Q-28 役員の兼職、顧問・相談役等に関する質疑
  Q-28-①  理事の兼職禁止規定の解釈について

  Q.中協法第37条第2項の理事の兼職禁止規定は、非常に理解し難い複雑
   な規定であるので例をあげて説明願いたい。

 A.本規定の趣旨から説明すると、理事は理事会を構成して組合の業務の執
  行を決定し、あるいは代表理事となって決定された業務を現実に執行しな
  ければならない等組合運営の首脳部たる地位にあるので、組合事業の経営、
  その他の組合運営に関し機密に属する事項等も詳細に知っているわけであ
  るが、理事自体が組合事業または組合員資格事業と実質的に競争関係にあ
  る事業を行っているとき(法人であるときは、その役員たる地位にあると
  き)は、組合の業務運営を不利におとしいれることになり、組合の正常な
  発展を妨げたり、あるいは組合員に不利益をもたらすおそれがあるので、
  これを防止するために一定の競合関係にたつ者は、組合の理事となること
  を禁止したのである。
     例をあげて第37条第2項の規定を説明すれば、
  (1) いま織物製造業者を組合員資格とする組合があり、その組合の共同施
   設として染色整理業及び原糸の共同購入事業を行っている場合を仮定す
   る。
      この組合の原糸の共同購入事業を利用するために組合員となっている
   が、織物製造業を営みながら染色整理事業をも兼業して行ったとすれば、
   その者は組合員ではあるけれど理事への就任が禁止される。すなわち、
   組合の行う染色整理事業と例示した組合員の行う染色整理事業とは完全
   に競合するからである。
       なお、上記組合員が、組合員となっていない員外者である場合でも、
   同様の趣旨から員外理事として就任することを禁止される。
   (2) もし、この組合が織物製造業者と染色整理業者の両方を組合員資格と
   して定款に定めていたとすれば、組合が染色整理の共同事業を行ってい
   たとしても、例示した組合員の行う染色整理業は「組合員の資格として
   定款に定められる事業以外のもの」でなくなるので理事への就任が可能
   となる。
       なお、この場合に例示した者が員外者であるときは、第2号によって
   判断される。以上が第1号の説明であるが、第2号は員外理事のみに適
   用される規定である。
       理事になろうとする者が員外者である場合、(1) の場合であれば、織
   物製造業を行う者は、大企業である限り、この組合の員外理事に就任す
   ることが禁止される。
       (2) の場合であれば織物製造業を行う者も染色整理業を行う者も、大
   企業である限りこの組合の員外理事に就任することは禁止される。中小
   企業者であれば就任が禁止されないのは、たとえ員外者であっても組合
   員と同様の状態にあるものと考えてよいからである。なお「実質的に競
   争関係にある事業」とは、製造業と販売業あるいは卸売業と小売業のよ
   うに縦の系列関係をいうのではなく、取扱商品が代替関係にある場合、
   たとえば綿スフ織物と絹人絹織物あるいは布レインコートとビニールレ
   インコート等を指すものと解している。                 (115-132)

  Q-28-②  役員の使用人兼職について

  Q.監事は理事又は使用人と兼ねてはならない事は明示されているが組合が
   使用する職員は理事となる事が出来るか否か、若し差支えないとすれば、
   理事を職員として採用しても構わない事と解釈されるが職員の理事兼職に
   ついて明示願いたい。
     職員で選任された理事が一職員として引続き同一勤務に服する事が出来
   たとすれば身分は常勤理事であるが、一職員として取扱いをするものであ
   るか?

 A.中協法第37条第1項において禁止しているのは、次の場合、即ち、①
  理事と監事、②監事と使用人(職員を含む)である。監事は会計監査を通
  じて理事を監督する立場にあるもので、当然に両者の兼職は禁止される。
    本条の結果、理事と使用人の兼職は差支えないわけで、専ら専務に当た
  る理事が何々部長というような資格で事務担当者となる事は、従来もよく
  行われているところであり、これによって弊害のおこる事もないので禁止
  されない。
   選任された理事が、引き続き職員としての事務に勤務する場合、その職
  務は職員としての事務を担当する事となるが、通常の場合常勤理事である。
                                                        (114-131)

  Q-28-③  理事長の使用人の兼職

  Q.私どもの組合では、総会から1ヶ月後、事務局長が急死しました。小さ
   な組合なので後任の適任者も見つからず、理事長が事務局長の職務を兼務
   して、とりあえず今年度はこの体制で組合の運営を乗り切っていこうと思
   います。決して財政上余裕のある組合ではありませんが、事務局長に払う
   べく予算に計上してあった給与について理事長に支給して差し支えありま
   せんか。

 A.役員と使用人の兼職については中小企業等協同組合法第37条第1項で
  は理事と監事、監事と使用人の兼職のみ禁じています。理事については別
  段の定めがないので兼務は差し支えなく、実際協同組合では、専務理事ま
  たは常務理事が事務局長を兼務している事例は多いと思われます。しかし、
  ご質問のような理事長が兼務することの是非については、理事長は業務執
  行の権限を有しているわけですから、たとえ末端の業務にしろ理事長とし
  ての業務執行に当然包含されると考えるべきで、使用人である事務局長を
  兼務するということ自体無意味と思われます。
   更に判例に「総会の議決により代表理事の報酬限度額を定めた場合には、
  代表理事が当該組合の事務分掌上は使用人に相当すべき事務に従事したと
  きであっても、特段の事情のない限り、組合が総会で議決した限度額を超
  えて代表理事に報酬を支払うことは、その支払の名目を問わず、許されな
  い。」(昭和55年最高裁)とありますので、既に総会も終わっています
  から故事務局長分の給与の支給もできないと考えます。
   なお参考ですが使用人を兼務する役員の使用人として受ける給与につい
  て税法上は肩書・代表権のない理事が職制上使用人としての地位を有して
  いる場合以外は損金への算入を認めていません(法人税法第35条)。ま
  た総会の場においてもこのような給与分については役員報酬額に含まれな
  い旨明示して決議しておくのがよいでしょう。                (88-9-1)


  Q-28-④ 理事の参事兼職について

  Q.理事は参事を兼職することができるか?

 A.監事は使用人と兼ねてはならないことになっているが(中協法第37条)
  理事については別段の定めがないので兼務は差支えない。ただし実際問題
  としては理事が参事を兼ねる必要性は乏しく、その理事を代表理事とする
  か、専務又は常務理事とすれば足りると考える。           (114-130)

  Q-28-⑤  顧問・相談役・参与について

  Q.私どもの組合では、今般の通常総会で、設立以来長年当組合の発展に貢
   献してきた代表理事が交替し理事としての職務も退くこととなりました。
    理事会では、その功績をたたえるとともに、組合の役員ではないにして
   も、組合が必要とする時は、何時でも助言等を求めることのできる地位に
   置きたいと考えております。
     中小企業等協同組合法では「顧問」を置くことができることとなってい
   ますが、前理事長を顧問に委嘱することは可能でしょうか。また、相談役
   ・参与なども設けたいのですがいかがでしょうか。

 A.長年、組合の業務執行に携わっていた者が、組合の役員たる地位をはず
  れたからといって、その後、組合がその豊富な経験、知識等を活かした助
  言等を求めることができないということはありませんが、いつでも遠慮な
  く助言等を求めるためには、何らかの役職に委嘱しておくことも得策であ
  ると考えます。
   中小企業等協同組合法第43条では、「組合は、理事会の決議により、
  学識経験のある者を顧問とし、常時組合の重要事項に関し助言を求めるこ
  とができる。但し、顧問は、組合を代表することはできない。」(89-5-2)