1.特定産業集積活性化対策

わが国には、伝統的な陶磁器、食品、織物等の「産地」や、製鉄、造船等大企業の立地により発達した「企業城下町」、あるいは京浜地域や大阪東部地域のようにさまざまな中小・中堅企業が密集した「工業地帯」等の「産業集積」が発達し、わが国の「ものづくり」を支えてきました。
しかし、近年の為替環境の変化や企業活動の国際展開の進展により、廉価な輸入品の急増による「産地」の低迷や、「企業城下町」や「工業地帯」の中核を形成していた企業の海外生産の増加や海外移転等が、「ものづくり」の基盤である部品の製造や試作等の中小・中堅企業の転廃業や海外移転等をもたらすという「空洞化」の懸念が高まっています。
「産業空洞化」の進展は、わが国の基幹産業を支えてきた、部品、金型、試作品等を製造する「ものづくり」の基盤となる、地域の産業集積(基盤的技術産業集積)や、地域の自律的発展の基盤となる中小企業の集積(特定中小企業集積)に大きな影響をもたらしています。
地域産業の自律的発展を図るためには、これらの産業集積が技術の高度化や新分野への進出等を通じて活性化を図り、地域経済の発展の基盤を強化することが重要となっています。
このため、「特定産業集積の活性化に関する臨時措置法」(地域産業集積活性化法)を支柱として、特定産業集積の活性化を促進するため、予算、税制、金融上の総合的な支援措置が講じられています。

(1) 補助金

① 地域産業集積創造基盤施設整備事業

「地域産業集積活性化法」及び「小規模事業者支援法」に基づいて、公益法人、商工会等が行う新規創業や新分野進出のための廉価賃貸事業所又は研究室の整備に対して補助が行われます。

補助額 1カ所当たり 国4,000万円、県4,000万円
補助率 定率1/4(地方公共団体も同額)
出 資 中小企業事業団からの出資
融 資 中小企業事業団高度化融資
融資割合 設備資金 対象施設設置資金の90%以内
運転資金 所要資金の80%以内
償還期限 設備資金 20年以内(うち据置期間4年以内)
運転資金 10年以内(うち据置期間3年以内)
金 利 設備資金 無利子
運転資金 無利子
交付先 株式会社、公益法人又は商工会等(中小企業事業団からの出資を除く。)

② 地域産業集積活性化調査事業

都道府県が活性化計画を策定する際の実態調査及び法の施行状況、施策の利用状況等の調査を行うために必要な事務に対して補助が行われます。
  補助率:1/2 補助額:@949万円 交付先:7地域

③ 地域産業集積活性化計画策定事業

都道府県が法に基づく活性化指針に従って活性化計画を策定する際の計画策定事務に対して補助が行われます。
  補助率:1/2 補助額:@472万1,000円 交付先:12地域

④ 地域産業集積活性化指導等事業

都道府県が法に基づく活性化計画を地域中小企業に周知し、中小企業者が円滑に「高度化等計画」及び「進出計画」等を策定するように指導・助言する際の事務に対して補助が行われます。
  補助率:1/2 補助額:@191万5,000円 交付先:46地域

⑤-1 地域産業創造技術研究開発費補助金(地域産業集積活性化枠)

基盤的技術産業集積において、都道府県知事から高度化等計画又は高度化等円滑化計画の承認を受けた個別中小企業・組合等が行う研究開発に対して都道府県を通じて補助が行われます。
組合分
  補助率:10/10(国・県1/2ずつ)
  補助額:@2,205万円 交付先:7組合等
企業分:
  補助率:2/3(国1/3、県1/3)
  補助額:@2,205万円 交付先:20業者

⑤-2 地域産業集積活性化計画支援事業

特定中小企業集積において、都道府県知事から進出計画又は進出円滑化計画の承認を受けた個別中小企業・組合等が行う新商品開発・販路開拓事業等に対して都道府県を通じて補助が行われます。
 組合等計画事業
  補助率:10/10(国・県1/2ずつ)
  補助額:@1,792万4,000円
  交付先:66組合等
 個別計画事業
  補助率:2/3(国1/3、県1/3)
  補助額:@902万6,000円
  交付先:100業者

⑥ 関連機関支援強化事業

活性化計画に位置づけられた公設試験場、地場産業振興センター等の支援機関が行う人材育成・共同研究支援等の事業に対して都道府県を通じて補助が行われます。
  補助率:10/10(国・県1/2ずつ)
  補助額:@1,909万1,000円 交付先:60支援機関

⑦ 地域産業創業機会創出事業

投資家と新規事業者の「見合い」のために都道府県が行うベンチャープラザ事業に対して補助が行われます。
  補助率:1/2 補助額:@1,701万2,000円 交付先:6地域

(2) 税 制

① 基盤的技術高度化促進税制

基盤的技術産業集積において、都道府県知事の承認を受けた高度化等計画に従い事業を行う事業者であって、通商産業大臣が定めた要件に基づき認定を受けた者は基盤的技術高度化促進税制の対象事業者として認められます(共同で事業を実施する場合に限る。組合は単独で可)。

ア.基盤的技術産業であり、かつ、事業革新法指定業種(事業革新設備を取得)である場合

25%特別償却

イ.ア.以外の基盤的技術産業(事業革新設備を取得)である場合

20%特別消却

ウ.ア.イ.以外の基盤的技術産業(500万円以上の機械装置を取得)である場合

15%特別償却

② 中小企業等基盤強化税制

都道府県知事の承認を受けた計画に従い事業を行う中小企業者は、中小企業等基盤強化税制の対象事業者として認められます(機械及び装置について30%特別償却又は7%税額控除)。

③ 試験研究税制

組合が都道府県知事の承認を受けた計画に定める試験研究の費用に充てるため、組合員に賦課金を課した場合に、組合員が当該賦課金を任意償却するとともに、増加試験研究費等税額控除制度の対象として認められます。また、当該賦課金によって試験研究用資産を得た場合に圧縮記帳が認められます。

④ 地方税の減免措置(特別土地保有税、事業所税)

都道府県知事の承認を受けた計画に従い中小企業者等が行う事業の用に供する土地に係る特別土地保有税の非課税措置並びに当該事業の用に供する施設に係る事業所税(新増設分)の非課税措置があります。

(3) 融資制度

① 地域産業集積活性化資金

貸付対象 都道府県の承認を受けた計画に基づき事業を行う中小企業者
貸付使途 設備資金及び運転資金
貸付利率 年2.4%(基準利率)
(設備資金については、2億7,000万円を限度として特利③)
貸付限度額 7億2,000万円(中小企業金融公庫)
7,200万円(国民金融公庫)(組合は別)
※ 担保徴求の特例制度あり

② 地域中小企業特別支援貸付(体質強化融資)

貸付対象 特定地域中小企業対策臨時措置法及び特定産業集積の活性化に関する臨時措置法での対象市町村のうち通商産業大臣が定める要件を満たす中小企業者
貸付使途 設備資金及び運転資金
貸付利率 年2.4%±1%の範囲内で都道府県等が定める率
貸付限度額 2,000万円以上(運転資金は1,000万円以上)で上限は都道府県が設定
取扱機関 商工中金、民間金融機関

③ 地域産業集積特別貸付(体質強化融資)

貸付対象 都道府県の承認を受けた計画に基づき事業を行う中小企業者及びその関連中小企業者
貸付使途 設備資金及び運転資金
貸付利率 年2.4%±1%の範囲内で都道府県等が定める率
貸付限度額 8,000万円以下(運転資金は3,500万円以下)で都道府県が定める額

④ 高度化融資

都道府県知事の承認を受けた計画に基づき実施する各種高度化事業は、構造改善等高度化事業(特定)の対象となり、貸付条件が優遇されます。

⑤ 中小企業信用保険公庫の特例措置

ア.都道府県知事の承認を受けた計画を実施する中小企業者等を対象に、信用保険法上の付保限度額、填補率、保険料率の特例があります。
イ.都道府県が作成し、法律の認定を受けた計画に位置づけられた支援機関のうち一定の公益法人が信用保険法の対象になります。

⑥ 中小企業投資育成株式会社法の特例措置

都道府県知事の承認を受けた計画を実施する中小企業者であって資本金1億円超の企業は、中小企業投資育成株式会社による株式引受け等の対象になります。

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