Q-1 組合員資格(中小企業の定義と独禁法関係)
 Q-1-①  小規模事業者の判断について

  Q.今般、設立途上の事業協同組合の設立同意書の中に、中協法第7条に規
   定する小規模事業者の範囲を超えた事業者が含まれているが、どのように
   対処したらよいか?

 A.中協法に基づく事業協同組合の組合員となることのできる者は、小規模
  の事業者であるが、その規模の基準は、中協法第7条に規定されているよ
  うに、資本の額又は出資の総額が1億円(小売業又はサービス業を主たる
  事業とする事業者については1,000万円、卸売業を主たる事業とする
  事業者については3,000万円)を超えない法人たる事業者、又は常時
  使用する従業員の数が300人(小売業又はサービス業を主たる事業とす
  る事業者については50人、卸売業を主たる事業とする事業者については
  100人)を超えない事業者となっている。しかしながら、この基準を超
  える事業者であっても、実質的に小規模事業者であると認められれば組合
  員になれることになっている。したがって、設立途上の設立同意者につい
  ては、その事業者の従業員数、資本の額又は出資の総額並びに資本力及び
  市場支配力等諸般の実情を勘案して発起人が小規模事 業者と判断した場
  合には、いったん組合員たる地位を与え、組合成立後に公正取引委員会に
  届け出ることとなる。この場合に公正取引委員会から実質的に小規模事業
  者でないと最終的に認定されるまでは、その組合員又は組合に対して特別
  の措置がとられることはないのである。                       (3-3)

  Q-1-②  支店の組合員資格について

  Q.小売業を営む者で組合の地区内に支店があって、当該支店は従業員50
   人以下である。地区外の本店は従業員50人以上で、しかも資本金が1,
   000万円を超えている場合、この支店は組合員資格に疑義があるか?疑
   義があるとすれば公正取引委員会に届け出る必要があるか?また、その場
   合の手続方法は?

 A.組合員資格に関する使用従業員数の数は、本支店合わせたものとされて
  いるから、ご質問の場合明らかに50人を超え、しかも資本金が1,00
  0万円を超えているので、公取委への届出が必要である。
   ただし、組合員たる資格は従業員数、資本の額又は出資の総額が絶対的
  要件でなくその事業者の資本力、市場支配力、組合の内容等諸般の実情を
  勘案して判断すべきである。なお。当面その判定は組合自体が行うことに
  なる。
    なお、公取委への届出の様式及び内容については、「中小企業等協同組
  合法第7条第3項の規定による届出に関する規則」(昭和39年2月7日
  公正取引委員会規則第1号)に具体的に定められている。        (4-4)

  Q-1-③  公正取引委員会への届出について

  Q.中協法第7条第1項第1号に規定する中小企業者の規模を超え、数カ所
   に支店をもつ業者が、各支店所在地に存在する組合に加入する場合、公正
   取引委員会への届出は、本店所在地の組合のみでよいか?

 A.中協法第7条第3項の届出義務は、組合に対して課せられたものであっ
  て、組合員が他の組合に重複加入している場合でもそれぞれ加入している
    組合に届出義務がある。                                    (4-5)

  Q-1-④  組合加入資格と独占禁止法の関係について

  Q.私どもの組合は、一般機械器具製造業者で組織する事業協同組合ですが
   最近、当組合の地区内に本社を置く資本金1億5千万円、従業員350人
   の中堅機械メーカーA社が、当組合に加入の申し込みを行ってきました。
   当組合としては、組織強化のためA社を受け入れたいのですが、このよう
   に法律上の中小企業者の範囲を超える事業者であっても、組合に加入でき
   るのでしょうか。

 A.この問題は、(1) 事業協同組合の組合員資格と、(2) 独禁法との関係、
  の2つの問題に分けて考える必要があります。
   (1) まず、事業協同組合(以下、「組合」という。)の組合員資格は、中
   小企業等協同組合法(以下、「組合法」という。)第8条で「小規模の
   事業者」であることが定められており、いわゆる大企業は組合には加入
   できないことになっています。これは、組合が中小企業者のための組織
   制度として設けられているからにほかなりません。
    この小規模事業者の基準は、組合法第7条第1項第1号に定められて
   おり、製造業の場合は、資本金が1億円以下であるか、常時使用する従
   業員数が300人以下であることがその要件となっています。したがっ
   て、A社の場合はこの基準を超える事業者ということになりますが、た
   だ、小規模事業者であるか否かの判断は、この基準のみによって行われ
   るものではなく、これを超える事業者であっても、その事業者の競争力、
   市場支配力、地域経済の実情等、諸般の実態を検討したうえで実質的に
   みて小規模の事業者と認められる場合は組合員となる資格を有すること
   になります。そして、この実質的小規模事業者であるか否かの判断は、
   加入の申し込みがあった際に組合自身が行うことになります。
  (2) 貴組合の判断によってA社が実質的小規模事業者と認定され、組合へ
   の加入が認められたとしますと、次に独占禁止法(以下、「独禁法」と
   いう。)との関係がでてきます。
      まず組合は、小規模事業者の基準を超える事業者が組合に加入してい
   る場合には、その事実が発生した日から30日以内に公正取引委員会に
   届け出ることが義務づけられています。
     独禁法は第24条によって、事業協同組合等については小規模事業者
   の団体として、同法を適用しないこととしています。つまり、組合はそ
   の小規模事業者団体性をもって独禁法の適用除外団体とされているとこ
   ろから、小規模事業者の基準を超える事業者が組合に加入しているとき
   は、公正取引委員会はその事業者が実質的にみて小規模事業者でないと
   認めた場合には、独禁法の適用除外が解除され、その組合に同法が適用
   されることになります。先に述べた公正取引委員会への届出は、同委員
   会がこの認定を行うについてその事実を知るために義務づけられている
   ものです。ただし、公正取引委員会のこの認定は、届出がなされた時に
   行われるのではなく、組合の共同行為に問題が生じたときに行われてい
   るようです。なお、認定により独禁法の適用を受けても組合は存続しま
   す。
    また、公正取引委員会は、この認定権の行使のほかに、組合法第10
   7条により、常時使用する従業員数が100人を超える事業者が実質的
   に小規模事業者でないと認めるときは、その者を組合から脱退させるこ
   とができることになっています(排除権)。
      この認定権と排除権の関係については、公正取引委員会は、認定権を
   行使して組合そのものに独禁法を適用するか、あるいはこの排除権を行
   使して大企業を排除するか、いずれか一方の措置を選択することができ
   るものと解されています。                               (89-1)