協同組合ながのリサイクルテクノ
 技術情報 1999.11

 表面処理におけるクロムフリーについて 1999.11

 6価クロムの有毒性についてはある程度認識されていたが、作業環境上あるいは排水規制等が重視され、一般環境負荷についてはあまり全面にでることが少なかった。
 しかし、1992年のVolvo Leach Test, に始まり1996年 7月に欧州議会から「車両の廃棄回収に関するDirective」(Proposal for a European Parliament and Council Directive on end life vehicles)の草案が出されてから様相がかわってきた。
 それはこの草案の中に「2002年1月以降に販売する車からPb(電池をのぞく)、Hg(電池をのぞく)、Cd、6価Cr、塩ビを使用しない」という一項があったことから自動車業界をはじめとして大きな問題となった。(1)

 また、機を同じくしてPRTR、ISO 14000などの新たなルールや規制も強化され環境に対する化学物質の関与が注目されるようになってきている。
 この「車両の廃棄回収に関するDirective」のDirectiveとは指導という意味であり、命令という意味を持つものではないと解釈されているが、規制につながるものとして注目された。 
 そこへドイツのOpel社が2000年以降6価クロム使用の全面禁止(1997年6月以降新図面禁止)の方針を出し、イタリアのFiatも1999年以降は6価クロムフリーへ移行することを表明したため、日本国内でも今や避けることにできない問題ととらえられている。(2)

 ここに掲げた問題は、特に自動車など使用済み製品が環境中に放置されたりした場合、環境に与える影響を重視したものであって、作業環境や排水・大気汚染の問題はその中に含まれるとしても第一課題ではないと解釈される。
 特に、表面処理で対象になるクロムは金属としての0価のクロム、イオンとしての3価クロム、6価クロム及び化合物としての3価・6価のクロム等に大別できると共に、素材としてのクロム含有合金もあるので、クロムフリーとしての議論を行う場合その対象を明確にしてから行う必要があろう。
 注目されているDirective にしても、行動を表明している欧州の3自動車会社もクロメートを対象としている。
 クロメートの場合でも溶出する6価クロムイオンを対象とする場合と、クロムが含有されている被膜を対象としている場合では考え方や対応が全く異なってくる。
 JIS では有色クロメート、光沢クロメートとして分けられているが、現場ではクロメート、ユニクロと呼ぶ我が国にあって、有色の代替皮膜の呼び方も含めて、統一的な、誤解を招かない用語の用い方も併せて検討すべきであろう。
 なお、上記Directive 草案にある実施開始時期はその後、「2002年1月」から「2003年1月」に延期された。(3)

 本年になってDirective の内容に変更が加えられたという情報が寄せられた。
 内容的には目標がだいぶ後退し、6価クロムとして車一台あたり2gまで許容する案が提案されている模様である。
 環境への配慮としては、自動車の回収率を高め廃棄量を減少させることで効果を確保しようとする考えのようである。

 以下に The institute of Metal Finishing April (1999) に紹介された文を紹介する。

End of Life Vehicle Directive.

The initial draft of this European Directive sought to ban hexavalent chromium in vehicles. Efforts by the SEA and SMMT with support from the DTI have been Successful such that Brussels now recognises that some hexavalent chromium is permissible.
The latest draft allows a maximum limit of 2 grammes per vehicle.
This limit means that no special measures need to be taken to reduce the level of CrY content of metal finishing processes since calculations show the maximum level to be 1.1 grammes per vehicle.
David James, SEA's Chief Executive said "The UK together with France, brought an industry perspective whereas other states reflected only environmental pressure groups - ignoring the realities, and the extensive environmental benefits provided by the presence of hexavalent chromium".

(概訳)

廃車のDirective

 このヨーロッパの指令の最初の草案は、車で六価クロムを禁止しようとしました。DTIからの支持をもつSMMTとSEAによる努力は、現在、ブリュッセルがいくらかの六価クロムが許容されることを認めることに成功しました。
 最新の草案は、2グラム/車の最大限度を許します。
 この限度は、計算上では最大レベルは1.1g/車を示しているので、金属の表面処理プロセスの6価クロム含有量のレベルを減らす為に特別な手段を必要としないことを意味します。
 デイビッド・ジェームスSEA最高責任者は、次の様に言いました。
「フランスとUKは、他の国家が環境の圧力団体の六価クロムの存在によって提供された現実と広範な環境の利益を無視することだけを反映したのに対して、産業に前途をもたらした」。