全国先進組合事例集 新たなサービス機能の協創

 サービス業による組合の設立は他業種の組合に比べ近年増加してきており、中小企業組合の設立動向によると、平成9年から業種別組合では設立組合数の1位を占めており、平成12年度には設立数の約4分の1に達している。設立される組合には、情報サービス業、ファイナンシャルプランナー、介護福祉、SOHO等新たな業種・業態も多く、構成員の創業・経営を支援する組織化としての重要な意義を持っている。また、異業種による介護福祉サービスの提供など、構成員が相互に連携して新たなサービス機能(業)を協創し、組合の共同事業として行うものも出現してきている。
 そこで、サービス業の創業・経営を支援する取り組みとともに、組合の共同事業として新たなサービス事業に取り組む事例を収集し、今後こういった分野に取り組もうとする組合に移転・普及する。
中立的な立場で個人の総合的な資産設計ニーズを支援
茨城県エフピー情報ネットワーク協同組合
愛玩動物の葬祭から法要・供養・霊園までを総合的に実施
企業組合動物の森
仲間が集まり、デジタルコンテンツ制作を共同受注
兵庫県デジタルソーホー事業協同組合
高齢者用“緊急通報システム”で安心を提供
協同組合愛媛県介護福祉支援センター
7府県の障害者がインターネットでユニバーサルデザインを提案
企業組合ユニフィカ

中立的な立場で個人の総合的な資産設計ニーズを支援
茨城県エフピー情報ネットワーク協同組合
■所在地:水戸市 ■設立:平成11年8月
■組合員数:20人 ■出資金:490万円
■地区:日立市、常陸太田市、水戸市、ひたちなか市、石岡市、つくば市
■主な業種:ファイナンシャルプランナー
■組織形態:同業種同志型組合 ■専従理事:2人 ■組合専従者:4人
■URL:http://www.ibarakiken.or.jp/ifpin/

企業の利益に左右されない独立系FPの組合が、住宅取得時の定期借地権利用についてのコンサルティングを売り物に、各種セミナーやホームページによる情報発信を行っている。
組合ホームページ
組合ホームページ
 国内におけるファイナンシャル・プランナー(FP)は増加しつづけているが、約6万人いる有資格者の多くは企業に属しており、そのサービス内容は企業の利益に左右されやすい。問題解決のためには様々な専門家に対し個別に相談する必要があり、個人のトータルな資産設計ニーズに合ったサービスを行える独立系FPは極めて少ないのが現状である。こうした状況のなか、個々の専門家に対する窓口となり、中立で総合的なコンサルティングを行うための専門家集団として、全国初のFP事業協同組合が設立された。
 組合が重点としている事業のひとつは、住宅取得時の定期借地権の利用についてのコンサルティング・サービスで、バブル期の土地が利益を生むという間違った認識のため、自己破産や多重債務者が増加している現状に対応するためのものである。組合は、内部に専門部署を設置しているほか、各種セミナーの実施やホームページによる積極的な情報発信等を行っている。また、県知事が認定する「茨城住まいの情報館」の認定施設となるなど、行政との連携強化にも力を入れており、業界の発展をめざしている。
 組合では、県内を5つのブロックに分け、ブロックごとに相談窓口を設けて対応している。また、ブロックで対応できない問題は本部で対応するほか、県民相談センターからの相談も受け付けるなど顧客満足を満たすことを最優先に考え、組合という組織にこだわらず、外部とのネットワークも積極的に構築している。
FP相談会
FP相談風景

 組合設立によって、FPと弁護士や税理士、保険・不動産の専門家等とのネットワークが強化されたことで、顧客のニーズにより迅速に対応できる体制を整えることができた。また、各種イベントへの参加やインターネットのホームページ等での積極的な情報発信によって、ノウハウの蓄積やFPに対する認知度の向上なども図られている。


愛玩動物の葬祭から法要・供養・霊園までを総合的に実施
企業組合動物の森
■所在地:静岡市 ■設立:平成11年5月
■組合員数:9人 ■出資金:2,000万円
■実施事業:動物の葬儀・納骨・供養
■組織形態:集中型企業組合 ■専従理事:3人 ■雇用従業員数:1人
■URL:http://www.doubutsunomori.com

産業廃棄物処理業、焼却設備業、動物病院勤務者、寺院関係者等、それぞれの経験者がノウハウを出し合い、静岡県内では類を見ない、新たな愛玩動物の総合的な霊園事業を実施
組合いパンフレット
組合パンフレット
 当組合の理事長は、静岡市から動物の死体処理業務を受託していたが、動物病院からの供養の場、総合的な動物霊園事業を求める声を聞いてきた。また、近年のペットブームを反映して、ペットロス症候群といわれる人々が増加しているという事実にも直面させられた。このような点から、清潔で明るい環境の中に、「癒やし」を与えてくれたパートナーを安らかに眠らせるための施設の必要性を痛感してきた。
 そこで、焼却設備業、動物病院勤務者、寺院関係者等の経験者とともに、それぞれのノウハウを出し合いながら、静岡県内には類を見ない、新たな総合的霊園事業を目的に企業組合を設立した。
 持ち込みまたは当園が出向いて引き取った遺体を、僧侶による葬儀後、個別葬、合同葬のいずれかにより火葬する。合同葬の場合のお骨は、当霊園の合同慰霊碑に合同で祀られるが、個別葬の場合には、骨壺に入れて持ち帰るか、または、本堂や納骨堂に室内霊座される。さらに、希望により初七日、一周忌、三回忌などの法要も行う。料金体系は、お迎え料、火葬料(動物の大小により料金を細かく設定)、納骨料(合同慰霊碑、納骨堂A~C、本堂等、それぞれ料金体系が異なる)、供養料、法要料、写真供養、その他の供養料等細かく設定している。また、営業担当者による動物病院への営業活動、動物病院の医師による講習会や盲導犬講習会等により、動物の生前から飼い主との関係性の構築に力を入れている。
 満足した使用者の口コミ、営業担当者の動物病院への巡回、専門誌(動物雑誌等)への広告、各種講習会等による動物愛好家とのパイプ作り等の地道な活動により、取り扱い数が徐々に増加しており、順調に推移している。

どうぶつの森霊園入口 動物観音と周辺
どうぶつの森霊園入口 動物観音と周辺

仲間が集まり、デジタルコンテンツ制作を共同受注
兵庫県デジタルソーホー事業協同組合
■所在地:姫路市 ■設立:平成13年2月
■組合員数:10人 ■出資金:100万円
■地区:姫路市
■主な業種:電子通信業 受託開発ソフトウェア業 情報処理サービス業 他
■組織形態:異業種組合 ■専従理事: - ■組合専従者: -
■URL:http://www.hyogo-soho.or.jp/index.html

ボランティアで知り合った異業種SOHO事業者が集まり、デジタルコンテンツ制作やIT講習等の共同受注事業を展開し、SOHO関連セミナーにも積極的に参画
組合ホームページ
組合ホームページ
 ボランティアで知り合った異業種が集まり、「SOHO事業者単独では受注の難しかった仕事の共同受注」をめざして組合を設立した。一般的に小規模で事業経験の浅いものが多いとされるSOHO事業者と、発注企業を仲介する機能の必要性に着目し、共同受注というスタイルでの受け皿づくりがなされているが、「仲間の集まり」という雰囲気は現在も色濃く引き継がれている。
 公的機関の発注を中心に、ホームページやCD-ROMなどのデジタルコンテンツ制作や、IT講習などの組合員の仕事の共同受注に取り組んでいる。他方、理事長をはじめとして各種セミナーでの講演やパネラーとしての参画機会も多く、SOHO事業に関する当組合の考え方や実施状況を外部に向けて積極的に情報発信している。また、地域の助け合いに貢献するエコマネーのシステム作りや、SOHO事業自体のあり方やパソコン再生をテーマとしたセミナーへの参画など、ユニークな活動も目立っている。なお、組合員の自宅兼事務所の一部を組合事務所として使用し、組合自体が文字どおりSOHOを実践している形となっている。
 設立後、実質的に半年間の活動で、14件、計1,300万円余りの受注実績をあげている。
組合ホームページ
組合ホームページ
さらに、テレビや新聞における当組合や組合事業活動の紹介実績も多数を数え、当組合、及び、SOHO事業者の認知度向上に貢献している。現在は、事業局内に常駐者がいないため、会員間の情報交換はネット上のメール交換等が中心であるが、理事長を中心に個々の組合員の意見を発表しやすい雰囲気を作り、良好なコミュニケーションが図られている。なお、平成13年12月には組合事務所の新設を予定しており、また、当組合による事業実績の積み重ねこそが、SOHO事業者への信頼度向上につながるという信念を持ち、将来に向けての事業推進を図っている。

高齢者用”緊急通報システム“で安心を提供
協同組合愛媛県介護福祉支援センター
■所在地:松山市 ■設立:平成11年2月
■組合員数:31人 ■出資金:9,100万円
■地区:松山市他9市
■主な業種:病院 老人福祉事業 介護福祉専門学校 人材派遣 建築工事業 他
■組織形態:異業種連携組合 ■専従理事:1人 ■組合専従者:10人
■URL: -

24時間対応の緊急通報システムの運営を中心に高齢化社会へ対応する多角的サービスを提供している。新たに徘徊早期発見システムを導入して事業の充実を図る
 福祉サービスに関連する事業者が集まり、高齢化社会に対応する多角的なサービスを提供する事業に取り組むことになった。目的は、お年寄りのいる家族が安心して暮らせる社会環境づくりである。結果は狙いどおりとなり、新聞発表を見て60~70社の応募があり、経営の安定性・地域社会の評価・介護福祉に対する考え方などから、31社の組合員が確定した。
 介護保険法が制定される前年に組合を設立したが、国の方針が定かでないため行政の対応も不安定で、なかなか事業の基盤整備が進まなかった。しかし、成果を得るには長期間を要すると考えたため、まず「緊急通報システム」を構築し、これを売り込みながら地道な営業活動を進めてきたことで、行政機関からの信用が徐々に得られるようになった。結果として、松山市を中心とする中予地区の行政機関から、独居老人緊急通報による支援を委託されるようになった。現在の契約数は約400人で、今年度内に500人を獲得する予定である。
 今後は、「徘徊早期発見システム」も導入するので、サービスメニューも拡大充実する。現在、試験的に運行しているが、「移動スピードが速くても探知可能」「ビルの中に入ると分かりにくいが、きわめて距離の誤差が少ない」「軽いので身に付けていることの圧迫感がない」など様々な端末を用意して、営業拡大に備えている。
 現在は中予地区に限定されているものの、今後、確実に東予・南予の行政機関にも浸透していくものと思われ、行政機関に採用されることで組合の信頼性は大きく向上することが考えられる。これによって今後、組合員が目的としていた、受注斡旋事業の拡大が期待できる。これまでが基盤整備の時期と呼ぶならば、これからは成果回収の時期であると言える。
保育風景

7府県の障害者がインターネットでユニバーサルデザインを提案
企業組合ユニフィカ
■所在地:中村市 ■設立:平成12年9月
■組合員数:7人 ■出資金:310万円
■地区: -
■主な業種:ユニバーサルプロダクツ サポート事業 Webサイト運営
■組織形態:分散型企業組合組 ■専従理事:1人 ■組合従業員数: -
■URL:http://www.heartful.ne.jp/

ネットを介した組合活動が、障害者に大きな可能性を示すとともに、障害者の視点によるコンサルティングで、優れたユニバーサルデザイン提案が可能になった
 インターネットを通じて知り合った高知、北海道、青森、三重、大阪、兵庫、岡山の重度障害者6名、健常者1名が、「Office Line」というワークチームを結成したが、法人格のない任意団体では社会的地位の確立は難しく、法人設立を考えるようになった。在宅就労形態で働くことにより、優秀な障害者にとっては、健常者以上の生産性をあげることができることを明らかにするとともに、在宅就労の諸問題を解決することを目的として企業組合を設立した。
 取り組みの内容としては、(1)バリアフリー商品、ユニバーサル商品等の開発支援、マーケティング調査、街づくりコンサルタント(2)総合福祉情報掲載Webサイト「ハートフルオンラインHo!」の企画・制作(3)各種業務用支援アプリケーション開発、インターネットサーバ構築・運用管理、コンピュータシステムコンサルタント等である。
 これらの活動の結果、トヨタ自動車、NECなどの大手からも受注するなど(1)重度障害者の精神的自立が認められた(2)障害者の新しい就労形態としてマスコミ、インターネット等を通じて、社会、企業、官公庁等に認知された(3)企業組合にすることにより、企業、官公庁からの受注が容易となったことなどが成果としてあげられる。
 既に仕組みとしてはあるが、今後さらに、総合福祉情報掲載Webサイト「ハートフルオンラインHo!」を使っての高齢者、障害者、介護者、幼児・障害児の親等による数万人規模の会員化を図れば、会員組織を活かしたユニバーサルデザインの商品別ランキング、商品データベース等の構築や、企業の製品開発のマーケティングリサーチのきわめて有効な手段として(1)ユーザーを集める(2)ユーザーが持つブランド情報を蓄積する(3)他のユーザーに広める、という3段階のマーケティングが可能となり、組合として大きく成長することも可能となる。

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