Q-17 脱退予告に係わる問題
  Q-17-①  脱退を申し出た組合員の取扱等について(その1)

  Q.自由脱退者の取扱について
     中協法第18条により組合を脱退することができるが、その予告期限、
   脱退の時期等は中協法により90日前までに予告し、事業年度の終了日に
   脱退できるようになっている。
     したがって、それまでは組合員の地位を失ってないから、その組合員も
   他の組合員と同様に議決権の行使、経費を負担する等の権利、義務を有す
   るが、脱退者の申出の点についての効力と其の取扱い方について、
     (1) ① A組合員 5月10日に脱退の申出をした場合
      ② B組合員 7月 2日に脱退の申出をした場合
      ③ C組合員12月30日に脱退の申出をした場合
     (2) 脱退申出の組合員が其の後の組合運営についての権利義務を主張し
     行使できるか否か。 
     (3) 脱退者は其の申出日以降組合賦課金の納入をせず期末迄見送ること
     になるが、その間の取扱い方について。 
     (4) 脱退した組合員に対し期末に精算等の上、出資金の払戻をするが未
     納賦課金を其の際持分払戻する場合相殺して差支えないか。法第22
     条からして相殺することも妨げないと解されているか。

 A.設例の組合事業年度終了日が3月31日であれば、(1) の①~③は、い
  ずれも90日の予告期間を満足させているので、脱退の申告があった日の
  属する事業年度末までは、組合員たる地位を失わないから、脱退の申出を
  しない組合員となんら差別してはならない。したがって、(2) についても
  事業年度末までの期間内は組合員としての権利義務を負わなければならな
  いし、また(3) にいうごとく、賦課金を納入しないならば組合員としての
  義務を怠ることになり、除名、過怠金の徴収等の制裁も定款の定めにした
  がって可能となるわけである。(4) については、脱退した組合員が組合に
  対して未納賦課金その他の債務を負っている場合は、組合は中協法第22
  条の規定による持分の払戻停止によって対抗でき、あるいは民法第505
  条の規定により払い戻すべき持分とその債務 とを相殺することもできる。
                                                               (68-71)

  Q-17-②  脱退を申し出た組合員の取扱等について(その2)

  Q1.中協法第18条に、組合を脱退するには「事業年度末90日前迄に予
    告し、年度末に脱退できる」とあるが、例えばある組合で為された決議
    が一部の業態の組合員に著しく不利で営業不能となる為、仮に9月1日
    に脱退を通告しても、翌年3月末日迄は脱退できないか、又その決議に
    拘束されるか?
  Q2.組合員が転廃業して組合を脱退したが、1ヶ月又は2ヶ月後再び元の
    事業を始めた場合、前に加入していた組合の拘束を受けるか?

 A1.中協法第18条に自由脱退の予告期間及び事業年度末でなければ脱退
   できない旨を規定した趣旨は、その年度の事業計画遂行上、組合の財産
   的基礎を不安定にさせないためであるから、設例のような場合、即ち9
   月1日に脱退を予告しても翌年3月末日迄は脱退できない。従ってその
   間、除名されない限りは依然組合員であるから決議にも拘束されるし、
   組合員としての権利を有し、義務を負わなければならない。
 A2.組合員が転廃業すれば、組合員資格を失い、法定脱退することになる
   ので、組合員資格としての事業を再開しても、直ちに組合員となるわけ
   ではないから、その組合の拘束を受けることはない。        (69-72)

  Q-17-③  脱退予告をした組合員への経費の賦課と配当について

  Q.ある組合員から、事業年度の途中で文書により脱退したい旨の通知があ
   りました。その後、その組合員は組合の共同事業を利用しなくなったので
   すが、本年度の残りの経費(賦課金)の請求をしてもよいのでしょうか。
   また今年度は、かなりの利益計上が予想される状況にありますが、来年度
   の通常総会において、配当する旨の決議がなされた場合は、その組合員に
   も配当できるのでしょうか。

 A.組合員は、その年度の90日前までに予告することにより、組合を脱退
  することができますが、脱退の時期は事業年度末とされています(中小企
  業等協同組合法第18条)。このように脱退の時期を事業年度末に限定し
  たのは、脱退による持分の払戻しにより組合事業計画が遂行できなくなる
  ことを防止する等の主旨からですが、いずれにしても、廃業等による組合
  員資格の喪失(法定脱退)でない限り、事業年度末までは他の組合員と同
  様に組合員としての権利・義務を有しているわけですから、仮に共同事業
  を利用しなかったとしても、年度中に賦課される経費を免れることはでき
  ません。したがって、組合は残りの経費を請求すべきです。
   請求しても、なお組合員が経費を支払わなかった場合は、組合は脱退に
  際しての持分の払戻しを、経費の支払いが完了するまで停止することがで
  きる(中小企業等協同組合法第22条)ほか、更に民法第505条の規定
  により、払戻 すべき持分と未収の経費を相殺することも可能です。
   また、事業年度末に脱退した組合員に対する配当については、その源泉
  である剰余金は、その組合員の脱退した日が属する事業年度において生じ
  たものですので配当することは可能であると考えます。        (90-2-1)

  Q-17-④  脱退予告者の権利について

  Q1.自由脱退予告者は、持分が計算される期末までの期間は組合員であり
   、持分権があると解釈してよろしいか?
  Q2.1の組合員は、その持分を確定する決算総会(通常総会、通常5月に
   開催される)に出席して、組合員権を行使することはできないと解釈して
   よろしいか?
  Q3.脱退予告者が総代である場合、期末までの期間に総代の任期満了によ
   る改選があったときは、その組合員は総代の選挙権並びに被選挙権がある
   か否か?

 A1.組合員は、中協法第18条の規定により、脱退することができるが、
   この場合、予告を必要とし、かつ、脱退の効果は事業年度末でなければ
   発生しない。したがって、組合員は予告後も年度末に至るまでの間は依
   然として組合員たる地位を失うものではなく、それまでの間は、組合員
   としての一切の権利を有し、かつ義務を負うものである。
 A2.脱退の効果は、事業年度末において発生し、それ以後は、組合員たる
   地位を失うものであるから、組合員として事業年度終了後の総会に出席
   することはできない。
 A3.脱退届を提出している組合員が総代であっても、事業年度末に至るま
   では組合員たる地位を失うものではないから、総代の選挙権及び被選挙
   権を有する。                                         (70-73)

  Q-17-⑤  脱退予告取消しの効力について

  Q.4月~3月を事業年度とする組合において、9月末までに脱退予告の書
   面を提出した組合員が、10月1日以降翌年3月31日までの間に脱退予
   告の取消しを届け出た場合に、脱退予告の取消しができるものと解すべき
   か?

 A.脱退が組合員の自由意志によって行い得ることは、協同組合の根本的原
  則である。しかしながら、随時脱退を認めれば、組合の事業計画及び資金
  計画が常に不安定となり、組合の事業を妨げ、又は組合の債権者の利益を
  害することになるので、脱退には予告を必要としているものであるが、予
  告後、その取消しを行っても予告が上述の趣旨により必要とされているこ
  とを考えれば、とくに弊害を生ずるものとは考えられないので取消しはで
  きると解する。                                          (71-74)

  Q-17-⑥  脱退届の撤回について

  Q.私どもの組合の事業年度は3月までですが、年が改まってから脱退届の
   撤回の申し出をしてきた組合員がおります。定款では事業年度の末日の9
   0日前までに脱退の予告をする旨定めていますがどのように取り扱えばよ
   いでしょうか。

 A.中小企業等協同組合法第18条第1項では、脱退に関して事前予告制度
  を規定していますが、その趣旨は無制限に随時脱退を認めると組合はその
  都度持分の払戻しを余儀なくされることになって当該年度の事業計画の遂
  行に支障をきたし、ひいては取引の相手方の保護に欠けることにもなるな
  どの点を配慮し、脱退しうる時期を画一的に事業年度の終わりに制限し、
  かつ一定の予告期間をおくことを定めたものです。
   また一旦脱退届が出されたときは、事業年度の終わりにおいて改めて脱
  退の意思表示を要することなく当然に脱退の効力を生じる性質の意思表示
  と考えられます。そのため事業年度の終わりが到来し脱退の効力が確定的
  に生じた以後では撤回する余地はありませんが、それ以前の段階では当事
  者間に何ら権利変動が生ぜず、その撤回を許したからといって組合もしく
  は第三者に格別の不利益を及ぼすことにはならないので、撤回が信義に反
  すると認められるような特段の事情がない限り原則として撤回できるもの
  と思われます。                                         (89-3-2)