【3】参考にしたい先人の教え
「家相」と聞くと「迷信」と思う人もいるでしょう。しかし科学的な知識が不足していた時代に先人たちが編み出した「教え」には、実は現代においても通用する「知恵」が含まれています。家相の教えは日照、通風、使い勝手など「住まいのあるべき姿」を端的に語っているのです。
もちろん材料や工法、設備機器、そして何より生活様式が昔とは異なりますから、まったく無用のものもありますが、基本的な間取りについては現代でも通用します。
▼五虚と五実
五虚とは(1)家が大きく住む人が少ない(2)外部が整っていない(3)門が大きく家が小さい(4)井戸やかまどの位置が悪い(5)土地が広すぎて無駄が多いことで、五虚の家に住むと次第に貧乏になってしまうといいます。この逆の五実の家に住むと次第に裕福になります。つまりただ広ければいいというわけではなく、狭くても無駄なく使えば財産が貯まり幸せになるというわけです。
▼鬼門
中国、特に黄河流域の人々にとって、北東の方角に住む民族から脅威を受けていたのと、シベリア方面からの強烈な季節風で家屋や田畑に被害を受けていたため、北東は「悪魔の方位」と忌み嫌われてきました。また一説には表鬼門(北東)は冬の北風が冷たく、裏鬼門(南東)は夏の西日で暑くなります。この方位は気温と体温の差が激しく、体温調節に苦労します。自然の法則に順応して少しでも生活を快適にするための教えだというわけです。
▼土地は南向き
「土地は北に高く、南に平ら」が吉といわれます。南から暖かな日射しや風が入りやすく、北からの寒気を防いでくれることから来ていると思われます。北に山がなくとも全体が南に傾斜していても吉です。一方で周囲が見下ろせる高台は吉と思われがちですが、そういう土地に住んでいると自然と気位まで高くなり、友人まで見下ろすようになって、しまいには孤立無縁になってしまうといいます。
また四方が高く窪んだ土地はフェーン現象が起きやすく火事の危険や水害の恐れがあります。ただし大きな盆地にはそこまでの心配が無く、幸せが集まる場所といわれます。
▼道と家は平行に
家に面した道は家屋正面と平行になっているのが吉路といわれます。道幅は3メートル以上がよいといわれますが、広すぎるのも困りものです。もし住宅の前に4車線道路があっても、車両はスピードを出すので危険だしうるさし、歩道があってもお向かいの家へは行けないしと、やはりほどほどの広さが快適なのです。
▼家は南向きで西側和室、庭は東側に
日照や通風を考えると、やはり家は南向きが一番良い方位です。どうしても南側をふさがなくてはならない場合は、東西の開口部を大きくとったり、南側に天窓を設けるなど工夫をするとよいでしょう。
さらに東側に庭を設けると朝日が差し込みますし、西側には和室を配置し、西日をさえぎる形で真西を壁にして南に開口部を設けるのが最上の配置とされます。
▼台所は東に
東や南東に台所を配置するのは日中温度が上がりすぎず食べ物が腐りにくいことが利点で、冷蔵庫が無かった時代の知恵です。からといって完全に北向きでは、冬場の寒い早朝に家事を行うのには不向きです。その点でも朝日のあたる東向きの場所なら快適です。
▼玄関を門とずらす
門から玄関までのアプローチがストレートだと道からも中が丸見え状態になってしまいます。アプローチには変化をつけてプライバシーが守れます。
▼トイレは中央・北・北東・南西は避ける
昔の便所は汲み取り式で、悪臭と虫の発生、汲み取り処理の問題がありましたから中央に配置するなど論外だったでしょう。また南西では日中暑くなって衛生上問題があり、逆に北側であまりに寒いというのも辛いわけです。現代は水洗になっていますから、構造上場所はどこでも配置できますが、中央配置では動線上問題があります。設備施工や管理上の利点から台所や浴室など水回りを集中させるのが一般的ですが、寝室や子供部屋に隣接させることも日常の便利さから考慮したいポイントです。
▼寝室の位置の吉凶
『門口の筋に寝処を構う事忌むべし。寝所の辺にかまどを作れば小児に祟るべし。寝所に箪笥,長持、櫃の類を置くことを好まず』といいます。つまり玄関を門とずらすのと同様に入口から一直線の位置にある寝室は落ち着かないということです。台所は火を使いますから、台所と子供部屋が近接しているのは危険があります。また寝室に家具を置くと狭苦しくなり、寝ている間に家具が倒れて下敷きになる危険もあるでしょう。現代では寝室に隣接して収納室を作ったり、壁を収納壁にするような解決も可能ですね。
▼増築は凶?
家相では安易な増築を凶としています。増築する方位や部屋の配置も熟慮したうえで行う必要がありそうです。また家相では一般に階層を重ねることを屋上建築としてあまりよいこととはしていません。しかし、必要があるから増築するわけですから、あくまで住む人の暮らしと、周囲の条件に合わせて計画することが大切です。