Q-37 委任状に関する質疑
  Q-37-①  総会における白紙委任状の取扱いについて

  Q.今年もまた、総会のシーズンがやってきましたが、総会における白紙委
   任状について、次の点をご教示下さい。
   (1)白紙委任状は、総会に出席しない組合員が理事長又は総会の議長に
     議決権の行使を一任したものとして、数に制限なく、これを理事長又
     は議長の議決権行使の数に加えることができるか。
    (2)理事長又は議長の代理権行使の数が制限されるとすれば、理事長又
     は議長は、他の理事又は他の組合員に委任状行使を依頼することがで
     きるか。
   (3)白紙委任状は、そのままでは無効であり、必ず代理人の氏名が記入
     されていることが必要であるならば、いつまでに代理人を決め、有効
     なものにしておくべきか。
   (4)代理人の代理できる数以上に委任状がある場合は、どう処理すれば
     よいか。

 A.白紙委任状と呼ばれるものは、組合が組合員に対して総会招集の通知と
  ともに議決権代理行使の委任状用紙を送付し、その代理権の授与を勧誘す
  るものであり、通常は、総会に出席しない組合員が議決権を行使すべき代
  理人を特定しないで白紙にして組合に送るものです。このように、白紙委
  任状は、委任状作成者(授任者)が受任者となる人を特定せずに、記載の
  一定事務の処理及びこれに要する代理権授与の申込みをし、これの取得者
  が白紙の部分に受任者として自己の名を記入することによって両者間に契
  約が成立し、受任者としての権利義務と代理権を取得するものです。
   (1)白紙委任状は、総会の開催、議案の提出、議決権の確認その他総会
    に関して全般の責任をもつ理事長に代理人の選任を一任したものであ
    って、理事長又は議長に議決権の行使を一任したものではないと解さ
    れますので、これを理事長がすべて行使することは許されません。理
    事長が組合員の代理権を行使できるのは、組合員である場合に限られ
    ますが、一般の組合員と同様に4人までに制限されます。
       なお、議長については、そもそも総会の議決に加わる権利を有しま
    せんから、権利のない者に議決権の行使を委任することはありえない
    ことですし、また、議長は総会において選任されますが、議決権数(
    総会の定足数)の確認の必要上、その選任前に代理人が指定されてい
    なければなりませんので、議長が代理人の選定をすることはありえな
    いものと解されます。
   (2)このように、白紙委任状は、中小企業等協同組合法第11条第2項
    後段及びこれに基づいて定款で規定した代理人となりうる者の範囲内
    において、理事長に代理権を行使すべき者の選定を一任したものと解
    されますから、理事長が組合員の中から受任者を選定し、その組合員
    に代理権の行使を委任することは問題ありません。
         ただし、他の理事に委任しようとする場合は、その理事が組合員で
    あることを要します。
   (3)白紙委任状は、白紙の箇所が補完されて初めて委任状としての効力
    を発するものですから、総会において行使される際には、代理権を行
    使する者の氏名が記入されていなければなりません。この代理人の決
    定は、議決権行使の時(厳密に言えば、議決権数(総会の定足数)の
    確認時)までになされれば有効であると考えます。
   (4)代理人の代理できる数を超える部分の委任状は無効となり、したが
    って、出席者数にも算入されないものと解されます。        (90-5)

  Q-37-②  白紙委任状について

  Q.組合又は理事長あてに提出された白紙委任状は、理事長に代理人の選定
   を一任したものと解される旨解釈されているが、
     (1) 理事長が単独で代理人の選定をするということは、自己に都合の良
     い者を選べるという弊があるが、この点どのように考えるか?
     (2) 白紙委任状は、そのままでは無効であり、必ず代理人の氏名が記さ
     れておることが必要であるとすれば、議案審議に入るまでに代理人を
     決め、有効ならしめておくことが必要と考えられるがどうか?
     (3) 代理人のない委任状は無効であるということは、出席者数にも算入
     されないものと解してよいか?

 A.白紙委任状と呼ばれるものはご承知のとおり受任者となる人を特定せず
  に、委任状作成者が、記載の一定事務の処理及びそれに要する代理権授与
  の申込をなし、これの取得者が白紙の部分に受任者として自己の名を記入
  することによって両者間に契約が成立し、受任者としての権利義務と代理
  権を取得するもので、この時に委任状としての効力を発するものである。
  白紙委任状には種々の種類があるが、通常は、総会に出席しない組合員が
  議決権を行使すべき代理人を白紙にして組合に送るものである。
     すなわち、組合が組合員に対して総会招集の通知と共に議決権及び選挙
  権代理行使の委任状用紙を送付し、その代理権の授与を勧誘するものであ
  って、これは一種の慣行として一般会社等でも行われているものである。
     (1) したがって、理事長が単独で自己の有利な代理人を選定することは
    有り得るわけであるが、代理権自体の行使についても中協法第11条
    第2項~第5項に制限規定が設けられているのでこの点からも若干の
    弊害は防ぎ得るものである。
     (2) 前述の説明によっておわかりのように、白紙の箇所が補充されて初
    めて委任状としての効力を発するものであるから、当然代理権を行使
    するものの氏名が記入されていなければならない。委任状作成者(授
    任者)の意思を尊重する意味からも議案審議までに完全なる委任状と
    なし、議決権を行使させることが望ましい。勿論、代理人の決定は議
    決権行使の時までになされれば有効である。
     (3) 代理人の記入のない委任状は、未だ委任状としての効力を発してい
    ないので(無効とは異なる)議決権のないのは勿論、中協法第11条
    第3項の反対解釈からしても出席者数には算入されないものと解して
    よい。                                           (164-196)

  Q-37-③ 白紙委任状の行使について

  Q1.白紙委任状行使の権限は議長にあるか、理事長にあるか?
  Q2.白紙委任状の行使を特定の組合員に分割して依頼することの可否。

 A1.総会の議長は、議決権を有せず、議事の進行、採決を行うのみである。
   一方理事長は、総会の開催、議案の提出、議決権の確認その他総会に関
   する全般的責任をもつ。
      したがって、白紙委任状行使の権限は、議長にはなく理事長にある。
 A2.白紙委任状行使の権限は理事長にあるが、1代理人の代理し得る議決
   権の数には限度があるので、特定の組合員に分割してその行使を依頼す
   ることは必要であり適法と考える。                     (167-198)

  Q-37-④  委任状による代理制限について

  Q1.中小企業等協同組合における総会の場合の委任状は、出席者1人につ
    き2人迄の委任を受けることができるとし、それ以上の委任を受けるこ
    とができないという規定ができるのか?
  Q2.総会に出席しない組合員が被委任者の氏名を記入せず、組合又は、理
    事長宛の提出の委任状は数に制限なく理事長、又は総会の議長に一任さ
    れたものとして、議決権行使の数に加えることができるか?
  Q3.委任状もQ1同様2人迄しか代理出来ないとすれば他の委任状を如何
    に処理すべきか?
  Q4.Q3の場合、理事長又は議長は、他の理事又は他の組合員に委任権行
    使を依頼することができるか?
  Q5.以上の外委任状に対する効力上如何なる制限があるか?

 A.1については、中協法第11条第4項で定められているように代理人が
  代理し得る組合員の数は5人までとなっているが、同条第2項では、「定
  款の定めるところにより」代理人に議決権又は選挙権を行使させるべき旨
  が定められているので、右に述べた5人までの制限をさらに定款で縮小す
  ることができるものと解される。したがって、貴組合の定款で代理人が代
  理し得る組合員の数を2人までとする旨を規定すれば、これに従わなけれ
  ばならない。
   2については、代理人の氏名が記載されていない、いわゆる白紙委任状
  は理事長に代理人の選定を依頼したものであって理事長又は議長に議決権
  の行使を一任したものではないと解されるから、設問のごとく理事長又は
  議長がこれを適当に議決権の数に算入することは許されないし、またこれ
  が総会において行使される際には、代理人の氏名が記入されていなければ
  代理権を証する書面としての効力がないことになる。
   3については、1に述べた数を超える部分の委任状は無効となる。
   4については、2に述べた白紙委任状の場合、これを中協法第11条第
  2項後段及びこれに基づいて定款で規定した代理人となり得る者の範囲内
  において理事長に代理権を行使すべき者の選定を一任したものと解してよ
  い。
   したがって、他の組合員に委任する場合は問題ないが、他の理事に委任
  しようとする場合は、その理事が組合員でなければならないことになる。
  なお、議長は総会において選任される者であるから、その選任前に代理人
  が指定されていなければならないので、議長が代理人の選定をすることは
  あり得ないものと解する。
   5については、とくにない。                           (165-197)