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月刊中小企業レポート
更新日:2008/12/20

イノベーション

一点突破のリーダーシップ

 限界集落と言われその存続が危ぶまれる村がたくさん存在する長野県。また、かつての強みであったスキー場や温泉旅館などの観光業や精密機械などの製造業がいずれも海外の商品や製品、サービスとの戦いに苦戦し厳しい組織運営をせざるを得ない状況が少なくありません。この閉塞感が漂う経済環境をいかに自分の率いる組織がブレーク・スルーを起こしていくのか、非営利組織においても企業経営においても最重要課題であります。しかし、簡単にブレーク・スルーを起こすヒントは、転がっているものではありません。ただ、目線を他業界に移してみると見えてくるものもあります。
 高知県で二番目に人口が少ない1072 人(平成20 年7 月31 日現在)の村、馬路村(うまじむら)をご存じの方はいらっしゃいますでしょうか。ユズ関連商品(ゆずポン酢、ゆず胡椒、ゆずドリンクなど)の開発に取り組み12 年間の低迷期を乗り越え全国ブランド化に成功し現在では33 億円産業にまで成長させています。この成功により近隣の農業協同組合が合併する中、馬路村農業協同組合は単独での生き残りを実現しています。村自体も合併協議から離脱し自主独立の道を歩んでいます。
 この村の成功は、「このままの農協では食べていけない」「農家から頼りにされるためにはどうしたら良いのか?」という危機感をもった東谷望史氏の思いと努力の継続により昭和63 年に「日本の村101展」の最優秀賞を受賞以降、爆発的なヒットを継続しています。
 顧客の本当の声に耳を傾け、動物たちのありのままの姿を見せる“行動展示”により北海道の旭山動物園を再生した小菅正夫氏にも通じるリーダーシップがあったのではないでしょうか。
 現在、長野県もワインが全国的にも世界的にも有名になりつつありますが、葡萄の世界では、巨峰の生産高が日本一を実現しています。長野県の葡萄は、約300年前に山梨県から松本市の山辺の人々が導入して始まりました。山辺葡萄、特にデラウェアは、今ではブランドとして確立していますが、品種改良した当時は、山梨県の葡萄に比べ甘く粒が大きいので、まがいもの的に思われ販売に苦心した歴史があります。
 オリンピックの世界でも、今回の北京オリンピックにおいて、フェンシングで太田雄貴氏が銀メダルを獲得した快挙があります。サッカーや野球に比べマイナー競技であるために資金も人材もありません。そこで、フェンシングの中の有望種目フルーレに絞りさらに有望選手に絞り強化予算を集中投下します。さらに、発想の転換を図るために外国人のコーチを導入します。これらの采配をふるったのは、福岡のカラシ明太子で有名な「やまやコミュニケーションズ」の山本秀雄会長です。
 選択と集中の組織戦略。そして強い信念と努力の継続が出来るリーダーの存在。これらが揃ったときに組織のブレーク・スルーを実現できるのではないのでしょうか。

※本文は、松本市巾上の税理士法人成迫会計事務所で執筆していただいたものを掲載いたしました。

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