特集 中小企業の競争力等に関する意識調査
デフレ・産業の空洞化を背景に、将来の競争力への不安高まる
【2002年2月調査】

ポイント

全体の4分の3が現在の競争力に自信。一方、将来の競争力に不安を持つ企業が5割から6割へ増加。主因は「価格競争への対応の限界」、「地域経済・マーケットの衰退・縮小」。
競争力の源泉は「品質」、「技術力」、「品揃え・サービス内容」。加えて、「低コスト」を挙げる企業が増加。特に、将来の競争力に不安を持つ企業で「低コスト」が相対的に多い。
この背景にある経済のグローバル化について、総じて悪影響を感じている企業が多い。特に、安価な輸入品によるデフレ、産業の空洞化の悪影響が大きい。
これらへの対策として、現在は「コスト削減」、「CS(顧客満足度)強化」、「製・商品、サービスの絞り込み・高付加価値化」を実施中の企業が多い。今後は、マーケティングの充実、社内体制の国際標準化、企業間ネットワークの構築などにも関心が集まる。
雇用・設備の過剰感、借入金の過大感が強い企業ほど競争力への不安が強い。


概  要
  1. 現在の競争力に自信を持つ中小企業は全体の4分の3と過半を占める。ただし、将来の競争力について自信がないとする企業が6割と、98年11月時点の5割から増加。将来の競争力に対する不安が高まっている (図表1・2)。
  2. 競争力の源泉として第1位に挙げているものをみると、製造業・建設業では「品質」、「技術力」が多い(図表3・4)。98年時点と比べると、「品質」が減少する一方、「低コスト」が増加。建設業を除く非製造業では、「品揃え、サービス内容」が98年時点と同様に最も多いものの、大幅に減少している(図表5・6)。一方、「低コスト」の増加が、特に今後の競争力の低下を懸念する企業で目立っている。
  3. 現在の競争力には自信を持っているが、将来の競争力低下を懸念する企業では、競争力の低下を懸念する要因として、「デフレ・価格競争への対応が限界に近づいている」、「自社が営業基盤とする地域やマーケットが縮小している」を挙げる企業が多い(図表7)。
  4. 雇用・設備の過剰感は拡大。借入金の過大感は依然強い (図表8)。なお、雇用・設備の過剰感、借入金の過大感と競争力の自己評価との間に関連性が認められ(図表9)過剰な雇用・設備、過大な借入金を抱えている企業が競争力へ自信を喪失している可能性を示唆している。
  5. 経済のグローバル化について、「安価な輸入品の増加」、「日本企業の生産拠点の海外への移転」によって悪影響を感じる企業が半数を上回る。悪影響の内容としては「販売価格の低下」、「受注量の減少」、「自社のマーケットの衰退」を挙げる企業が多い。産業の空洞化と輸入品の浸透が多くの中小企業に悪影響を及ぼしている様子が窺われる。一方、「規制緩和等による諸制度の国際的な同質化」については好影響を感じる企業が相対的に多い。好影響の内容として「自社のマーケットの発展」、「製・商品、サービスの質の向上」を挙げる企業が多く、一部に規制緩和等の効果が窺われている(図表10~12)。
  6. 経済のグローバル化への対応策をみると(図表13)、現在実施中の対策としては、「人件費以外のコストの一層の削減」、「パート等の活用による人件費の削減」、「営業・販売・接客等の標準的な従業員のレベルアップ」、「小ロットの注文への迅速な対応」、「アフターサービスの強化」が上位5項目を占めており、経費削減策と顧客満足度向上策が多い。
  7. これに対して、今後必要と考えている対策としては、上位3項目は現在実施中の対策と同じであるが、第4位「マーケティング活動の充実や企画力の強化」、第5位「国内での取扱製・商品、サービスの絞り込み・高付加価値化」となっている。また、「社内体制の国際標準化」、「主力製・商品、サービスの変更」、「地域企業との連携・ネットワーク化による産業構造の高度化」、「IT化による世界中の企業との連携」にも高い関心が寄せられている。今後は、マーケティングの充実、社内体制の国際標準化、企業間ネットワークの構築と言った経営革新に資するとみられる対策にも関心。
  8. 『将来に自信がある』企業は「社内体制の国際標準化」、「マーケティング活動の充実や企画力の強化」への取り組みが早く、今後その動きを加速しようとしており、さらに、企業間ネットワークの構築にも早めに取り組もうとしている様子が窺われる。これに対して、『将来に自信がない』企業では現在、今後とも対策の中心はコスト削減であり、自信のある企業に比べて取り組みに遅れがみられる(図表14・15)


調査要領
○調査目的
(1) 中小企業の競争力(他の企業に対する強み)についての評価、及び競争力の源泉等についての認識の分析
(2) 設備、雇用、及び借入金の状況に対する中小企業の認識の分析
(3) 中小企業が「経済のグローバル化(注1)」から受ける影響とグローバル化への対応策の把握

○調査時点
 2002年2月1日

○調査対象
 商工中金取引先5,387社(有効回答 2,641社、回収率49.0%)

○調査方法
 調査票によるアンケート調査(郵送自記入方式)

○調査事項
(1) 企業の競争力について
競争力の自己評価
競争力の源泉
競争力の低下懸念の理由
(2) 設備、雇用、及び借入金の状況
(3) 「経済のグローバル化」について
影響とその内容
現在実施中の対応策
今後必要と考えている対応策



(注1) 「経済のグローバル化」とは、「人・もの・金等が国境を越えて移動し、市場経済が地球規模で進展・浸透すること」を意味し、具体的には、安価な輸入品の増加、外資(注2)の日本への進出、日本企業の生産拠点の海外への移転、規制緩和等による諸制度の国際的な同質化、海外への人の流れの増加、日本への人の流れの増加、の6項目について、中小企業への影響等を調査した。
(注2) 外資」は、外国人・外国企業の出資比率が50%以上の企業、外国人・外国企業の出資比率が50%未満であっても、外国企業・外国人に経営の実権を委ねている日本企業。

○ご照会先
 商工中金/調査部
 TEL:03-3246-9370


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