Q-12 出資1口の金額の増額・増資問題
  Q-12-① 出資1口の金額の増額手続き

  Q.私どもの組合では、組合の行う共同事業の拡大のため出資1口の金額を
   引き上げたいと思っております。
    これについての手続きについてお教え下さい。

 A.出資1口の金額は、定款の絶対的記載事項ですから、その金額を変更す
  るには、定款変更の手続きを必要とすることは言うまでもありません。
     まず第1に、各組合員が追出資義務を伴うことになる出資1口の金額の
  変更を行う場合は、組合員の責任は組合に対する出資額を限度とする(中
  小企業等協同組合法第10条第5項)ことから、組合員全員の同意がなけ
  れば有効に定款変更できないものと解されます。
     次に、出資1口の金額を増加する方法として併合による方法(以前の5
  口分を1口にまとめる方法など)があります。併合による方法の場合、組
  合員の出資口数に端数が生じないときは、総会の特別議決で出資口数の併
  合の方法による旨を定めて定款を変更することができます。しかし、出資
  口数を併合したときに出資口数に端数が生じる組合員があるときは、端数
  の出資口数をもっている組合員に追出資を強制することになりますから、
  出資1口の金額の変更についてその組合員の同意を得なければならないと
  解されます。
   以上の方法によって、出資1口の金額を変更した場合は、次いで定款変
  更について行政庁の認可を受けることが必要です。認可を受けたときから
  効力が生じます。
   また、定款変更の認可の告知があった日から、主たる事務所の所在地に
  おいては2週間以内に、従たる事務所の所在地においては3週間以内にそ
  の旨の変更登記を行って下さい。                         (88-11-1)

  Q-12-②  出資1口の金額の増資分を納入しない組合員の権利

  Q.私どもの組合では、先般の総会で全組合員出席のもと組合定款中の「出
   資1口の金額は、1万円とする。」とあるのを、「出資1口の金額は、1
   0万円とする。」と満場一致で変更の決議を致しました。また、組合定款
   上全額一時払込み制をとっているため、増額分の払込みの期日についても
   決議しました。しかし、払込みの期限後未だ増額分を納入しない組合員が
   おります。その組合員は、組合員としての権利を行使できるのでしょうか
    また、組合としてその組合員にはどのように対処すべきですか。

 A.組合定款を変更して出資1口の金額を増額するにあたって増額分の追出
  資が必要となった組合員は、増額分の出資払込み義務を負うことになりま
  す。
   また、組合定款には全額一時払込みと規定してあることから、払込み期
  間内に増額分を払い込まない組合員は、組合に対しての履行遅滞になりま
  すが、組合員たる地位を失うものではないと解されます。したがって、未
  払込みの者も組合員としての権利(議決権、選挙権、共同事業利用権及び
  その他の組合員権)を行使することは何等妨げられないと解されます。
     増資分未払込みの者に対する措置としては、組合に対する出資払込み義
  務を怠った組合員ということで除名(中小企業等協同組合法第19条第2
  項2)する方法があります。この方法は、総会における特別議決によらな
  ければなりません。しかも組合は、事前に除名しようとする者に対して除
  名理由及び総会において弁明すべき旨の通知をすることを要します。
   もうひとつの措置として、組合との契約上の自治的規制として、定款に
  定めれば過怠金、延滞金等をその組合員に課することができます。
   組合としては、既存組合員の地位を喪失しないような方法をとることが
  望ましいと考えます。                                  (88-11-2)

  Q-12-③  総会における増資決議の効力について

  Q.組合の自己資本充実を図るため、今後5年間配当金を出資金に振り当て
   るべく積立てることを総会において決議した。この決議は、以後において
   も効力を有し、本件については以後の各年度には総会の決議を要せず、以
   後5年間の配当金は自動的に組合の積立金となるものと考えてよろしいか
   ?

 A.ご照会の総会の決議は今後一定期間の組合の方針あるいは計画を議決し
  た程度にとどまると思われ、その範囲において全組合員を拘束するものと
  考えられる。しかし、実際の出資金充当のための積立てに当っては各組合
  員は必ずしもこれに拘束されるというものではない。
     すなわち、組合員の責任は、その出資額を限度とするものであり(中協
  法第10条第4項)、増資の引受けについても、たとえ総会の決議をもっ
  てしても組合員を強制することはできないからである。
     したがって、以後の処置としては、各年度に組合員の承諾を得る必要は
  ないが、当初において各組合員別に承諾を得ることが必要である。
                                                           (48-51)