・高付加価値化』(23.5%)、「マーケティング活動の充実や企画力の強化」(22.5%)等の順になっている。
  また、「現在実施中」の対策と「今後必要と考えている」対策を比べると、「マーケティング活動の充実や企画力の強化」(「現在実施中」:8.9%→「今後必要と考えている」:22.5%)、「主力製・商品、サービスの変更」(同:9.0%→同:14.0%)、「地域企業との連携・ネットワーク化による産業構造の高度化」(同:3.4%→同:14.7%)等で後者が前者を上回っている。ここから、将来の競争力に自信のない企業でも、自信のある企業と同様の傾向がみられるものの、引き続きコスト削減を対策の中心と考えている様子が窺われる。
を総じてみると、『将来に自信がある』企業と『将来に自信がない』企業ともに現在、経費削減とCS強化を中心的な対策として実施しているが、前者は後者に比べて『絞り込み・高付加価値化』、「社内体制の国際標準化」、「マーケティング活動の充実や企画力の強化」といった競争力の強化に資する対策に既に取り組んでいる企業が多い。 
 今後必要と考えている対策をみても、前者では後者に比べて「社内体制の国際標準化」、「マーケティング活動の充実や企画力の強化」や「地域企業との連携・ネットワーク化による産業構造の高度化」、「IT化による世界中の企業との連携」で引き続き高い一方、『将来に自信がない』企業では、今後についても対策の中心はコスト削減である。
 つまり、『将来に自信がある』企業は「社内体制の国際標準化」、「マーケティング活動の充実や企画力の強化」への取り組みが早く、今後その動きを加速しようとしており、さらに、「企業間ネットワークの構築」にも早めに取り組もうとしている様子が窺われる。これに対して、『将来に自信がない』企業では現在、今後とも対策の中心はコスト削減であり、自信のある企業に比べて取り組みに遅れがみられる。こうした、競争力を強化するための取り組みのスピード感が将来に対する自信の有無を分けているものと思われる。


図表13 「経済のグローバル化」への対応策(全産業:5項目以内 複数回答)


図表13 「経済のグローバル化」への対応策(全産業:5項目以内 複数回答)


図表14 「経済のグローバル化」への対応策(全産業:5項目以内 複数回答)
(現在の実施中の対策、将来の競争力への自己評価別)


図表14 「経済のグローバル化」への対応策(全産業:5項目以内 複数回答)


図表15 「経済のグローバル化」への対応策(全産業:5項目以内 複数回答)
(今後必要と考えている対策、将来の競争力への自己評価別)


図表15 「経済のグローバル化」への対応策(全産業:5項目以内 複数回答)


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