特集2 検証・創業支援制度
まちの起業家と経済活性化

特集にあたって

(財)長野県中小企業振興公社
中小企業支援センター所長  
小山 征一郎

 今年の中小企業白書のテーマは「まちの起業家の時代」、創業が今大きくクローズアップされている。
 県内経済の発展は、戦前の製糸に始まり、精密、電機、情報産業へと新技術・新製品の開発や新分野への挑戦など企業家精神に燃える中小企業が中核となって支えてきた。
 しかし、産業を取り巻く環境は、長引く景気低迷と産業構造の変化などにより近年大きく変化している。製造業においては国際競争の激化や海外への生産移転によるものづくり産業の空洞化が進み、小売業においては、消費者ニーズの変化や立地環境の変化などにより空き店舗が増加し、商店街の衰退が生じている。このように、殆どの産業分野で事業所数が減少し、いわゆる開業率と廃業率の逆転現象が生じ、地域の経済や雇用に大きな影響を与えている。
 最近発表された事業所・企業統計調査(速報)によると、平成13年の県内の事業所数は12万3384件、従業者数は97万9209人で、前回調査の平成8年に比べ事業所数は4%減、従業者数も3.1%減となっている。特に、製造業の事業所数は、11.7%減少、小売業も5.3%減少している。
 このような中、経済活性化と雇用創出に向けて、まちの起業家が多く出現し、地域の新しい産業が創出されることが強く期待されている。
 国では、平成11年に中小企業基法を抜本的に改正し、新しい中小企業政策として、創業の促進、経営革新の促進を大きな柱とし、多様で活力ある中小企業の発展を推進することを最重要課題とし、様々な施策を展開している。
 県におきましても、平成11年度から創業支援体制を整え、平成12年4月に中小企業支援法に基づき中小企業支援センターを(財)長野県中小企業振興公社に設置し、県の総合的なワンストップ・サービスの中核的支援機関として創業予定者や創業間もない企業、ベンチャー企業等を支援している。
 また、平成13年4月には県内の10広域圏にチャレンジ起業相談室(地域中小企業支援センター)が設置され、地域の身近なパートナーとしての支援体制が整えられている。
 さらに、平成13年6月には、県内の35の産業支援機関(大学、試験場、商工関係団体等)が集まり、研究開発から事業化までを総合的に支援する地域プラットホーム連携会議を組織し、新規創業や新事業創出を推進している。この取り組みの一環として、10月からは、総合的な支援施策の紹介、セミナー開催の案内、企業からの課題に答えるメール相談など一元的に情報収集できる産業支援ポータルサイトの開設も行っている。
 創業者は、一般的に、資金も充分なく、人材の確保や販路の開拓等に課題を抱え、壁に突き当たる例が多い。困った時の『駆け込み寺』として中小企業支援センター、チャレンジ起業相談室をまず活用いただき、事業の発展を図られることを期待する。



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