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月刊中小企業レポート
更新日:2006/03/30

特集1 いま、コミュニティ・ビジネスが熱い!

地域が抱える課題をビジネス的視点で解決する

コミュニティ・ビジネスの領域 高度情報社会の到来や少子高齢化の進展、世界的な経済環境の変化など、わが国を取り巻く環境は大きく変化している。
 雇用機会の減少、農村の過疎化、中心市街地の空洞化などの課題が浮き彫りになる中、かつての経済成長優先、大量生産・大量消費の社会・経済構造から、人口減少・超高齢社会への適応や環境と共生した産業構造・生活様式への転換が迫られている。
 そのような時代状況を背景に、地域もまたさまざまな課題やニーズを抱えている。その課題の解決やニーズへの対応に地域住民が主体となって関わる「コミュニティ・ビジネス」が各地で進展。新しい産業の形態として今注目を集めている。
 コミュニティ・ビジネスは、地域(コミュニティ)の資源(人・モノ)を活用して、地域の課題やニーズを解決していく地域密着型ビジネス。地域貢献の側面と、ビジネスとしてのマネジメントの側面を持ち、NPOの活動にビジネスのセンスをより加えた活動ととらえることもできる。

志を共有する地域住民が活動の主体

 住民自らが地域の課題やニーズを見いだし、志を共有できる仲間を集め、ビジネスとして事業化を図っていくのがコミュニティ・ビジネスだ。具体的には、次のような特徴を持つ。
 活動主体は、地域住民。
 社会参画を求める女性や地域に暮らす高齢者、起業によって自己実現を図りたいという欲求を持つ人など、「地域の課題を何とかして解決したい」という、熱い思い(使命感)を持つ住民の存在が注目されている。
 NPO、企業組合(※)、有限会社、株式会社など、活動分野や規模に応じてさまざまな組織形態を選択することができる。
 活動目的は、地域の問題解決、地域貢献が基本。
 地域に埋もれている労働力や技術・ノウハウを発掘し、活用することによって、地域の人々の生きがいづくりを支援。地域コミュニティの再生や、地域経済の活性化へとつなげていくことをめざす。
 活動内容は、行政が提供できないサービスや企業が取り組まないなど、ニーズはありながら社会の仕組みとして不足している分野。地域特産品の開発・販売、女性の働きやすい場づくり、障害者の介護支援、環境保全、商店街の活性化等々、その分野は多岐にわたる。
 地域貢献が活動のポイントではあるが、無償ボランティアではない。適切な利益を確保しながら、自立的かつ継続的に事業を進め、地域活性化を着実に図っていくことが大きな特徴だ。

※企業組合=4人以上の個人で設立可能。最低資本金制度がなく、少額資本で設立できる。社会的信用が増し、国などの施策も利用できる。NPO法人のような活動分野の制約もない。

社会性を重視しつつ、適正利益の確保も大切

 コミュニティ・ビジネスはどのようにして生まれ、成長していくのか。その過程は、以下のような特徴としてまとめられる(図)。

コミュニティ・ビジネスの成長形態
1. 生活している地域を良くしようとする声が、地域の中で、さまざまな形でわき上がる。
2. 地域の活性化や課題に対する共通意識を抱く者が集まり、話し合いが始まる。
3. 地域の活性化や課題解決への強い使命感を持ち、営利性よりも社会性を重視する。
4. 地域の資源を生かすことを基本に、行政や企業が提供できない、生活者ならではのアイデアによる商品・サービスを提供する。
5. 事業はできるところからスピーディに行動を開始。試行錯誤を重ねつつ、充実を図っていく。
6. 行政、関連団体、ボランティア等の支援・協力を得て、不足する経営資源を補う。
7. 適正利益の確保、低コスト運営のための仕組みをつくる。
8. 地域における新しい共生の社会関係を形成する。
 地域社会問題の解決、働きがい・生きがいの創出、地域文化の継承・創造、創業の活性化、雇用の創出、地域経済の活性化など、コミュニティ・ビジネスには大きな効果が期待される。


コミュニティ・ビジネスを成功に導く9つのポイント

〈萌芽期〉
(1) 地域ニーズ・課題をふまえ、地域貢献への志を明確にする
 農村の活力再生、女性の社会参画促進、行き届かない障害者へのケア、里山林の荒廃、過疎化が進む農地の荒廃、高齢者世帯の増加など、地域の課題・ニーズを把握。これに対処するためには、志を高く持って取り組む必要がある。
 「(有)エイチ・アイ・エフ」(開田村)では、村おこし事業の中で提言された地元の農畜産物を活用したアイスクリームの製造・販売で、農業と観光が融合した地域活性化に貢献している。
(2) 志・価値観を共有できる仲間を募り、事業化に向けた研究を行う
 事業化は一個人では限界がある。志や価値観を共有できる仲間とともに、生活者の視点で知恵を出し合って検討することで、すぐれたアイデアが出てくる。
 「滋賀県環境生活協同組合」(滋賀県安土町)は、転作田に菜の花を植えて菜種油を作り、油かす・廃油は飼料や燃料に再利用する菜の花エコプロジェクトを展開。
(3) 地域活性化と課題解決のための商品・サービスおよびターゲットを明確にする
 提供する商品・サービス、ターゲットを明確にして取り組む。コミュニティ・ビジネスでは特に、地域の課題・ニーズを的確に把握するとともに、地域性や志を濃厚に反映した独自の事業展開が重要だ。
 「(株)パークライン中条」(中条村)は、「農業を基盤としたトータル産業」「都市と農村の交流」をめざし、地場の有機無農薬野菜と郷土食の販売、交流イベントなどを実施。
(4) 人材を確保する
 事業をスムーズに進める体制をつくり、事業内容を充実・向上させていくためには、優秀な人材の確保が大切。
 「NPOエリアネット更埴」(千曲市)は、ITの専門的知識を持つ代表者がITの商業活用の可能性を地元企業によびかけ、異業種研究会を立ち上げて取り組む。
(5) 地域特有の資源を有効活用する
 地域の特産物、文化、自然、人材など、地域特有の資源を有効に活用した経営が成功のポイントになる。
 「(株)ぶどうの郷山辺」(松本市)は、全国的に有名なぶどうの産地である地元のぶどうを100%使用するワイナリーとして、ワインのブランド化をめざす。
(6) 信頼度向上のため組織を法人化する
 行政や関係団体から助成を受けるためには、組織が法人格を有していることを求められるケースが多く、金融機関から融資を受ける際にも法人組織と任意団体では信用度が格段に違う。
 「NPOコミュニティ・サポート神戸」(神戸市)は阪神・淡路大震災を契機に生まれたボランティアグループが母体。NPO法人格の取得により活動の輪がさらに広がり、共生循環型のまちづくり事業を展開。

〈成長期〉
(1) 適正利益が確保できる仕組みをつくる
 コミュニティ・ビジネスは営利性よりも社会性を重視しているが、事業継続のためには適正利益の確保が必要。数値目標をしっかりと立て、収益につながる販路の開拓、コスト削減の工夫などの努力が求められる。
 また地域ボランティア、関係団体の支援・助成、行政等から委託業務を受けるなど、事業展開にあたり不足する資源は外部から補う必要がある。
 「もえぎ会」(坂北村)は、村役場の支援・助成を受け、地域の農家に生産委託した青豆から豆腐を作り、広範な販路を開拓している。
(2) 人と人とのつながりを大切にして運営する
 活動に関わる仲間同士のコミュニケーションはもとより、地域の学生、ボランティア、主婦、行政など、さまざまな人々とのつながりを大切にすることが大切。人と人との輪が広がり、幅広く知恵と力を取り込みながら運営できる。
 「企業組合コンシェルジェ」(盛岡市)は、SOHOをめざす女性たちのグループ。会員同士のネット上の情報交換だけでなく、定期的にパーティ等を開催し、お互いの顔が見える関係を大切にして運営している。
(3) 携わる人が楽しみながら活動できる
 携わる人自身が楽しくなければ、利用者が満足することはない。サービスを受けた人から感謝されたり、食品を買った人から再び注文を受けた時、やりがいを感じ、今までの苦労を忘れ、明日への活力がわいてくる。
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