3.技術指導への支援

(1) 都道府県(市)による技術研修

中小企業では、優秀な技術者を確保することが困難であり、また、最近の技術進歩により生まれた新しい技術を企業内に取り入れていくためには、企業の技術者の資質を向上していく必要があります。
このため、都道府県及び政令指定市において、産業界、学界の協力と国の補助金を受けて中小企業の技術者に対する研修が実施されています。

① 長期技術者研修

技術に関する基礎理論、応用知識等についての研修による総合的な技術開発能力及び開発企画力の向上。
(360時間程度 定員30人 35コース)

② 中期技術者研修

特定業種の技術に関する基礎理論、応用知識等についての研修による特定の業種に関する専門的な技術開発能力の向上。(60時間程度 定員30人 40コース)

③ 短期技術者研修

技術に関する専門知識等についての研修による専門的知識の向上。
(36時間程度 定員30人 81コース)

④ 地場産業振興高等技術者研修

地場産業製品の高度化、高付加価値化に対応するため、高度かつ横断的な総合技術についての研修による高度かつ専門的な技術開発能力の向上。
(100時間程度 定員20人 30コース)

⑤ 新技術技術者研修

先端技術に関する基礎知識等についての研修による基礎的知識の養成。
(9時間程度 定員20人 52コース)

⑥ 研究者養成研修

創造的な研究者を養成するため、公設試験研究機関との共同研究を通じた研究開発能力の養成。
(定員3人 27コース)
・事業費負担…国、都道府県(政令指定市を含む)及び受講者が3分の1ずつ負担
・申込み先…都道府県及び政令指定市の商工担当課又は公設試験研究機関

(2) 中小企業総合事業団による技術研修

中小企業総合事業団の中小企業大学校(東京校)では、都道府県及び政令指定市で実施困難な技術内容のものについて、直接中小企業者を対象とした研修が実施されており、研修に参加できない中小企業者には、通信研修が行われています。
・事業費負担…国が3分の2、受講者が3分の1を負担。
・申込み先…中小企業総合事業団中小企業大学校東京校総務部研修生課


(3) 都道府県(市)の技術指導施設の整備

都道府県等に設置されている公設試験研究機関において、技術指導の中核的機関として中小企業者に直結した技術指導が行われています。国からは、公設試験研究機関の行う指導及び研修に必要な施設の整備に対する補助が行われています。
また、中小企業が自己の製品の品質・性能の向上及び生産の合理化を図るためには、原材料の試験、製品の検査等が不可欠ですが、これに必要な試験・検査設備を中小企業者が個々に保有することは資金面、経営面からみて困難です。そこで、中小企業に必要であり、かつ、中小企業者単独では設置し難い試験設備等を備え、中小企業者が自由に利用できるような開放試験室が公設試験研究機関に設置されています。
  問い合わせ先:都道府県及び政令指定市の商工担当課及び公設試験研究機関


(4) 新たな高度技術の普及・共同利用の促進

① 新高度技術普及共同利用事業

ベンチャー・中小企業に対して高度な新技術を普及するため、技術プロセスの各段階に応じて大学、民間団体等と連携し、指導・研修を行いつつ、その利用を共同で行うことを促進し、中小企業の新技術開発、新製品開発を総合的に支援します。
近年、家電・情報通信等様々な分野でLSI(Large Scale Integretion:大規模集積回 路)が利用されています。ベンチャー・中小企業が、その独創性・創造性を活かした事業展開を図るためには、システムLSIをはじめとした集積回路の活用が必須技術の一つとなりつつあります。しかしながら、ベンチャー・中小企業は、LSI設計に不可欠である高度なCAD(Computer Aided Design:設計支援ソフトウエア)設備や半導体製造装置を単独で保有することが難しく、CAD設備利用のためのノウハウ習得の機会にも恵まれていません。
このため、平成11年度においては、平成10年度に引き続き、ベンチャー・中小企業の独創的・創造的なアイデアを十分に活かしたLSIの開発(設計・試作・評価)を容易に行うことができるよう、所要の支援を行います。
  問い合わせ先:全国中小企業団体中央会


(5) 特許情報利用促進事業

地域・中小企業の円滑な技術開発を支援するため、各都道府県単位に知的所有権センターが設置され、地域産業界に対する特許情報の効率的な提供が行われています。

① 特許情報有効活用モデル事業

全国の知的所有権センターのうち25カ所が指定され、地域に密着した特定技術のデータベースと知的所有権アドバイザーが設置され、中小企業の効率的な特許情報の利用が支援されています。

② CD-ROM公報閲覧整備事業

地場産業等の地域固有の技術分野ごとに特許情報がCD-ROM化され、地域産業界のニーズに応じた特許情報が提供されています。

③ 特許流通支援事業

企業・大学・研究機関が保有するライセンス用意のある特許を、導入希望のある中小企業に対して円滑に移転し得るよう、各種の情報提供及び指導・アドバイスが行われています。
  補助率:定額補助、国1/2、国2/3
  交付先:都道府県
  問い合わせ先:特許庁工業所有権総合情報館情報流通部


(6) 特許流通促進事業

我が国に存在する膨大な未利用特許等(ライセンス用意のある特許)を、中小・ベンチャー企業等の技術力向上や新規事業の創出を図る技術シーズとして有効活用するため、特許の流通を促進する事業が実施されます。

① 特許流通データベースの整備

ライセンス用意のある特許がデータベース化され、インターネットにより無料で提供されます。

② 特許流通フェアの開催

特許の提供企業・大学・研究機関と特許導入を希望する企業とが直接出会うイベントが、全国の通産局及び沖縄総合事務局で開催されます。

③ 特許流通アドバイザーの派遣

全国の都道府県に設置されている知的所有権センターに専門家が派遣され、特許導入に関する指導・相談が実施されます。

④ 技術分野別特許マップの作成

技術分野ごとの特許の全体像を把握し得るパテントマップが作成され、全国の知的所有権センター等に配布され閲覧できます。
  問い合わせ先:特許庁工業所有権総合情報館情報流通部

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