1.機動的な景気対策の推進

 景気の腰折れを防ぎ、回復への道筋を確実なものとするため、大型の第二次補正予算を早期に成立させるなど、引き続き、内需拡大のための切れ目のない機動的な景気対策を強力に推進すること。
 また、中小企業の景気回復と活力の増進を図るため、以下の対策をはじめとする、強力な中小企業対策を次の臨時国会において、速やかに実現すること。
 (1)中小企業者の範囲の拡大等のための中小企業基本法の改正
 (2)組合から会社への組織変更を認める中小企業組合法制の改正
 (3)事業承継税制やエンジェル税制の拡充
 (4)和議法に代わる民事再生手続法(仮称)の制定

2.中小企業(組合等の連携組織を含む)の経営革新、創業、新事業の創出への
  支援対策の抜本的な強化

 中小企業が、21世紀に向けて、新たな発展基盤の形成・強化を図ることができるよう、経営革新、創業、新事業の創出への積極的な取り組みを強力に支援すること。
 また、組合をはじめとする中小企業連携組織による、これらへの共同の取り組みに対しても、支援施策の充実強化を図ること。

3.中小企業対策予算の大幅な増額等

 平成12年度の予算編成にあたっては、経営革新や創業、新事業の創出に積極的に取り組み、新たな発展基盤の形成・強化を図ろうとする中小企業への強力な支援をはじめ、中小企業施策の抜本的な強化を図るため、中小企業対策予算の大幅な増額を図ること。
 また、地方財政が逼迫化している状況に鑑み、事業費について国の補助要件の弾力化を図ること。
 さらに、施策利用者への受益者負担の導入については、現下の厳しい経営環境の中で、中小企業の前向きの取り組み意欲を大幅に減退させるおそれがあるので、中期的な視点から段階的に進めるなど、慎重に対処すること。

4.中小企業連携組織対策の強化

 (1)中小企業が、経営革新や創業、新事業の創出への取り組みを行っていく上で不可欠な、中小企業組合をはじめとする中小企業連携組織の活動と、商工組合等の業種別組織の活用による環境・安全問題などの社会的要請への対応等を促進するため、組織化対策の一層の充実強化を図ること。
 (2)地方財政が逼迫している現況に鑑み、国は、一般財源化された都道府県中小企業団体中央会職員の人件費について、交付税面での所要の手当て等に万全を期するとともに、都道府県においても、指導体制の整備・充実、事業の円滑な実施等について特段の配慮を行うこと。
 また、都道府県における新事業創出のための総合的支援体制(地域プラットフォーム)の整備にあたっては、中小企業団体中央会が、その有する知識・経験・専門性及び傘下中小企業連携組織とのネットワークを活用し、「中小企業連携組織支援機関」として、新 たな時代の中小企業のニーズに積極的に応えていけるよう、明確な位置づけを行うこと。

5.中小企業組合制度の改正及び運用の弾力化

 中小企業が、事業の発展段階や環境変化に応じて多様な連携組織形態を選択し、柔軟な組織再編が可能となるよう、中小企業等協同組合法及び中小企業団体の組織に関する法律を改正し、中小企業組合から会社への組織変更規定を導入すること。
 また、組合が、環境の急激な変化の中で、新しい時代の要請に応じ、経営革新や創業、新事業の創出に積極的に取り組もうとする中小企業を十分に支援することができるよう、現行法の運用の弾力化を図ること。

6.中小企業金融対策の一層の拡充

 (1)20兆円の特別信用保証枠については、年末の資金需要期までに、必要かつ十分な増枠を決定すること。
   また、今後の景気動向を注視しつつ、特別信用保証制度の取扱期間の延長及び償還期間の延長など、引き続き信用保証機能の充実を図ること。
   さらに、以上の措置に対応した中小企業総合事業団の保険準備基金、融資基金及び信用保証協会の基金補助金の増額を行うなど、その資本基盤の強化を図ること。
 (2)政府系中小企業金融機関の貸し渋り対策関連の特別貸付制度についても、取扱期間の延長、限度額の引き上げなどを図るとともに、このための所要の政府出資の追加等を行うこと。
   また、このほかの貸付制度についても、貸付資金量を十分確保するとともに、貸付枠の拡大、金利の引き下げ、返済期間の延長、無担保貸付制度の拡大など、制度の一層の拡充を図ること。
 (3)本年10月18日に期限切れとなる、金利5%超の政府系中小企業金融機関の既往貸付に対する金利減免措置について、取扱期間を再延長すること。
 (4)中小企業総合事業団の高度化融資については、新規借入に限定されている低減金利を既往借入組合にも適用するなど、制度の改善を図ること。
 (5)民間金融機関の貸し渋り等に対する監視及び是正指導を強力に行うこと。また、ベイオフ凍結解除に関しては、決済性預金保護に万全を期すなど、中小企業金融に悪影響を与えることのないよう十分配慮すること。

7.中小企業税制の一層の拡充

 中小企業が現在の閉塞状況を打破し、21世紀に向けて経営基盤の強化と活力の増進を図ることができるよう、次により、一層の税負担の軽減等を図ること。
 (1)法人事業税への外形標準課税導入絶対反対
 (2)中小同族会社の留保金に係る重課税制度の廃止
 (3)中小法人の軽減税率の適用所得限度額の引き上げ
 (4)エンジェル税制の抜本的拡充
 (5)特定情報通信機器の即時償却及び中小企業投資促進税制等の適用期限の延長
 (6)固定資産税の税率の引き下げ
 (7)減価償却制度の見直し
 (8)青色申告者に対する勤労所得控除制度の確立

8.事業承継税制の抜本的な拡充

 わが国経済の活力の源泉であり、雇用の担い手である中小企業が、次世代への事業承継を円滑に行えるよう、中小企業に係る相続税制等を中小企業に固有の事業承継税制として確立し、次の措置を講ずること。
 (1)相続税・贈与税の最高税率の引き下げと税率構造の緩和を行うとともに、贈与税の基礎控除額を60万円から300万円に引き上げること。
 (2)生前相続特例制度(贈与税の納税猶予)を創設すること。
 (3)中小企業の小規模宅地等の相続に係る課税特例措置の減額率を80%から100%に引き上げること。
 (4)中小会社の取引相場のない株式の評価について、類似業種比準方式と純資産価額方式の選択適用を認めるとともに、類似業種比準方式における減額率を50%以上に引き上げること。また、会社区分の判定基準を見直すとともに、収益還元価額を加味した評価方法の導入を早急に検討すること。
 (5)相続税の支払いに係る負担を軽減するため、延納期間5~20年を大幅に延長すること。

9.中小企業者の範囲の拡大

 中小企業政策の対象となる中小企業者の範囲については、中小企業の実態に即したものとなるよう、中小企業基本法の資本金基準等の引き上げを速やかに行うこと。
 また、中小企業者の範囲を拡大する際は、これまでの中小企業者に対する施策の内容が稀薄化することのないよう、予算の拡充等の特段の配慮を行うこと。
 なお、サービス業など業態が多様な業種については、すべての施策に一律の基準を適用するのではなく、施策ごとの目標・内容等に照らして、その最も適した基準の適用が弾力的に行えるようにすること。

10.中小企業、組合等の情報化の推進

 (1)情報ネットワーク等コンピュータ及び通信技術の高度利用を促進するため、組合等が行うソフトウェアの開発及びネットワークシステムの構築等に対する支援施策を拡充強化すること。また、中小企業や組合等が情報通信ネットワークを利用する際の負担を軽減するため、早急に低廉な通信料金制度の実現を図ること。
 (2)平成11年度末に期限の到来する、情報通信機器導入のための「特定情報通信機器の即時償却制度(パソコン減税)」の適用期限の延長を図ること。

11.中心商店街等商業集積の活性化対策の充実強化、中小商業・サービス業の
   振興

 (1)中心商店街等商業集積の活性化を図るため、商店街組合等が空き店舗の斡旋提供、店舗の入れ替え等による新陳代謝を促進するための支援措置を積極的に講ずること。また、中小商業活性化基金に代わる新たな基金(商店街競争力強化基金:〈仮称〉)を創設すること。
 (2)中小卸売業者が流通構造の急激な変化に的確に対応するため、リテールサポート、商品開発、電子商取引を活用した新業態開発等を実現していくための支援措置を拡充強化するとともに、流通コストの削減、環境問題等の改善を図るため、共同化による物流効率化推進事業等の支援施策の充実を図ること。
 (3)わが国の創業、起業の大きなウェートを占めている中小サービス業に対し、人材養成、情報化への対応、事業の高度化等を促すため、サービス態様に応じたきめ細かな総合的な支援策を講ずること。

12.街づくりとの整合性に配慮した大店立地法の運用・公正取引の確保のための
   施策の強化

 (1)大規模小売店舗立地法の施行にあたっては、中心市街地の活性化が図られるよう、街づくり3法の整合性を確保するとともに、都道府県が地域の実情に沿って、柔軟かつ適切な運用を行えるための支援策を講ずること。
   また、現行都市計画制度では、郊外における大規模集客施設の計画的な立地を図る上で限界があることに鑑み、総合的かつ広域的な土地利用法制を整備すること。
 (2)大規模小売業が行う不当廉売、不当表示、誇大広告等の不公正な取引方法及び優越的地位を濫用した取引行為に対し、厳正かつ迅速に対処するとともに、中小企業と大企業間の不公正な取引に対処するため、被害の未然防止及び実効性ある被害者救済制度等を導入すること。

13.中小企業雇用対策の充実

 (1)雇用情勢が悪化する中で、ミスマッチをなくすため改正された労働者派遣法及び職業安定法を早期に施行すること。
 (2)雇用保険の見直しにあたっては、中小企業に新たな負担を強いることのないよう十分配慮すること。
 (3)パートタイム労働者に対する所得税等の非課税限度額を大幅に引き上げるとともに、高齢者に対する在職老齢厚生年金の減額措置の拡大は行わないようにすること。
 (4)高齢者の就業の場を確保するため、高齢者自らが、企業組合などの中小企業連携組織を活用し事業創出することが促進されるよう所要の措置を講ずること。

14.確定拠出型年金制度の創設

 確定拠出型年金制度の創設にあたっては、中小企業への普及の観点から、以下の事項について十分配慮し、導入を図ること。
 (1)事務負担軽減並びに低コスト化を図り、中小企業にとって導入しやすい制度となるよう十分配慮すること。
 (2)企業が拠出しない場合の従業員加入について、給与天引きをするか否かは、企業の判断に委ねること。
 (3)現行制度からの移行にあたっては、退職給与引当金や企業年金積立金について、全額非課税での移行を認めること。
 (4)税制面において、公平性が損なわれることとならないよう十分配慮すること。

15.環境・安全・エネルギー問題に対する支援策の拡充

 地球環境保護や安全・エネルギー対策に係る社会的規制の整備が進む中で、中小企業が直面する課題に円滑かつ的確に対応できるよう、次の措置を講ずること。
 (1)中小企業に対するきめ細かな情報提供体制の整備・強化と官民一体となった技術開発等の促進を図るとともに、環境・安全・エネルギー対策に積極的に取り組む中小企業を強力に支援するため、予算・金融・税制措置の一層の充実を図ること。
   また、化学物質管理法(PRTR法)等をはじめ、今後相次いで施行等が予定されている環境関連法の一層の普及促進を図ること。
 (2)商工組合等の中小企業の業種別組織を活用した環境・安全・エネルギー支援対策を強化すること。
 (3)中小企業が共同で取り組む廃棄物の減量化・リサイクル施設の設置等に対する支援を強化するとともに、地方公共団体等による産業廃棄物の最終処分場の確保・設置を強力に支援すること。

16.下請対策の強化

 流動化する下請分業構造の中で、情報化の推進、技術力の強化、新製品開発などを行い、経営革新や新たな事業展開に積極的に取り組む下請中小企業や組合等に対する支援策を強化・拡充すること。
 また、下請中小企業振興法の振興基準について、より広範囲の分野の取引の明確化を図る方向で制度を見直すとともに、下請代金支払遅延等防止法について、現行の物品等の製造委託に加えて、サービス業等の役務の提供委託などについても適用対象とするなどの制度改正を行うこと。

17.中小企業向け官公需の増大

 国は、官公需施策を今後とも中小企業対策の重要な柱として位置づけ、「国等の契約の方針」に定められた措置事項の完全実施に努めるとともに、官公需の中小企業向け発注を大幅に増額すること。
 また、発注機関に対して官公需施策の一層の徹底を図り、特に官公需適格組合の積極的な活用を促進すること。

18.信用組合の充実強化

 (1)中小企業金融の円滑化と地域経済の発展に重要な役割を果たしている信用組合が、わが国の金融機関を巡る状況が大きく変動する中にあって、引き続き経営の
健全性を確保し、中小企業と地域社会の負託に応えられるよう、その経営体質の強化と信用基盤の確立について全面的な支援を行うこと。
 (2)信用組合が中小企業の多様な金融ニーズに積極的に応えられるよう、地方公共団体の低利預託金の増額等を図るとともに、政府系の各種機関の代理業務、収納業務等及び国庫歳入金の取扱いについて拡大措置を講ずること。
 (3)組合員の相互扶助を理念とする信用組合は、中小企業が厳しい経営環境を乗り切っていくことを支援することにより、中小企業を守り育てていくという使命を有していることから、今般の金融検査マニュアルの適用については、中小企業及び信用組合の特性・実態等を踏まえ、適切な運用が行われるよう十分に配慮すること。

19.地域中小企業振興対策の充実強化

 地域経済を支える中小企業の自律的発展を支援するため、地域産業集積活性化法等に基づく施策の拡充、地場産業製品の販路拡大のための「全国地場産フェア」の開催、自然・伝統文化等の資源を生かした産業の振興策の拡充など、地域中小企業の振興対策の一層の充実強化を図ること。
 また、地域改善対策特定事業については、引き続き一般対策への円滑な移行に努めること。

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