どんな業者を選べば良いの?【1】

 昔は大工の棟梁が設計から施工まで請負い、年季を積んだ匠の技で家を建てました。しかし現代の建築では技術や設備の進歩によって複雑化していることもあって、分業して仕事をすることが一般的です。内部に設計部門を持つ建設会社もありますが、設計を行う建築士と施工を担当する施工業者が別という例が多いです。
 良い建築設計士とは「業者側の都合を押しつけない」「施主側のいいなりにならない」、つまり施主の希望を十分理解したうえで、誠実に的確なアドバイスができる設計士です。ご機嫌をとるあまり施主のいいなりになっては、住まいの専門家として失格ですし、自分の都合の良い情報だけを提示してリードするのは、どんな業種であっても禁じ手でしょう。
 ほとんどの施主にとって住宅は一生に一度の買い物ですから、施主と共に考え最適な仕事ができる良心的な業者に依頼したいものです。

▼「有名だから」では選ばない
 業者選びで安易な方法といえば「有名なので」という理由で選んでしまうことです。有名な業者は宣伝広告費に費用をかけていますから、その分設計や部材、施工にかけるべきコストを削ることになります。多くの人が有名なハウスメーカーに頼みがちですが、専門の建築士に依頼した方が、優れたデザインの質が良い家をはるかに安く作れる可能性があります。何度も購入する商品ではないのでよく考えましょう。

▼業者の経営状況を確認しましょう
 会社の経営状態などを知らないで安易に契約し、施工途中で会社が倒産というケースがまれにあります。会社案内・実績など事前にその会社の資料を取り寄せて、現在の状況を把握しておくことが大事です。また、異常に契約を取り急ぐ業者も資金繰りに忙しいと思われますので注意が必要です。

▼許可業者かどうか経歴を調べる
 建設業者なら大臣または県知事の建設業許可を得ています。また設計士は一級または二級の免許を持っています。設計事務所や建設会社の経歴や実績、資本金などは、県庁の土木部で閲覧できます。業界に詳しい立場にある役所や建材会社、銀行に知人がいたら尋ねてみるのもひとつの情報収集の方法です。

▼実績をもっている
 建設業界は新規参入が難しい環境にあります。その地域である程度の経験・実績を積まないと同業者にも相手にされません。また、気候・風土に特徴のある地域では、その環境にあった材料・技術・施工法をマスターするにも時間が必要です。長年同じ地域で仕事をしている業者は、地域の同業者に信頼され、地域の環境に適した住宅を造れる業者なので信頼できる業者といえるでしょう。

▼実際に居住者に聞いてみる
 業者を選ぶ時に「住宅会社の営業マンが熱心だったから」というのはいただけません。熱心でない業者では論外ですが、営業マンが熱心なのは仕事なのだから当たり前のことです。実際に居住して2~3年経過した人から、その業者を紹介してもらうのが最も説得力があります。住み心地やアフター管理も含めての推薦なら十分参考にできるはずです。

▼自分の計画に近い家を参考にする
 坪単価40万円の家と60万円の家では、施工方法も材質も違って当然です。予算内でできる家がどんなものかは、数多くの実例を見学してチェックしたいものです。住宅展示場に建っている家は業者が持てる能力をフルに発揮して建てたものですから仕上げが丁寧で見栄えがすることを考慮しておきましょう。やはり実際に住んでいる人から良かった点と不満な点をアドバイスしてもらえれば参考になるでしょう。

▼どんなところをチェックする?
 実際の居住者の家を見学する場合は次のことをチェックしましょう。
(1)予算通りに誠実に施工してもらえたのか。そしてアフター管理は十分か?
(2)採光や日照、通風に工夫があるか?
(3)家事での動線が使い勝手がよいか?
(4)スペースの有効利用がなされているか?
(5)施主の意向にかかわらず施工者の好みで無駄をしてないか?
(6)建具の開閉がスムーズか、接続部分に歪みや隙間がないか?
などを自分の目で確かめ、その業者が自分に合った設計・施工ができるかを確認します。
 また、長野のように冬の積雪・凍結、夏の高温といった厳しい気象条件のもとでは
(1)水道の凍結対策
(2)断熱対策・冷暖房機器への配慮
(3)屋根の形状が積雪時に耐えうるか
といったことにも注意を向けましょう。

▼極端に安価な業者は避ける
 買い物をする場合「安い」というのはうれしいことですが、安いのには安いなりの理由があります。耐震強度偽装事件のような異常な例はまったく論外ですが、部材をケチったために冷暖房が効かないとか、隙間風が入るではたまったものではありません。最初は安かったのに、後から内装は別料金とか、厨房器具は見積りに含まないなどと言い出す悪質な例もあります。一生に一度の買い物ゆえに信頼できる業者を選びたいものです。