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月刊中小企業レポート
更新日:2008/12/20

ビジネスの視点

製造業のIT活用による原価管理

(有)エスエムエスコンサルティング
代表取締役 関 信一

 最終回は原価集計データを活用し、直接原価計算により原価低減を実施した事例を紹介する。X社では生産ロットがより小さくなり、段取り替え回数の増加、納期の長期化、仕掛り品の増加、高額設備の稼働率低下になっている。X社ではプリント基板(以下PC基板)の生産を行っているがハンダ槽の稼働率が収益に直結している。このため現在の稼働率は最盛期の約50%減となり収益も半減している。また、問題を解決するための間接部門人員の増加なども発生している。しかし、PC基板の受注はあるが納期に間に合わないため外注へ出している。X社は、資本金300万円、従業員(含臨時雇用)25名。コンデンサやコネクタなどのディスクリート部品のはんだ付け実装工程で実装したPC基板を生産する。
はんだ槽は鉛フリーと共晶(鉛含む)があり、それぞれ基板に部品を実装するラインが直列に繋がっている。実装工程は、3名がワンユニットで作業し、検査・出荷工程に1名の計4名の生産ラインである(図1)。この時の稼働率は図2に示す。
 シミュレーション結果からPC板1枚流しのU字ラインに変更する改善をおこなった(図3)。PC板実装工程に2名を配し、検査・出荷に1人おく。稼働率は、改善前の結果より1名削減でき稼働率もアップしている(図4)。
 X社のPC基板実装生産における売上高は加工賃として1枚当たり60円であり、受注枚数は50枚で3,000円である。直接材料費はハンダ槽におけるハンダ費用で500円、その他にPC基板製造に関連して増加する間接費用(梱包費用)の変動間接費を200円とする。貢献利益は2,300円になる。固定費は、人件費で改善前の作業時間は、38.9分になり分単価を30円とすると1,167円である。この時の利益は533円となる。



一方改善後の作業時間は、1,500秒(25分)である。この時の固定費は、755円となる。利益は1,550円となり、290%アップしたことになる。この時の変動費率の変化をみると、改善前は、製造原価は直接材料費、変動間接費、固定費の合計で、1,867円である。改善前の変動費は、700円となり、変動費率は、37.5%であるのに対し、改善後の変動費率は同様に48.3%となり、128.8%アップした(表1)。この事例のとおり、原価集計のデータを活用することにより改善の見える化が可能となる。


信州ビジネスコンサルタント協同組合理事
中小企業診断士・ITコーディネータ

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