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月刊中小企業レポート
更新日:2009/1/20

特集 新春対談
小池國光長野労働局長に聞く
雇用・労働問題から見出す中小企業活性化

平成20年の経済環境および労働環境を振り返って。
厳しさが増す雇用情勢

-本日はご多忙のなか、小池國光長野労働局長、長野県中小企業団体中央会の星沢哲也会長に2009年の新春対談をお願い致しました。趣旨をご理解いただき、ご協力を賜り誠にありがとうございます。
 さて、昨年は世界的経済不安の深刻化とともに、いわゆる「蟹工船ブーム」に象徴されるように、雇用不安が大きな問題としてクローズアップされた年でもありました。
 そこで本年の新春対談は例年と少し趣を変え、労働行政の現況や今置かれている労働環境等につきまして、星沢会長より質疑応答の形で小池局長にお話を承るという形で進めさせていただきたいと思います。
 本対談が中小企業経営者の皆さんにとって、厳しい環境にいかに対処すべきかの糸口となればと思います。どうぞよろしくお願い致します。

星沢: それではさっそく始めさせていただきたいと思います。当会におきましては、小池局長には労働問題に関し常日頃からいろいろとご指導を賜っております。あらためて御礼申し上げます。
 さて、平成20年はアメリカのサブプライムローン問題に端を発し、9月には大手証券会社リーマン・ブラザーズの経営破たんによって金融危機に見舞われました。原油をはじめとする原材料の高騰、円高など経済状況はかなり厳しい年でした。昨年を振り返り、新規求人、新規求職、有効求人倍率などはどのような状況だったのでしょうか。よろしくお願い致します。
小池: こちらこそよろしくお願い致します。長野県の新規求人は平成19年9月以降、毎月前年を下回るという状況が続いています。
 一方、新規求職ですが、20年度前半は前年とだいたい同じ水準が続いておりましたが、後半増加に転じました。詳細に見てみますと、在職中の方がハローワークを訪れるケースが増加しました。事業主側の都合による離職も増加傾向です。 
 こういった傾向を踏まえて求人倍率でみますと、平成19年2月に1.24倍という数字を記録して以降は下降局面に入り、現在まで厳しい状況が続いています。
星沢: ありがとうございました。最近の情勢はどのようになっているのでしょうか。
小池: 新春ですから、できれば明るい話題にしたいと思っているのですが……。実は長野県の昨年11月の有効求人倍率は季節調整値で0.81倍と、昨年8月に1倍を割ってから急激に低下しており、極めて厳しい局面に入っています。

深刻さを増す労働環境。
県内高校生の就職と外国人労働者の雇用

星沢: このような状況ですと当然、新規採用にも大きな影響が出ると思います。事実、景気後退によって高校生の就職に影響が出ていると新聞等で報じられ、本会でも県教委、県高校長会などから要請を受け、心配しているところですが、高校生の就職についてはどのような状況でしょうか。
小池: これにつきましては、求人の方に影響が見られます。平成21年3月卒業生対象の求人は11月末現在で前年同期に比べ12.1%減少しています。求人倍率は1.38倍で0.16ポイント下回っているという状況です。また、内定率は81.1%で、これも前年を1.5ポイント下回っており、この段階で500人を超える未内定者がおります。就職が決まらないとフリーターを選択する者も出てくる可能性があり、非常に心配をしているところです。
 このため、各ハローワークに配置している高卒就職ジョブサポーターを中心に高校との連携を深めながら未内定者の就職に向けての支援に努力を傾注していかなければと思っております。
星沢: 一方、外国人労働者の雇用状況も厳しいという新聞報道もあります。支援策や取り組みについてお話しいただければと思うのですが。
小池: 外国人労働者の雇用状況につきましては、雇用対策法が平成19年10月に改正され、雇用主に届出が義務づけられました。雇入れと離職の際にその都度、ハローワークへ届出を行っていただくこととなりました。大変お手数ですが届出の漏れのないようよろしくお願い致します。
 昨年9月に厚生労働省が公表した内容によりますと、全国で外国人労働者の数は33万8813人、雇用されている事務所数は5万7026社です。長野県では6909人が届出をされ、全国の2%を占めています。在留資格別でみますと、就労制限のない「日本人の配偶者等、永住者、永住者の配偶者等、定住者」が全体の65.8%を占めるなか、定住者が1,752人と最も多くなっています。在留資格で付け加えますと、「特定活動」というのがあります。これは技能実習生がほとんどで、1,648人となっています。こういった数字を把握し、外国人に対する雇用対策を進めています。
 外国人の支援策につきましては、平成16年度から「日系人就業支援事業」を実施していますし、20年度からはこうした方々の雇用安定を図るため、日系人就職促進ナビゲーターという担当者を設け、マンツーマン方式で再就職支援を行う「日系人就職促進プログラム」を実施しています。
 また、松本等のハローワークに通訳の方を置き、きめ細かい対応をしております。今後外国人の方も増えていくと思われますので、通訳を配置している各外国人雇用サービスコーナーの開設時間の拡充や、新たに市町村と連携し、日系人が多く居住する自治体に通訳を配した窓口を増やすなど、雇用をはじめ各種生活関係分野のあらゆる相談に対応する予定にしています。

わが国労働市場における派遣労働者の現状と課題

星沢: さて、平成16年に労働者派遣法が改正され、製造業への派遣が可能になりました。再び改正の動きが報じられていますけれども、その内容について簡単にお話しいただきたいのですが。
小池: 派遣法については改正案が今審議されているところです。改正案の中身ですが、(1)30日以内の日雇い雇用期間を原則禁止する、(2)日雇い派遣の業種を専門性の高い18業種に限定する、(3)日雇い労働者の雇用安定を図るため職業紹介先の拡充を図る、(4)派遣先は受入れ派遣労働者への適切な教育訓練を実施する、(5)派遣元にマージンなどの情報公開を義務づける、(6)派遣元に対する常用化推進の努力義務を課す、(7)グループ企業内への派遣割合を義務づける、などが盛り込まれています。
 わが国の労働市場において、派遣元、派遣先、派遣労働者、それぞれ数が増加しているため、この対策にも力を入れていきたいと考えています。
星沢: 派遣労働者を雇用する場合、特に注意しなければならないことはどのようなことでしょうか。
小池: 特にご注意いただきたいのは、労働基準法との関係です。派遣労働者の労働基準法上の責任は、基本的には雇用関係を結んでいる派遣元事業主が負うのが原則です。実際に労務を提供する場所は派遣先なので、労働時間、休憩については派遣先事業主が責任を負うことになります。とはいえ、派遣先の就業規則や時間外労働協定が派遣労働者に適用されるということではありません。派遣元の就業規則、時間外労働協定の範囲内で派遣契約において定めた始業・終業時刻、休憩時間が適用されます。時間外労働を行わせる場合も、派遣元の時間外労働協定の範囲内でなければなりません。
 そのため派遣先の管理者にも十分に知らせることが大事です。もうひとつ、労働基準法との関係では年次有給休暇で問題になることがあります。派遣先の事業の正常な運営を妨げることになるので、それを認めないといったことが起こります。その判断は派遣元の事業についてなされるものですから、派遣元は代替労働者を派遣するなどして年次有給休暇を認めることが原則です。
 さらに労働者の安全衛生の問題があります。労働災害による休業4日以上の死傷者数は全体的には減少していますが、派遣労働者についてみるとその割合が年々高くなっているのです。平成19年の全国労災死傷者数13万1,478人のうち派遣労働者は5,885人。その約7割が製造業に携わり、経験3カ月未満が約3割、年齢で見ると20~30代が6割近くを占めています。労働災害が発生した場合には、労働死傷病報告を派遣先と派遣元の両方が派遣先の管轄労働基準監督署長に報告しなければならないということになっています。これがまだ徹底されていないようです。
 また健康診断では、一般健康診断は派遣元、じん肺などの特殊健康診断は派遣先が実施しますが、派遣先は特殊健康診断の結果を派遣元に送付しなければならないことになっています。
 派遣先と派遣元が緊密な連携を取っていただくこと、それが対策の基本だと思っています。

派遣およびパート労働者の増加による
正規雇用労働者の働き方への影響

星沢: 派遣労働者やパートタイム労働者が著しく増加しているわけですが、これによって労働条件にどのような影響が出ているのでしょうか。
小池: 派遣労働者などの、非正規雇用労働者が増加する中で、正規雇用労働者の労働時間が非常に長くなっています。
 年間総実労働時間は全国平均で1,850時間前後まで減少してきています。ちなみに長野県下ではこれまでで最も短い1,860時間まで短縮されてきています。労働時間の短縮については昭和63年以後、数次にわたり閣議決定で「年間総実労働時間1,800時間」を政府目標として掲げ、時短促進法の下で労使双方の努力もあり、政府目標に近づいてきています。
 しかしその背景には、派遣労働者やパートタイム労働者といった非正規社員の増加があると考えています。パートタイム労働者を除いて年間総実労働時間を計算してみますと、全国平均で2,000時間を超えているのです。長野県でも平成19年には2,042時間となっています。その中身を見てみると、30代後半から40代の男性が非常に長時間労働を強いられている。週60時間以上働く人の割合が高くなっています。
 長時間労働に関して問題となっているのは、賃金不払い残業です。平成19年度の全国データでは、労働基準監督署の指導により1企業当たり100万円以上の割増賃金が支払われた件数は1,728企業、対象労働者数17万8,543人、金額にして272億4,261万円という結果が出ています。
 もうひとつ問題なのが、長時間労働によって健康を損なう人が増えているということです。
 脳血管疾患、虚血性心疾患といった病気の発症が増え、うつ病など、メンタル面の障害等の労災補償件数も昨年、過去最高となっています。
 その原因のひとつに長時間労働が考えられるのです。

総実労働時間の推移
 年間総実労働時間の推移を見ると、平成8年度頃から平成16年度頃にかけてパートタイム労働者比率が高まったことが原因となって、総実労働時間は減少してきた。その後もパートタイム労働者比率は2割強で推移しており、総実労働時間も1,800時間台前半で推移している。

職場の危険ゼロを目指す
「信州・危険ゼロ運動」の指導に力を入れる

星沢: 派遣労働者やパートタイム労働者の増加が正規雇用労働者の働き方にも少なからず影響をおよぼしているということですね。このような問題に対し、行政としてはどのような対策を講じておられるのか伺いたいのですが。
小池: まずは長時間労働の抑制ということですね。法定労働時間を超えて働かせる場合には、労使で時間外労働協定を締結し、労働基準監督署長に届け出なければなりませんが、その時間外労働の時間数を必要最小限にすることが大切です。協定を締結する労使がこのことを十分に認識した上で、時間外労働協定を締結するようにしていただきたいです。
 賃金不払い残業に対しては、その原因のひとつに、実際の労働時間が正確に把握されていないことがありますので、個々の労働時間を適正に把握することが必要です。自己申告制の場合には、正しく申告するよう十分に説明することが必要ですし、申告された労働時間が本当に正しいのかチェックする仕組みを作ることも大切です。平成20年11月には「労働時間適正化キャンペーン」を展開し、長時間労働の抑制や過重労働による健康障害防止対策等のための監督指導を行うとともに、経営者団体や労働組合等にも要請いたしました。星沢会長にも快くお引き受けいただき、キャンペーン周知にご協力いただきました。ありがとうございました。
 長時間労働によって健康を害することがないように、事前に対処することも大事なことで、法律では医師による面接指導制度というものがあります。これはすべての事業場が対象になります。月100時間を超える時間外労働で疲労が蓄積した方が申し出ることによって、事業主はその方に医師の面接指導を受けさせなければなりません。またその結果、医師の意見を聞いて働く方の労働時間の短縮や作業の転換など必要な措置を講じなければなりません。
 経営者の皆さんにはこうした制度を採り入れ、働く方にもよく理解していただくよう指導しています。働く方からの申し出がなくても、一定時間以上の時間外労働を行った場合、健康を守るために医師に診てもらうことが大事ですし、優秀な人材の健康を守ることは企業の利益にもつながると思います。さらに面接指導の実施にあわせて、健康障害防止のための対策を企業内の衛生委員会などを使って組織的に検討し、取り組んでいただきたいと思います。
 50人未満の小規模事業場では取り組みが難しいということもあるかもしれませんが、県内には9カ所の地域産業保健センターがあり、職場を訪問して健康管理指導や作業環境管理改善などのアドバイスを無料で行なっています。ぜひご活用ください。
 労働災害を防止するためには、職場内に潜在する危険を事前に見つけ出し、その危険を取り除いたり、危険度を下げたりすることが大事です。これを「リスクアセスメント」といいます。
 企業に対しましては、リスクアセスメントの普及によって、職場の危険ゼロを目指す「信州・危険ゼロ運動」の指導に力を入れています。

年々増える労働相談。
個別労働紛争解決制度の利用状況

星沢: 今日のような働き方が多様化した複雑な社会状況においては、労働相談が年々増えているのではなかろうかと思います。労働局では個別労使紛争の解決にもお力をいただいていると伺っていますが、「個別労働紛争解決制度」の利用状況についてお話しいただければと思います。
小池: この制度は13年にスタート以来、徐々に利用件数が増えています。昨年4月から10月までのデータですが、総合労働相談コーナーに寄せられた相談件数は1万件を超えています。前年同時期では8,948件でしたから、1千件以上増えていることになります。
 そのうち民事上の個別労働紛争に係る相談は1,966件と、前年同期の1,515件より3割近く(29.8%)増えています。使用者側の相談も215件と昨年(104件)の倍以上(106.7%)に増加しています。
 相談の中身で一番多いのが「解雇」に関するもので461件(構成比23.3%)。次いで、「いじめ・いやがらせ」が381件(同19.3%)、「労働条件の引き下げ」が267件(同13.5%)となっています。「退職勧奨」は157件(同7.9%)で、前年同期比44.0%と増加が目立っています。
星沢: 利用が増えている要因はどんなところにあるのでしょうか。
小池: 制度が広く周知された結果だろうと思います。
 長野県では労働局と6監督署に相談コーナーがあります。制度の内容とともに、相談コーナーの場所がかなり知れ渡ってきたのではないかと思います。
 もうひとつは景気動向が非常に反映していると思います。景気の急激な悪化が職場環境に大きな影響をおよぼし、さまざまなトラブルの発生につながっているのではないでしょうか。
星沢: 使用者の相談も124件あるということですが、その内容は分かりますか? 使用者には使用者の悩みもありますので(笑)。ちょっとお聞かせいただければと思います。
小池:

「職場の規律を乱す従業員を辞めさせたいが問題はないか」や「体調を崩している正社員に休養(業)を勧めているが休まない。会社の責任を問われると困る」といったものや、最近では「仕事量が減少したため契約社員に1ヵ月前に雇止めを通告したが、労働者が認めない」という相談もきているようです。

パートタイム労働法の改正とそのポイント

星沢: 企業ではパートタイム労働者が増えています。
 その背景には、短い時間だったら働けるという働く側の都合もありますが、企業にとっては忙しい時の人手とコストの安さでパートの必要性が高まり、確実に企業の戦力になっています。
 経営側においても、パートの公正な処遇を進めていくことはこれからの重要な課題と認識していますが、対応はどう進められるのでしょうか。
小池: パートタイム労働者の数、割合とも増加し、働く人の約2割を占めています。製造業が多い長野県においては全国平均よりもパートの割合が若干低くなっています。
 パート就労については、自分から積極的にパートタイム労働を選択する人も多いですが、正社員として就業をしたいが入口が狭く、仕方なくパートで就労している方も大勢いらっしゃいますし、基幹的な仕事をする方が増えているのも事実で、そうなると正社員とパートの処遇の格差が課題になってきます。著しい格差があると労働意欲にも影響し、ひいては生産性にも響いてくると思います。不合理な格差をなくし、公正な処遇をすることが大事だと思っています。
 このような状況の中、昨年7月にパートタイム労働法が改正されました。
星沢: パートタイム労働者を雇用する場合、使用者として特に注意しなければならないことはどんなことでしょうか。
小池: まずパートタイム労働者などの非正規雇用労働者の労働条件がどのように決定されるかですが、個別に決定されるのが多いと思います。そうしますと労働契約上の条件なり、労働条件通知書で書かれた条件がその方の労働条件になりますが、曖昧な部分でトラブルが発生し、個別労働紛争といったことにつながっていると考えられることから、労使間のトラブルを防止するために注意すべき一定の基準を示す、「労働契約法」が平成20年3月に施行されています。労働者と使用者が対等な立場で合意することが原則であり、労働契約の内容を書面で確認することや、労働者がその内容を正確に理解するよう使用者が説明に努めることなどを定めています。
 要するに、パートタイム労働者を雇用する場合、まず労働条件を明確にすることが基本だということです。基幹的な仕事をする人が増えるようになりますと、意欲や能力の向上のためにもそれがぜひ必要になってくると思います。

フリーターから正社員採用をめざして。
ジョブ・カード制度の取り組み

星沢: 労働力として我々中小企業が考えなければならないことに、フリーターの問題があります。これについてはさまざま対策が講じられていると思いますが、その対策や、企業が採用した時のメリットもご紹介いただければと思います。
小池: フリーター対策としては、厚生労働省として以前の25万人よりも10万人増やした「フリーター35万人常用雇用化プラン」を推進しています。
 これは就職氷河期に正社員になれなかった年長フリーター、つまり平成5年から16年にかけての新卒就職で苦戦を強いられた方たちを重点対象として、ハローワークに専門相談員「フリーター常用就職サポーター」を配置し、単に就職先の紹介にとどまらず、職業選択、応募方法等の職業指導をきめ細かく実施しています。長野局では20年度の目標就職件数を3,500件と定め、取り組んでおりますが、中央会様にも「年長フリーター等応募拡大事業」を委託し、会員の皆様への周知、啓発等にご尽力いただいておりますので、よろしくお願いいたします。
星沢: フリーターから正社員採用への取り組みとして、ジョブ・カード制度が創設されたとお聞きしますが、それはどういった制度なのでしょうか。
小池: ジョブ・カード制度は、フリーターなど若年者の支援に加え、子育て終了後の女性や母子家庭の母といった方々も正社員を希望するという状況があり、その支援にも焦点を当てています。
 制度の仕組みですが、中心はキャリアコンサルティングです。キャリアについて当事者の認識を明確にし、当事者の力をつけていくということです。カードといってもクレジットカードのような1枚のカードではなく、職務経歴書、学歴、訓練の経歴、資格取得状況等を詳細に記したファイル全体を「ジョブ・カード」と呼んでいます。
 この制度を利用したい方は、まずハローワーク等に行っていただきます。そこでキャリアコンサルタントに相談し、ジョブ・カードの交付を受けて記入します。それが完成すると、企業での実習と教育訓練機関での座学を組み合わせた訓練(有期実習型訓練)に入っていただきます。
 そこでの評価を正確につかみ、企業への就職に結びつけていくという仕組みになっています。
 ポイントはジョブ・カードへの正確な記入と有期実習型訓練です。この制度はたくさんの有期実習型訓練を実施いただける企業の協力が不可欠ですので、ぜひともご協力をお願いしたいと思います。

中小企業活性化のための雇用面からの展望。
少子化の現状と労働市場に与える影響

星沢: 長野県は男女ともに長寿県で有名です。20年の敬老の日に総務省が発表した高齢者の有業率も全国トップになっていました。人口は間違いなく減っていくなかで、中小企業の活性化に及ぼす影響が心配されますが、その点についてはどのようなお考えでしょうか。
小池: おっしゃるように長野県は長寿県であり、高齢者や女性の就業率が高いことは全国に誇れることだと思います。
 しかしながら、長野県においても少子化が進み、全国に先がけて人口が減少に転じています。特に生産年齢人口の減少幅が年々大きくなっていると思います。そうしますと、県内中小企業はこれまでも若年の人材確保が難しいといわれてきておりましたが、この傾向がさらに強まるのではないかと懸念しています。
 少子化、労働力人口の減少が進む中で、企業が必要な人材の原資をどこに求めるか。労働行政では当然ながら「働く意欲を有するすべての人たちの就業の実現」を目指すということでやっています。若者が少なくなるという中で、高齢者、障害者、子育て中あるいは子育て終了後の女性が、意欲や能力を発揮できるステージを拡大していかなければなりません。そこに焦点を当てて今後の対策を進めなければならないと考えています。
 ではどうしたらいいかというと、人材を生かしつつキャリアを上げていくことで生産性向上につなげていくという対策が必要になってくると思います。一人ひとりの能力を高めていくことが大事になるということです。

求人の年齢制限禁止、定年延長。
必要不可欠な高年齢者等の人材活用

星沢: これからは高齢者、女性の活用が大切になってくるということですが、一昨年から求人の年齢制限禁止が厳しくなりました。求人企業にはかなり戸惑いもあると思いますけれども、その辺をお聞かせいただければと思います。
小池: 平成19年10月に施行された改正雇用対策法により、労働者の募集・採用にあたっては年齢制限を設けることはできなくなりました。これはハローワークでの求人だけでなく、民間の職業紹介事業者の場合も適用されます。
 以前は年齢制限があることで、一部の労働者の応募の機会が閉ざされている状況でした。それを改善するために法改正がなされたわけです。
 人材を募集・採用する際には、個人の能力や適正を総合的に勘案して採用していただきたいということです。これによって労働者一人ひとりにより均等に働く機会が与えられると思います。
 ただ、ご質問にもありましたように、自社のホームページで年齢制限を設けている場合や、実際の面接等で年齢を理由に採用を拒否する場合が散見されます。周知のため、労働局幹部やハローワークが訪問をさせていただいているところでございます。
 また、事業所における高年齢者の雇用確保については、改正高年齢者雇用安定法により平成18年4月から、65歳までの定年引き上げ等の措置の導入を段階的に進めています。平成25年4月からの完全実施が目標です。平成20年6月1日現在では、51人以上規模企業で97.3%が何らかの雇用確保措置をすでに導入されています。改正高齢法の最終目的である、希望者全員が65歳以上まで働ける企業の割合は47.3%。65歳を超えて70歳までの雇用確保措置の実施企業は11.8%となっています。
 これからも就労意欲の高い高年齢者が社会的活躍を続けられる社会の構築のため、完全導入を目指していきたいと思います。
星沢: 若年者の採用が少なくなりますと、やはり求めるのはキャリアのある高齢者、そして女性の活用というところに帰着するのではないかと私も思います。平たく言うと、これからの日本社会がどうなっていくかというところにもつながっていくのですが。働き手が少なくなるということになると、どうしても縮小という感じになります。しかし縮小ではなく発展をめざすならば、先ほどお話に出た外国人労働者の活用も考えられますし、やはり高齢者と女性の活用が重要になってくると考えます。

女性労働者の活用および能力の発揮。
求められる仕事と家庭が両立できる職場環境づくり

星沢: ただ今の話を引き継いで、女性の活用が企業では今後の大きな課題となっていますが、出産を境に退職される女性も少なくありません。女性の職場での活躍を進めるためには何が必要なのか。さらに女性の管理職などは増えているのか。その辺でお話をいただきたいと思います。
小池: 女性の活用といったことで考えますと、私は女性がもっともっと活躍できる場面があっていいと思っています。これから日本では生産・労働力人口の減少にともなって、全員が仕事をする、全員が社会に参加するという時代になると思います。なかなか女性が活躍できないのはもったいない話だと思っています。
 女性の活躍ということで考えますと、実は雇用されて働いている人の43%は女性です。職場において女性が活躍しなければ日本の企業経営は成り立っていきません。そういった中で、女性が働く上で家庭との両立が非常に難しいという現実があろうかと思います。企業で働きながら家庭と仕事を両立できる仕組みをつくっていくことが労働行政の課題です。
 育児介護休業法という法律がありますが、出産、育児・介護の問題に対して社会としての仕組みをつくらないと、女性がなかなか職場にとどまれません。特に育児サポートなどの仕組みがぜひ必要だろうと思います。
 女性管理職が少ないというのは、女性がまだ活躍できていない証拠でしょう。女性の能力を高め、それを最大限に引き出していくための一番の早道は、女性自身の意識改革もありますが、まず企業経営者の考え方を変えていただくことだろうと思います。女性の能力を活用しなければ今後の企業経営は立ちいかない。そのことに思いを致していただければありがたいと思います。
星沢: 実は私の会社にはまだ女性管理職はいませんが、係長、主任といった監督職レベルの21.5%が女性です。当社においては今後、女性の進出はかなりのスピードで上がってくると思っています。
 私には女性を管理職にした場合、その職務に耐えられるか、大丈夫かなという心配があるんです。当然、女性の特性をよくつかんで就任させるのですが、実はいいところで退職されてしまうんですよ。油がのってきて、この人を将来の管理職候補にと評価した女性に限って退職されてしまうというケースがたくさんあるのです。
 残念だなと思います。その背景にはいろいろな原因があるのですが、退職されないような施策を採っていくのも企業としての役目ではないかと考えています。
 実は長野県職員の女性登用率も少ないんですね。女性管理職の数は全国で43番目だそうです。そんな状況に、党派を超えた県議さんたちが知事に女性管理職をもっと増やせという申し入れを行ったという報道もありました。これから徐々に女性の特性を生かした管理職が必要になってくるだろうと思います。
 もっとも女性の場合、育児休業がどうしてもついて回ります。現在、私の会社でも育児休業を取っている社員が3人います。中小企業でも100人、200人の規模ならともかく、10人、15人で運営している中小零細企業にとって育児休業は貴重な戦力を失ってしまうことになるのです。そういう時にどんな対応をしたらいいのか、何かいい知恵があったら教えていただきたいと思っています。
 もっとも実は不要な仕事をやっているケースもあり、それまで10人でやっていた仕事を9人でやることもできるんです。そこで必要な仕事、不要な仕事の選別をするんですね。頭数を揃えるというのはあまり意味がありません。当社では世の中が土曜日隔週休になる前、いち早く完全週休2日制導入に取り組んだのですが、一番心配したのが生産性が落ちるのではないかということでした。ところが逆に生産性は上がったんです。そういう経験があるので、おそらくできる。
 従業員がこのことを理解すれば、きっと問題解決につながっていくと常々考えているんです。
 とにかくチャレンジしてみることが必要なのではないかと思います。年間労働時間1800時間の目標にもこんな考え方で進んでいったらどうだろうと思うのです。あくまで私の考えですが。
小池: 確かに長期の休業取得になりますと事業主のご努力も大変なものがあると思います。しかしながら育児期にしっかりサポートしていただければ、確実に人材の確保にはつながりますし、就業継続により能力を発揮していただくことにも期待が持てますね。
 思い切った助成金ということで、100人以下の企業で初めて育児休業者や育児のための短時間勤務取得者が出た事業主に対し、100万円を支給する「中小企業子育て支援助成金」が創設されています。また仕事と家庭の両立ができる環境整備のためのさまざまな助成金もございます。
 ぜひご活用いただければと思います。
 仕事と家庭が両立できる職場環境づくりは、少子化が進む中で差し迫った課題です。集中的に取り組みを進めなければならない喫緊の問題として、国全体で対応を進めているところで、平成17年には次世代育成支援対策推進法が施行されました。この法律は安心して子どもが生まれ育成できる環境を社会全体で作っていく取り組みを進めるために成立したものです。企業にも「一般事業主行動計画」というものを策定して取り組んでいただくようお願いしているところです。

中小企業の雇用維持へ。支援策と、
ワーク・ライフ・バランスへの取り組み

星沢: さて、中小企業の雇用維持への支援策等についてですが、雇用関係の助成金等で新設・拡充されたものについてお聞きしたいと思います。どのようなものがあるのでしょうか。
小池: 平成20年8月、国において「安心実現のための緊急総合対策」が策定され、中小企業の雇用対策維持等への支援対策が盛り込まれました。10月16日に補正予算が成立し、助成金の新設・拡充等が図られていますし、二次補正等でもさらに強化される予定となっています。
 ひとつは、昨今の急激な経済変動により雇用調整を余儀なくされるといった場合、かねてより「雇用調整助成金制度」がございましたが、さらに「中小企業緊急雇用安定助成金」が創設され、両制度とも支給要件の緩和、助成率の拡充といった対策が取られました。
 もうひとつ「特定求職者雇用開発助成金」があります。これは就職が困難とみられる方、例えば高年齢者、障害者、母子家庭の母等を採用される事業主に対して支援をするものですが、助成対象期間の延長、支給額の増額などが図られました。ぜひご活用いただければありがたいと思っています。
星沢: ありがとうございます。ところで平成19年12月、政府は「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」と「仕事と生活の調和推進のための行動指針」を策定しました。ワーク・ライフ・バランスについて積極的な取り組みが行われているようですが、特別な理由があるのでしょうか。
小池: これは平成19年12月「ワーク・ライフ・バランス推進官民トップ会議」における議論の中でまとめられたものです。日本は労働力人口の減少と少子高齢化が一緒に進むため、これまでのように男性を中心とする長時間労働を前提とするような働き方ではもうもたないだろうと。こういう考え方を変えていこうというのが発端です。
 先ほど全員参加ということを申しましたが、女性や高齢者、障害者等を加えた全員参加で、しかも一人ひとりの能力を最大限に発揮していくことで日本を支えようということです。
 その内容をご紹介します。憲章には「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な働き方が選択・実現できる社会」と記されています。
 具体的には、(1)就労により経済的自立が可能な社会、(2)健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会、(3)多様な働き方・生き方が選択できる社会、こういった社会を目指すべきとされています。その実現に向け、企業だけでなく、そこに働く人々、国や地方公共団体がそれぞれ役割を果たしていくべきであると示されています。

中小企業にとって人材は一番大切な経営資源。
中央会および中小企業が果たすべき役割

星沢: ありがとうございます。最後に、長野県中小企業の労働環境改善に果たすべき長野県中央会の役割について伺います。私ども長野県中央会では厚生労働省より、年長フリーター等応募拡大事業、地域団塊世代雇用支援事業、70歳まで働ける企業の創出事業などの事業を受託。積極的にセミナーを開いたり、アンケートを採るなど、逐一長野労働局にご相談申し上げながら実施させていただいています。長野労働局から私どもにご注文等がありましたら頂戴したいのですが。
小池: まず、委託事業をお引き受けいただき御礼申し上げます。本来ならば我々自身がすべき仕事ではありますが、中小企業経営支援に努力されている中央会にお願いする方がより効率的にできるだろうとお願いをしているところです。
 中央会のノウハウを生かして事業を遂行していただければ、県内中小企業にとって大いに役に立ち、モデルケースとなるものも数多くできあがるのではないかと考え、成果に期待しているところです。
 中央会というよりも、中小企業が果たすべき役割ということで申し上げます。日本企業の99.7%、労働者の70%を超える中小企業の存在抜きにして、日本経済が成り立たないことは言うまでもありません。それだけに雇用機会をたくさん作っていただいている中小企業の皆さまには、深く感謝申し上げるとともに、日頃のお付き合いの中で我々の関与する部分で足りないところをぜひご指摘いただきたいと思います。よろしくお願い致します。
星沢: ありがとうございます。中小企業にとって人材は一番大切な経営資源です。私どもとしましても雇用創出・育成に重点を置いて今後進んでいかなければいけないと肝に銘じています。労働行政においては働く意欲のあるすべての人にとって働きやすく、働きがいが持てるような雇用環境を創ることが命題だと思いますが、私どももそれにならって毎日の業務に取り組んでいこうと考えています。
 国には高齢者対策もさることながら、年長フリーター対策にもさらに力点を置いていただき、25歳から34歳の将来の日本を背負って立つ人たちを常用雇用できる社会が早く実現できないものかと思います。
 昨年11月の新聞記事に麻生首相が新たな雇用対策を指示されたと載っていました。景気減退の中で雇用不安が叫ばれる中、非正規労働者の雇用維持、失業者の再就職支援、新卒者への内定取り消し問題の3点について対応せよという内容でした。まさにスピードをもってやっていかなければいけない対策だと思います。。
小池: 非正規雇用労働者対策と昨今の急激な景気悪化にともなう雇用情勢の悪化を受けて、「緊急雇用対策本部」を4年ぶりに12月9日付けで設置し、対策を講じることにしています。
 我々労働行政は人員も限られていますが、平成21年の雇用情勢が少しでも良くなるよう、全力を尽くして努力して参りたいと思っています。 よろしくご協力お願い申し上げます。

-さて、そろそろ時間が参ったようです。本日は大変お忙しい中、お二方にはわざわざご足労いただき、大変有意義なお話をいただきました。特に小池局長には懇切丁寧にご説明をいただきありがとうございました。平成21年が労働問題についてスムーズにいく年になりますよう祈念し、本年の新春対談を閉じさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。




厚生労働省 都道府県労働局 ハローワーク (公共職業安定所)
新規学校卒業者の採用に関する指針

はじめに

 新規学校卒業者の就職は、学校生活から新たに職業生活に入る人生の大きな転機となるものであり、それが適切に行われるかどうかによって、その将来を左右することにもなるものです。しかし、新規学校卒業者は、職業や職場に関する知識・経験に乏しく、適切な職業選択と円滑な就職を行うためには、関係者の助言、援助を必要とします。
 また、最近、学生・生徒に大きな打撃と不安を与える採用内定取消し及び入職時期繰下げといった重大な事態が発生し、新規学校卒業者の就職に大きな影響を与えています。
 この指針は、このような状況を踏まえ、新規学校卒業者の採用に関する秩序を確立し、その円滑な就職を促進することを目的として、新規学校卒業者を採用しようとする事業主に考慮していただく事項を取りまとめたものです。
 企業各位におかれましては、新規学校卒業者の採用について、この指針を参考に、適正な募集・採用を行っていただくようお願いいたします。

1 適正な募集・採用計画の立案


 学生・生徒にとって、就職は、職業生活の第一歩を踏み出すことになる重要なものであり、就職先の決定に当たっては、慎重な検討と多くの関係者の援助が必要とされるものです。
 一方企業にとっても、新規学校卒業者は、長期的に企業活動を支えることを期待されている人材であり、その採用は重要な意義を持つものです。
 このため、事業主は、募集・採用計画の立案に当たり、次の事項について考慮すべきです。

 事業主は、募集・採用計画の立案に当たっては、毎年の募集・採用数の大幅な変動ができるだけ生じないよう、入職後の人材育成等雇用管理面にも配慮しつつ、中長期的な人事計画等に基づいて、必用な人材を真に必要なだけ採用する方針を確立するよう努めるものとする。
 事業主は、当該年度の具体的な募集・採用計画の立案に当たり、中長期的な人事計画等の下、企業の人員構成、職場における要員の過不足の状態等を十分見極めた上で、募集・採用計画数を決定するよう努めるものとする。
 事業主は、募集・採用計画数の決定に当たり、「若干名」、「○○人以内」等不明確な表現、実際の採用計画数を超えた人数による募集等は避け、採用人数を明確にするよう努めるものとする。

2 募集・採用活動

 新規学校卒業者の募集・採用活動が無秩序に行われた場合、学生・生徒の学業に支障を生じる外、特定の学校等に求人が集中し、就職の機会が制限される可能性があること及び学生・生徒の就職活動も無秩序化し、重複内定を誘発しやすい環境をつくり出すことといった問題が発生することが懸念されます。
 また、企業の募集・採用計画の内容及び募集・採用予定人員は、学生・生徒が就職先を決定するに当たって、重要な判断材料となるものであり、安易な募集の中止又は募集人員の削減は、円滑な就職の妨げとなるものです。
 このため、事業主は、募集・採用活動の実施に当たり、次の事項について考慮すべきです。

 事業主は、募集・採用活動を実施するに当たり、多くの学生・生徒に募集・採用の周知を図り、広く応募の機会が確保されるよう配慮するとともに、職務内容、労働条件等求人内容の情報を正確に学生・生徒に提供するよう努めるものとする。
 事業主は、採用選考を行うに当たっては、学生・生徒の適性、能力に基づき適正に実施するよう努めるものとする。
 事業主は、募集・採用活動を実施するに当たっては、学生・生徒の就職活動の無秩序化による重複内定が誘発されないためにも、定められた採用選考開始の期日を遵守する等秩序を保つよう努めるものとする。
 事業主は、募集の中止又は募集人員の削減を行おうとする場合には、公共職業安定所へあらかじめ通知するものとする。
 ただし、大学、短大、高等専門学校、専修学校、公共職業能力開発施設及び職業能力開発大学校を新たに卒業しようとする者に係る募集人員の削減に係る通知は、これらの募集人員の合計を、当初の募集人員の合計より30人以上かつ3割以上減じようとする場合に限るものとする

3 採用内定

 採用内定は、学生・生徒にとっては、その企業への採用が保証されたものとして、当該企業を信頼して、他の企業を選択する権利を放棄するものであることから、採用内定は重大な意義をもつものです。
 このため、事業主は、採用内定を行うに当たり、次の事項について考慮すべきです。

 事業主は、採否の結果を学生・生徒に対して明確に伝えるものとする。
 事業主は、採用内定を行う場合には、確実な採用の見通しに基づいて行うものとし、採用内定者に対しては、文書により、採用の時期、採用条件及び採用内定期間中の権利義務関係を明確にする観点から取消し事由等を明示するものとする。
 採用内定は、法的にも、一般には、当該企業の例年の入社時期を就労の始期とする労働契約が成立したとみられる場合が多いことについて、事業主は十分に留意するものとする。

4 採用内定取消し等の防止


 新規学校卒業者に対しての事業主の一方的な都合による採用内定取消し及び入職時期の繰下げは、その円滑な就職を妨げるものであり、特に、採用内定取消しについては対象となった学生及び生徒本人並びに家族に計り知れないほどの打撃と失望を与えるとともに、社会全体に対しても大きな不安を与えるものであり、決してあってはならない重大な問題です。
 このため、事業主は、次の事項について十分考慮すべきです。

 事業主は、採用内定を取り消さないものとする。
 事業主は、採用内定取消しを防止するため、最大限の経営努力を行う等あらゆる手段を講ずるものとする。
 なお、採用内定の時点で労働契約が成立したと見られる場合には、採用内定取消しは労働契約の解除に相当し、解雇の場合と同様、合理的理由がない場合には取消しが無効とされることについて、事業主は十分に留意するものとする。
 事業主は、やむを得ない事情により、どうしても採用内定取消し又は入職時期繰下げを検討しなければならない場合には、あらかじめ公共職業安定所に通知するとともに、公共職業安定所の指導を尊重するものとする。この場合、解雇予告について定めた労働基準法第20条及び休業手当について定めた同法第26条等関係法令に抵触することのないよう十分留意するものとする。
 なお、事業主は、採用内定取消しの対象となった学生・生徒の就職先の確保について最大限の努力を行うとともに、採用内定取消し又は入職時期繰下げを受けた学生・生徒から補償等の要求には誠意を持って対応するものとする。

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