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月刊中小企業レポート
更新日:2009/3/20

イノベーション

世界同時不況の時代を勝ち残る

 今回の世界同時不況の影響はすさまじく、長野県の中小企業にも大打撃を与えています。「売上が去年の半分になってしまった」 「取引先からもう仕事が見込めない」等の声をたくさん聞いております。また、お金を貸す金融機関も景気連動型で、中小企業を支援する体力をたくさんもっている所があると良いのですが、中小企業には厳しいのが現実です。売上が減り、借り入れもしにくくなり経営者にとって何重苦もの悪い経営環境はしばらく続きそうです。
 しかし、こんな時代に儲かっている中小企業があるのです。1万人以上の雇用調整を見込む自動車製造業に属していても、儲かっている下請け企業が長野県にも存在していてびっくりしました。自動車のステアリングが油圧から電動へ移行しています。この技術革新により、今までの油圧ではパワーステアリングをつける事が出来なかった軽自動車などに販路が広がり、油圧に関わっていた企業は大変ですが、電動パワーステアリングに関わっている中小企業はフル稼働の状況です。
 カメラにしても、デジカメ自体の生産は頭打ちですが、自分の子供の写真を運動会などで大写ししたいという願望をかなえる望遠交換レンズの需要は伸び続けており、関わっている中小企業は同じくフル稼働の状況です。
 「今みたいに不況のほうがチャンスなんだ」と逆説的に話をしてくれた社長様によると「こういう不況のときのほうが、メーカーは少しでも利益を出すために、普段は変えない取引先を見直すので、提案能力があればどんどん仕事はとれるのだ」そうです。
 考えてみれば、家計でもナショナルブランドからプライベートブランドへの購入切り替えをしたり、麦が高くなったのなら代用で米の量を増やしたり、車が維持費などの負担で大変だからと自転車を購入するといった形で消費の見直しをします。これによってピンチとなる企業もあれば、切り替え先の消費に関わって業績を伸ばす企業が出てきます。
 こんな時代だからこそ、情報を早くつかみ、自分の率いる組織の居場所を確保するマーケティングや経営戦略の思考が大切なのではないでしょうか。技術革新などで産業自体の構造が大きく変わるとき、そして不況により多くの経営者が萎縮して新規の行動を控えるときは、現場情報をつかみ自社の優位性を高めていく投資行動をするチャンスです。新しい道路が出来ると通行客の流れが大きく変わるように産業構造や技術の変化は大きなピンチやチャンスになります。戦略とは事業立地を考える事だという経営学者もいます。ただし、その情報はけっして本やインターネットにあるのではなく、営業現場や製造現場にあり、その動きをタイムリーに正確につかんでいる経営者が利益をだしていると言えると思います。
 武田信玄の「風林火山」で有名な孫子の兵法に「兵の形は実を避けて虚を撃つ」という言葉があります。力の弱いモノが強い相手と競合する分野に出ていっても厳しいが諦めずに努力を継続していると、虚(手薄な部分)が見つかるので、そこを突破口にして戦いなさいという教えです。「日々の資金繰りでとてもそんな余裕が無いよ」と叱られそうですが、中小企業はこんなときこそ経営を見直すチャンスだととらえ「ランチェスターの法則」や「ニッチ狙い」に通じるこれらの考え方を使い3年後10年後の自分の組織を食わせてくれる経営の種をつかんでほしいと感じています。

大不況を乗り切る切り札
~借入の緊急保証制度のご紹介~

「100年に一度のデフレ大不況」と騒がれております。既にその不況のあおりを感じている事業主様もいらっしゃるのではないでしょうか?故松下幸之助は「ピンチから這い上がるチャンスはピンチになる前に考えていたことからは生まれない」という言葉を残しています。不況の中にいるからこそ工夫をし、乗り越えようとする考えが生まれてくるのではないでしょうか?
 そこで今回、不況だからこそ使える制度をご紹介させていただきます。これは端的にいいますと、売上が落ちている→セーフティネットが使える!ということです。また、運転資金が不足してきた事業主様、月々の借入返済が厳しいと嘆いている事業主様にも、これからご紹介をさせていただく制度資金はお得な情報といえます。別枠で借入ができる制度資金を利用すれば、一時的にキャッシュを潤すことができます。また、現在の借入金の入れ替えをすれば、月々の返済額が調整でき、負担が軽くなるなどのメリットも考えられます。これらに該当する事業主様も、是非一読下さい。
 大不況を乗り切るための施策として、以下の3点があります。
  あらゆる無駄をなくす(時間・経費の両面で)
  現金・預金を増やす行動をとる(キャッシュフロー管理、未収の回収、在庫の処分…)
  借入・資金繰り計画を策定する(有利なセーフティネットを利用)
 につきましては、経営者の皆様は日頃より工夫と苦心を重ねていることと存じ上げます。今回は③借入計画を策定すること、特に「有利なセーフティネットを利用」につきまして、基礎的な情報から、今現在発表されている制度資金のご紹介をさせていただきます。

セーフティネットは何がいいの?

特別経営安定対策の制度資金が利用できるようになります。
 具体的内容は
 ○低金利(年2.0%)。
 ○別途信用保証料がかかりますが、県・市町村の補助により0.44%以内です。
 ○返済の据え置きが1年可能です。
 ○保証人が原則不要です。(法人の場合は代表者のみ必要)
 などがあり、セーフティネットを活用すればこれらのメリットを享受できることになります。

誰でも利用できるの?

 以下の二つの条件を満たし、市町村の認定を受けることが必要になります。
  指定業種に属する事業を行っている中小企業者。
  ※指定業種・・・不況にたたされている業種に限定されています。
   例えば製造業・小売業等、ただし医療業については除かれています。
  以下a~cのいずれかの要件を満たす場合
 a:最近3か月間の平均売上高等が前年同期比マイナス3%以上。
 b:製品等原価のうち20%を占める原油等の仕入価格が、20%以上上昇しているにもかかわらず製品等価格に転嫁できていない。
 c:最近3か月間の売上総利益率又は平均営業利益率が前年同期比マイナス3%以上。

融資の実行は実際にはどのような手続ですすむの?

申込から融資実行までは2週間ほどかかる見込みです。その内容は
 金融機関に申込(特別安定経営対策を受けたい旨、試算表・資金繰り表を持参すると話が早く進みます)→その後金融機関の方で保証協会に事前相談などします。(所要日数1~3日)
 必要書類(申込書・試算表・納税証明書・経営向上計画書等)を金融機関へ提出→この中にセーフティネットの申込書が入っていますので、金融機関の方で市町村に認定をとるなどの連絡作業をします。(所要日数8日)
 融資が実行される。(所要日数3日)
 指定業種については、本年2月にあらたに追加(70業種)がされ、その範囲は760業種まで拡大しています。

今後さらなる低金利で借りられる、という情報は事業主様にとって励みの糧となるのではないでしょうか?
 無駄をなくし、現金を保全することが現在の不況で生き残るためのキーワードですが、継続的な情報の収集をするなどして、制度資金などの有利な制度を余すことなく活用していくことも大切です。資金力を蓄え、好況に転じた際にはどこよりも早く積極的に設備投資ができる健康な企業体を今から築いていきましょう。
 制度資金の情報については、長野県のホームページ(下記アドレス)にも掲載されていますので、こちらも是非ご覧下さい。
http://www.pref.nagano.jp/syoukou/business/shikin/seido-tokubetukeiei.htm

脱リストラ!従業員と共に厳しい経営状況に立ち向かう
~中小企業緊急雇用安定助成金の活用~

世界的な不況が叫ばれる中、急激な景気の変動に伴って厳しい経営状況にある企業が増加しています。そのような中、リストラによる失業防止を目的とした「雇用調整助成金」の要件緩和や対象拡大が昨年12月に発表されました。さらに12月、中小企業向けに助成率を引き上げた「中小企業緊急雇用安定助成金」が新設されました。この助成金を活用すれば、大切なノウハウを持つ従業員を手放すことなく、一時的に従業員に休業してもらい、企業の体力が回復した後には、今まで通り戦力として働いてもらうことができます。

◆中小企業緊急雇用安定助成金とは
 景気変動に伴い、売上が減少し、従業員の雇用維持が難しい状況で、解雇を避けて、一時的に休業・教育訓練・出向によって雇用維持を図った場合にそれらに係る手当の一部を助成する助成金です。従来の雇用調整助成金が休業手当に相当する額の2/3を支給するのに対し、この中小企業向けの助成金では4/5を支給することになりました。

◆対象企業の条件:
 次の表の条件に該当すること。

 売上が最近3ヶ月間(例:10、11、12月)の月平均値がその直前3ヶ月(例:7、8、9月)又は前年同期に比べて減少していること。(前期決算の経常利益が赤字であることが必要。ただし上記の売上が5%以上減少している場合は不要。)

◆申請に必要な書類
 申請時に添付する書類は10種類以上必要ですが、申請を決めてからでも間に合う書類も多く、申請自体の検討をする際には就業規則や賃金規程があるかどうかを確認して下さい。
 特に本助成金は事前の届出(実施計画)が必要となりますので留意して下さい。

◆助成金の計算事例
 【例】従業員:10人、年間給与合計:3,000万円、年間所定労働日数:240日、従業員一人あたりを1ヶ月間で5日休業、休業手当を8割支給する場合
 上記の例では会社が負担する休業手当を助成金で賄うことができ、単純に考えれば、助成金を活用せず、通常通り給与を支払っていた場合と比べますと月38万円が手元に残る結果となります。仮に、この会社があら利率20%の小売業者だった場合には、月190万円の売上と同じ効果があるといえます。

 不安定な経済情勢では経営者の方だけでなく、従業員の皆様も自分の将来の雇用が確保されるか不安に思っています。今回の助成金を活用するには事前に休業に対する従業員の了承が必要となります。会社が存続することでお互いにとって良い未来が描けるよう、従業員の皆様と、話し合われてみてはいかがでしょうか?

※本文は、松本市巾上の税理士法人成迫会計事務所で執筆していただいたものを掲載いたしました。

県内の生き生き組合事例

「信州道楽 ~じまんの味と匠フェア~」から

 平成21年2月6日から12日にかけて長野県商工労働部主催により東京都庁第一本庁舎の「全国観光PRコーナー」において県内の地域資源等を使用し開発した加工食品や伝統工芸品等の展示・即売会が開かれ、その内容の一部を紹介する。
 このフェアには、当会会員であるあづみ野直販企業組合、企業組合おふくろ工房・松本の味、企業組合Vif穂高、矢沢加工所企業組合、いーずら大町特産館事業協同組合、内山紙協同組合、長野県織物工業組合、南木曾ろくろ工芸協同組合、秋山木工生産組合、長野県手描友禅染匠組合が参加した。
 前半の2月6日~9日においては伝統工芸品の展示販売と実演(秋山木工生産組合:島田司氏)が行われ、4日間の来場者は東京都民を含め約3,200名に上った。
 内山紙協同組合については、昨年度、飯山市の強力な支援の下、和紙照明TIKUMAを「和のある暮らしのカタチ展」(中小企業基盤整備機構主催)に出展、グランプリを受賞した。本年度は、長野県中小企業中央会が引き継ぎ、長野県地域産業活性化基金を導入しながら製品としての完成度を高め、販路開拓支援を展開した。その一環で今回の展示に至り、東京都庁の「全国観光PRコーナー」の入り口に展示した。淡く優しい和紙照明TIKUMAの光は、人の目を引くものであった。このような展示会において、高価な伝統工芸品を販売することは難しいことであるが、「長野」・「信州」というブランドが、まだまだ人を引きつけるという価値を充分感じ取ることができた。

後半の2月10日から12日は県内で生産された農産物を加工した食品の展示販売があり、3日間の来場者は約3,300名に上った。この3日間、中央会は8名の職員が出店組合と一緒になって販売の手伝いを行った。
 特に昼食時には会場に多数の方が集まり、信州の伝統的食品「おやき」に人気が集まり早々に売り切れになった。また、地元で栽培した原料を使用した「みそ」、「ジュース」、「ジャム」「酒」等も「作り手」に質問しながら品定めをして購入していった。
 今回このフェアに参加したある組合の代表者から、「作り手」として非常に良い体験をさせていただいたこと、販売をしていて消費者から「製造、生産者の顔が見えるから良い、この時代だから手作りのものが喜ばれる」との言葉をいただき良かったこと、自分たちが想像していた以上の成果があったこと、このフェアで購入した商品が気に言ったからとフェア後、組合に注文が来たとのことで、成果があったと感想が述べられた。また、次回この様な企画があれば、参加について検討しても良いとの前向きな感想もあった。このようなことから、フェアに参加した組合では様々な収穫があった。

今回の中信地区の企業組合は、地元の主婦が出資・設立した組合において、自らが生産した農産品による商品を開発し、そこで働き、消費者からの一定の支持を得いている。
 このような活動が、最近の中小企業施策の「地域資源の活用」、「農商工連携」に合致するものかどうかは疑問であるが、我々中央会としては、具体的な支援を伴に行いながら(今回はテストマーケティング)、このような企業組合の潜在能力を最大限に発揮させたいと考えている。また、今回のような組合間の連携によって、消費者のニーズに的確に対応できるような仕組みを構築したいと考えている。

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