2 特定事業等の実施について指針となるべき事項
2の1 商業集積の活性化に関する事業
2の1の1 中小小売商業高度化事業
(1)趣旨

本事業は、中心市街地における商業集積の活性化のための取組みが、従来、①個々の商店街ごとの活性化努力に止まり、中心市街地に展開する商業集積間の連携が必ずしも十分でなかったこと、②専ら基盤整備などの周辺事業に止まり、商業集積としての競争力の根幹である業種揃え・店揃えの最適化に関する取組みが不十分であったこと等を踏まえ、中心市街地における商業集積を一体として捉え、業種構成・店舗配置等のテナント配置、基盤整備及びソフト事業を総合的に推進し、中心市街地における商業集積の一体的かつ計画的な整備を図るものである。

(2)事業の要件

中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律施行令(平成10年政令第263号)第9条に定めるところによる。

(3)留意事項

① 中小小売商業高度化事業構想

ア 想定すべき期間
商業集積の業種構成・店舗配置の改善等には相当の期間を要することが一般的であることから、おおよそ5年から10年程度の期間を想定したものとすべきである。

イ 事業内容
事業構想の内容は、①中心市街地に存する商店街等の商業集積の大半を対象とすること、②当該商業集積全体における業種構成や店舗配置の計画性の確保・向上を図ることが必要であり、それぞれの事業は、そのような全体の構想の一環として進められることが望ましい。

② 推進体制

事業の確実な実施を図るためには、市町村においては関係部局間で十分な連絡調整を行うことが重要である。また、事業構想の策定・推進に当たっては、商店街関係者はもちろんのこと、域内の大手小売業者を含めた幅広い関係事業者間のコンセンサスの形成に努めるとともに、地域住民の代表の参画を得ることが望ましい。

③ 認定構想推進事業者の組織

認定構想推進事業者、いわゆるタウンマネージメント機関(TMO)の組織については、市町村、商店街関係者その他の関係事業者、商工会・商工会議所等の経済団体、住民等幅広い関係者の代表が運営・事業推進の基本的方針の決定等に当たるとともに、具体的な事業の企画、運営等については、高度の専門性門性を有する者を事務局として招聘し、又は内部に育成して、作業に当たらせることが望ましい。

2の1の2 特定商業施設等整備事業
(1)趣旨

中心市街地における商業の活性化のためには、消費者に対する多様なサービスの提供の観点から、多様な事業者が集積することが重要である。その場合、専門性の高い中小店が集積するのみでなく、大型店や各種公益施設を含めた集積を形成することにより、面的な商業集積全体としての魅力の向上を図ることも有意義である。
特定商業施設等整備事業は、大型店を含んだ商業集積の中に商業基盤施設又は相当規模の商業施設の整備を行うことにより、そのような面的な商業集積全体としての取組みを行い、中心市街地の商業の活性化を図るものである。

(2)事業の要件

① 実施場所

本事業は、現に相当程度の商業機能が集積し、地域商業の中心となるべき地域において、低下しつつある商業機能の活性化を図るため、その中核となる施設を整備する事業である。したがって、事業を行う中心市街地の要件として、概ね150以上の商店が立地し、また、医療福祉施設・文教施設等の公益的な施設が少なくとも一つ存在し、更に、複数の公共交通機関による来訪が可能な中心市街地であることが必要である。また、当該中心市街地における商店数、売上高、店舗面積のうち二以上の項目が低下しており、又は、二以上の項目の当該市町村内における中心市街地のシェアが低下している地域である必要がある。

② 施設の内容

整備する施設は、商業基盤施設又は相当規模の商業施設である。
そのうち、商業施設については、整備する施設の延床面積が、原則3000平方メートル以上であることが必要である。
また、商業基盤施設については、既存又は新設の商業施設と一体となるよう整備することとし、当該商業施設の延床面積が原則3000平方メートル以上であることが必要である。

(3)適切な資金調達

事業が確実に行われるよう、実施に必要な資金の調達方法・返済計画等の資金計画を、資金の使途、調達費用、収支見込み等を勘案して作成し、これに従って、各種の資金調達手段を有効かつ適切に利用して資金調達を行うことが必要である。
なお、整備する施設について特別償却制度を活用しようとする場合には、特定事業計画にその旨を明記し、制度の適用に当たっては、通商産業大臣の定めるところによりその証明を受けることが必要である。

2の2 都市型新事業の立地促進のための施設整備事業
(1)趣旨

都市型新事業を実施する企業等の立地の促進を図るためには、新たな事業展開に当たっての制約を解消することが重要であり、事業実施スペースを比較的低廉なコストで提供し、初期投資による負担及びリスクを低減する必要がある。
本事業は、都市型新事業の円滑な展開により経済的な波及効果が相当程度見込まれる施設の整備を行うものであり、賃貸等の形態により相当数の事業者の利用に供される事業場施設、事業の展開を支援するための共同研究施設、産学連携支援施設、インキュベータ、情報交流施設、展示・販売施設等を対象としている。

(2)事業の要件

① 施設機能

整備する施設は、賃貸型事業場等の都市型新事業を実施する事業者が入居して事業展開スペースとして利用する機能、展示・販売施設等の需要者との接触を通じた新事業展開の支援機能、共同研究開発施設や産学連携支援施設等の新商品・新役務に係る研究開発等を促進する機能、情報交流施設等の市場動向や需要家ニーズの把握を行う機能又はインキュベータ等の研究開発や事業化といった事業段階を支援する機能を有する施設である。

② 施設規模

整備する施設の規模は、概ね5事業者程度以上の利用が可能となるものであることが必要である。

③ 事業主体

事業の実施は、組合及び共同事業等の民間事業者の協力・連携の下での事業実施、地方公共団体等の公的主体と民間事業者の協力による事業実施、地方公共団体等の公的主体による事業実施、市街地整備等を実施する主体による事業実施など、中心市街地の活性化に即した事業を実施できる主体及び事業形態によって行われる必要がある。

④ 中心市街地の特性の活用

中心市街地及びその周辺に存在する事業者や研究機関、事業者支援機関等、当該中心市街地の有する人や組織のポテンシャル、技術的蓄積等を適切に活用する事業である必要がある。

(3)留意事項

事業の計画及び実施に当たっては、中心市街地の街並みや周辺に存在する機能、市街地整備の予定など、周辺環境との調和を図りつつ取組みを進めることが重要である。

2の3 中心市街地食品流通円滑化事業
(1)趣旨

青果店、鮮魚店等の食品小売業は、消費者の身近な存在であり、日々の食生活を支えるという重要な役割を担っており、ワンストップショッピング等食品の購買の利便に関する消費者ニーズの変化、高齢化の進展等社会構造の変化等の中で、地域の特徴に応じ、消費者の視点に立った諸機能の充実が求められている。
本事業は、商店街に分散する食品小売店の集積や既存食品小売市場のリニューアル等、中心市街地における食品商業集積施設を効果的に整備することにより、消費者の食品に関する購買の利便を確保するとともに、地域の中小食品小売業の発展を通じて中心市街地の活性化に資するものである。

(2)事業の要件

本事業は、食品小売店の集積効果により消費者利便の確保と食品小売業の活性化を図るものである。
このため、整備する施設については、食品小売業者の店舗が5店舗以上集積し、生鮮食品(青果、鮮魚又は食肉をいう。)の小売業者の店舗が存在する施設である必要がある。また、当該施設における食品の小売の事業を主たる事業として行う者の店舗数の割合が3分の2以上であり、当該施設と駐車場、休憩所等の消費者利便施設が一体的に整備されている必要がある。

(3)留意事項

施設の整備に当たっては、周辺の住宅の分布状況、道路及び交通網の整備状況、周辺の小売店の立地状況、防災対策等に十分配慮するとともに、高齢者、障害者等が利用しやすいものとなるよう施設のバリアフリー等に十分配慮するものとする。

2の4 乗合バスの利用者の利便の増進のための事業
(1)趣旨

中心市街地内外の移動手段として身近かつ一般的な公共交通機関として大きな役割を果たしているバスの運行頻度の改善等バスサービスの向上は、中心市街地の活性化に大きく資するものと考えられる。
このような観点から、運行系統ごとの運行回数の増加を特定事業として定め、これを促進するため、運輸大臣の認定を受けた場合には、法第29条の規定により、運行系統ごとの運行回数の増加に係る道路運送法(昭和26年法律第183号)上の事業計画の変更の認可を届出で足りることとした。

(2)事業の要件

法第4条第4項及びこれに基づき特定事業を定める運輸省令において、その全部又は一部の区間が中心市街地に存する路線に係る一般乗合旅客自動車運送事業について、運行系統ごとの運行回数を増加することを特定事業として定めている。
法に基づく特定事業としてこの運行回数の増加を行うに当たっては、次の要件に適合していることが必要である。

① 中心市街地内の商業施設等を利用しやすくするため、運行回数の増加を行おうとする運行系統の周辺の商業施設の営業時間、時間帯ごとの施設利用客の多寡等に配慮することが必要である。

② それぞれの地域における実情を踏まえ、運行回数の増加により中心市街地を含めた地域におけるバスサービスが全体として利用者の利便性を高め、かつ、調和がとれたものとなるようにすることが必要である。

③ バスサービスと鉄道等他の公共交通機関との連絡の円滑化に配慮することにより、交通サービス全体として利用しやすいものとすることが必要である。

(3)留意事項

① 地域社会における高齢化の進展、障害者の自立に関する社会的要請の高まり等を踏まえ、また、できる限り多くの者にバスを利用してもらうため、運行回数の増加に伴いバス車両を購入する場合等には、ノンステップバス等の導入に努める必要がある。

② バスの運行回数の増加と併せて、パークアンドバスライド、サイクルアンドバスライド等の交通システムを導入するために必要な施設の整備を行うことが、利用者の利便性を向上させる上で効果的であり望ましい。

③ 環境への影響にも配慮することが望ましいことから、低公害車、低燃費車の導入に努める必要がある。

2の5 貨物運送効率化事業
(1)趣旨

中心市街地において、共同集配施設を整備し共同で集貨又は配送を行う事業を推進し、中心市街地内の交錯輸送を排除することにより貨物の輸送の効率化を図ることは、流通機能の向上を通じて中心市街地の活性化に大きく資するものと考えられる、また、これにより、トラック走行台数が減少することに加え、貨物運送効率化事業を行う者を始めとする関係者が連携して、渋滞対策、駐車対策等と協調して事業を実施することにより、交通渋滞の緩和や大気汚染の削減などによる中心市街地内の交通環境の改善と地域住民の生活環境の改善を通じて、中心市街地の活性化に資することも期待される。このような観点から、共同集配施設を整備し、中心市街地において共同で集荷又は配送を行う事業を特定事業として定め、これを促進することとした。

(2)事業の要件

貨物運送効率化事業は、中心市街地からの貨物の集貨又は当該中心市街地への貨物の配達を継続して行う一般貨物自動車運送事業者又は第一種利用運送事業者(以下「既存運送事業者」という。)の集貨又は配達業務を効率化するための事業である。すなわち、共同集配を行うための施設を設置した上で、この施設を活用して複数の既存運送業者の集配業務を効率化するため、共同集配事業を行うものである。

① 実施場所

共同集配事業が行われる地域は、当該中心市街地において、営業用貨物自動車による交錯輸送が著しいことにより、貨物の運送の効率化を図ることが適切であると認められる地域とする。
共同集配のための施設を整備する事業が行われる地域は、中心市街地の区域の外であっても差し支えない。

② 事業主体

法第4条第2項第5号イに規定する施設を整備する事業者と同号ロに規定する共同集配事業を行う事業者は、同一主体でも、異なる主体でも差し支えない。イとロが異なる主体の場合は共同で特定事業計画を申請することとする。
ロに規定する事業を行う事業者は、既存運送事業者の全部又は大部分の集配を集約し、積合貨物の運送を行う必要がある。

③ 施設

イに規定する施設は、必ずしも自動仕分けコンベア等高度な物流機器を備えている必要はなく、共同集配事業を実施するために中心市街地から集貨された貨物の仕分け又は当該中心市街地への貨物の配達に必要な仕分けを行うことができる施設及び規模を備えていれば足りる。

(3)留意事項

① 貨物運送効率化事業の円滑な実施に当たっては、事前に十分、運送事業者間の利害の調整を行い、また、取引先の理解を得るなど共同集配事業が円滑に実施できるよう所要の措置を講ずる必要がある。
また、利害の調整に当たっては、本事業が中心市街地に係る集配を行う運送事業者の全部又は大部分が参加するものであり、大企業と中小企業が一体となって実施することが十分想定されることから、このような場合には、中小企業に不当な負担を課すことがないよう配慮する必要がある。

② 貨物運送効率化事業が円滑に実施され、その実施が一層促進されるためには、集配、荷捌きの効率化、伝票類の統一化、貨物の追跡管理情報システム等システムの高度化、事故時の責任の明確化など、サービスレベルの維持に努める必要がある。

2の6 中心市街地電気通信施設整備事業
(1)趣旨

中心市街地は、各種の事業者や消費者が集まる場であり、電気通信・放送サービスに対する多様なニーズが存在している。中心市街地電気通信施設整備事業は、このような中心市街地において、新しい電気通信技術を利用した情報の受発信が容易に行えるとともに、電気通信の利活用に関して様々なサポートが受けられる施設を整備し、電気通信の高度化を促進することにより、中心市街地の活性化に寄与するものである。

(2)事業の要件

① 実施場所

中心市街地電気通信施設整備事業が行われる地域は、事業の実施による政策的波及効果を発揮するとともに、事業の安定的運営を担保するに足る需要を確保する観点から、地方公共団体等を中心にして電気通信の高度化に関する先行的な取組みが行われており、また、情報通信面における先進的環境が整っているなど、高度な電気通信のサービスを定着させる上で、社会的受容性が高いと認められる地域を対象とする。

② 事業主体

中心市街地電気通信施設整備事業を行う者は、株式会社であって、当該株式会社の出資者、役員等の構成が全体として幅広い利益を代表としたものであり、本事業の趣旨に沿った公平な運営が図られるものとする。

③ 事業の内容

本事業は、中心市街地において、企業、地域住民等に高度かつ多様な電気通信のサービスを提供するための共同利用施設を整備・運営することにより、中心市街地における電気通信の高度化を図り、もって新たな事業機会の創出や効率的な経済活動の実現、豊かな生活空間の創造に貢献するものである。
中心市街地の企業、地域住民等は本施設の整備によって、高度かつ多様な電気通信のサービスを利用することが期待できる。

(3)留意事項

中心市街地電気通信施設整備事業は、以下の諸点に留意して実施されるものとする。

① 経営方針の策定等

あらかじめ基本的な経営方針を策定することとし、状況の変化に応じて随時当該方針の見直しを図ること。また、おおむね5年間程度の事業計画を作成し、事業展開の方向について誤りのないよう留意すること。

② 資金調達上の留意点

市場動向についての十分な予測を行った上で、事業規模及び事業の性質等に対応した適切な資金計画を立案すること。実施に必要な資金の調達及び返済の計画を、資金の使途、期間、調達費用、収支見込み、資本の規模等を勘案して作成し、この計画に従って、各種の資金調達手段を有効かつ適切に利用して資金調達を行うこと。

③ 実施体制における留意点

事業の性質等に対応した適切な人的体制及び物的資源を確保することにより、効率的な実施体制を整備するとともに、不正及び過誤の防止並びに適切性及び効率性の確保のための経営管理体制の確立に努めること。

④ その他配慮すべき重要事項

ア 公平な運営の確保
中心市街地電気通信施設整備事業の実施に当たっては、公平な運営が確保されるよう努めること。

イ 利用条件
中心市街地電気通信施設整備事業の実施に当たっては、適正な水準の施設の利用料等を設定するように努めるとともに、利用時間その他の利用の条件についても利用者の要望に配慮すること。

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