顧客が購入する製品の品質を確かなものにしようとする場合、製品検査だけでは不十分となり、供給者に対して製品の品質規格だけでなく、製造工程・品質管理体制までも含めて、所要の品質を作り出し、維持するための品質システムの構築を要求するようになります。
ISO9000シリーズは、このような顧客の立場から供給者に対して要求される「品質システム」が具備すべき必要事項を20項目(参考①)にまとめて作成された国際規格で、次のような特徴をもっています。
- 企業の品質についての方針を定め
- 品質にかかわる各人の責任と権限を明確にし
- 品質を実現するための品質システムを品質マニュアルの形に文書化し
- 現場が間違いなく品質マニュアルどおりに実行していることを
- 記録することにより証明し
- 顧客の要求する品質を確保していることをいつでも開示できるようにしている
- 経営者によるISO9000導入の決定と品質方針の決定
- 社内のISO9000導入に向けての合意形成
- 階層あるいは組織ごとの責任と権限の明確化
- ISO9000の要求事項のうち、対処されていない部分への対応策の検討
- 品質マニュアルの作成と社内規定の整備
- 従業員への徹底教育
- 内部品質監査の実施と改善対策
- 審査登録機関への申請と審査の実施
定期審査(年2回)、更新審査(3年毎)、不定期審査(システムの重大な変更等)
ISO9000シリーズは1987年3月、ISO(国際標準化機構)によって制定された品質保証のための国際規格で〈表1〉の5つの規格から構成されています。
品質保証とは、「製品またはサービスが所与の品質要求を満たしていることの妥当な信頼感を与えるために必要なすべての計画的および体系的活動」と定義されています。
ISO9001/ISO9002/ISO9003の各品質システム・モデルが要求している事項は、
〈表2〉のようになっています。各品質システム・モデルの品質マニュアルは、この要求事項を組み入れて作成します。
【ISO9001】
- 生産者が設計・開発、製造、据え付け、および付帯サービス までのすべての業務を実施している場合に適用する規格で、もっとも完全なモデルです。
- 【ISO9002】
- 設計がすでに確立している場合、または購入者あるいは外部から与えられている場合で、生産者が製造、据え付け、付帯サービスを実施しているときに適用する規格です。
- 【ISO9003】
- 設計、製造、その他の使用方法が長時間にわたって確立していて、品質保証要求事項が最終審査、最終試験で十分とされる場合に適用する規格です。
- 【ISO9004-1】
- 供給者のための規格、品質管理活動の一般通則で、生産者が品質管理を行うときに何をしなければならないかという指針を示すものです。供給者の行うべき品質管理活動の手引きであって、強制力はありません。
【表1】ISO9000シリーズの5つの規格
ISO9000-1 |
品質管理および品質保証の規格
-第1部:選択および使用の指針 |
ISO9001 |
品質システム
-設計・開発、製造、据え付け、および付帯サービスにおける品質保証モデル |
ISO9002 |
品質システム
-製造、据え付け、および付帯サービスにおける品質保証モデル |
ISO9003 |
品質システム
-最終検査・試験における品質保証モデル |
ISO9004-1 |
品質管理および品質システムの要素
-第1部:指針 |
2.ISO9000Sの審査登録(認証取得)について |
1.企業の動機
- 海外の顧客からの要求
- 海外進出
- 営業力強化
- PL法対策
- 社内の品質保証体制再構築
2.メリット
- 契約や入札(特に海外取引)で有利
- 社内の品質保証体制の確立
- 顧客の信頼向上・満足度の改善、品質監査の省略・簡素化
- 企業の差別化
- PL法対策(H7.7月施行)
(不良品の減少、文書化された記録により安全性を立証)
- ISO14000への布石
3.デメリット
- 費用がかかる(社員の研修費、コンサルタント・審査登録機関)
- 取扱文書・保管文書の増加
4.工数と費用
- 社内準備に要する工数(品質マニュアル作成、文書整備、社内教育、外部情報収集)
- 審査登録機関の経費(申請料、審査料、登録料、審査員交通費・宿泊費)
- コンサルタント料
5.審査登録機関の認定範囲
農業・漁業、食品・飲料・たばこ、織物・繊維製品、木材・木製品、出版業、印刷業、化学薬品、医薬品、機械・装置、造船業、建設、サービス産業(飲食、ホテル、旅行代理店等)、ソフトウェア産業、行政サービス等
6.2000年改正について(2000年11月~末)
規格の使い易さと更なる顧客満足を重視した大幅な改正が予定されている。
- ファミリー規格を整理(概念と用語、要求事項、指針、監査のための指針)
- 品質保証と品質管理の構成、概念、用語の調和(ユーザーニーズの向上)
- 14000sとの両立性確保(同内容の要求事項の一本化、監査規格の統合等)
- 産業別規格のニーズを考慮し、自動車産業のための特別要求事項規格の開発
(宇宙航空機産業・医療用具製造メーカーの参考とする。)
平成12年2月1日現在32機関が登録されています。
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