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月刊中小企業レポート
更新日:2008/12/20

特集2
官公需施策と官公需適格組合制度

1.労働契約の基本原則

 官公需契約とは、官公庁や独立行政法人などが中小企業者と取引することをいいます。
 官公需契約には、事務用品や制服などを購入する物品等の調達、庁舎の清掃や警備などの役務契約、道路建設や河川の補修などの工事契約などがあり多岐にわたっていることから、さまざまな分野の中小企業者の方が受注することが可能です。
 取引関係が確実であることなどから、中小企業が官公需を受注することは経営基盤の安定にとってきわめて有効な手段です。
 昭和38年に制定された中小企業基本法には中小企業の振興・支援について、基本的な理念や方針を定めています。この中で、官公需施策は“中小企業の経営基盤強化策”の一つとして位置づけられ、受注機会の増大を図るよう定められています。(第21条)
 この趣旨を受けて昭和41年に「官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律」(官公需法)が制定され、次のことが定められています。
 ◇毎年度「国等の契約の方針」の作成と公表
 ◇国等の機関のほか、地方公共団体における中小企業者の受注機会の増大に向けた努力についてなど
 国等の契約の方針については、経済産業省(中小企業庁)で毎年度、中小企業者向けの契約目標や、受注機会の増大のための方策などを取りまとめ、これを閣議決定して公表しています。平成20年度中小企業者に関する国等の方針」のポイントとして以下の措置が追加されています。
 (1)中小企業者と農林漁業者との連携による経営資源を活用した物件等の調達の促進
 (2)価格と品質が総合的に優れた調達の推進
 (3)仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の実現に向けた動きを踏まえた計画的な発注の推進
又、平成20年度の契約目標については、中小企業者向け契約金額が約4兆2,132億円、官公需総予算額に占める割合は、前年度の目標(50.1%)を上回る51.0%となっています。
(その他詳しい内容については長野県中央会のホームページアドレス「http://www.alps.or.jp/chuokai/kankoju/」をご覧下さい。)
官公需法の第3条には「(国等が中小企業者に発注する場合)組合を国等の契約の相手方として活用するように配慮しなければならない」と官公需適格組合を始めとする事業協同組合等の積極的な活用を促しています。

2.国と長野県の官公需の実績

国と長野県の官公需実績は下記のとおりです。
 国等の中小企業者向け実績の過去10年平均は45.5%であるのに対し、長野県平均は80.4%と高くなっており、17年度以降は80%を超える水準となっています。

3.官公需適格組合制度

  • 中小企業組合とは
    中小企業の組合は、それぞれ法律によって設立されており、いくつかの種類がありますが、その主なものは以下のとおりです。
    中小企業の経営の合理化と取引条件の改善等を図るため最も利用され普及している「事業協同組合」、個人事業者や勤労者など個人が経営規模の適正化を図るためや自らの働く場を確保するための「企業組合」、参加する中小企業の事業を統合する「協業組合」、業界全体の改善を図る「商工組合」、商店街の商業者等により構成される「商店街振興組合」、飲食業・旅館業・クリーニング業・理美容業などの生活衛生関連業者により構成されている「生活衛生同業組合」等があります。

  • 官公需適格組合とは
    官公需適格組合制度は、中小企業組合の中で官公需の受注に対して特に意欲的であり、かつ受注した契約は、十分に責任を持って履行できる経営基盤が整備されている組合であることを中小企業庁(経済産業局)が証明する制度です。この証明を受けている組合は、事業協同組合・企業組合・協業組合等が対象となっており、長野県内の官公需適格組合は9組合となっています。

  • 官公需適格組合の種類
    官公需適格組合の証明区分は「物品納入等」と「工事イ、ロ」の3種類です。同時に他の種類の証明を受けることはできません。
    物品納入等(役務を含む)
    工事イ(建設業許可が必要な工事を行う場合)
    公共性のある工事であって、工事1件の請負代金の額が1,500万円以上のもの(電気工事、管工事、電気通信工事またはさく井工事にあっては500万円以上)を請け負うとする場合
    工事ロ(建設業許可が不要な軽微な工事を行う場合)
  • 「物品納入等」(役務を含む)の証明基準
    物品・役務で証明を取得しようとする場合は、定款に「共同受注事業」が規定されていることを前提に、以下の7つの基準を満たさなければなりません。
     組合の共同事業が組合員の協調裡に円滑に行われていること
     官公需の受注について熱心な指導者がいること
     常勤役職員が2名以上いること
     共同受注委員会が設置されていること
     役員と、共同受注した案件を担当した組合員が連帯責任を負うこと
     検査員を置くなど検査体制が確立されていること
     組合運営を円滑に遂行するに足りる経常的収入があること

  • 「工事」の証明基準
    物品納入等の基準に加えて、工事イの場合は以下の⑧、⑨、⑩の3つ、工事ロの場合はの基準を満たさなければなりません。
    共同受注事業を1年以上行っており相当程度の受注実績があること
    工事1件の請負代金の額が1,500万円(電気、管工事等は500万円)以上のものを受注しようとする組合は、常勤役員が1名以上、常勤職員が2名以上おり、その役職員のうち2名は受注しようとする工事の技術者であること
    総合的な企画及び調整を行う企画・調整委員会が現場ごとに設置され、工事全体が契約通りに施工される体制が整備されていること

  • 官公需適格組合の証明を取得しても受注が増えるとは限らない
    官公需適格組合の証明を取得するためには、定款の変更、総会における官公需共同受注規約等の規約の議決、申請書に加えて何種類もの添付書類の作成等、特に初回の申請時には相当のパワーが必要となります。
    このような苦労を重ねて証明を取得しても官公需の受注が増えるとは限りません。営業努力が必要であることは変わりありません。
    しかしながら、官公需適格組合は、受注した契約に対して十分に責任を持って履行できる経営基盤(組織体制、財務状況等)が整備されている組合であることを中小企業庁(国)が認める制度なので、発注機関にとっては安心して仕事を任せることができます。証明基準の⑤は、担当した組合員に万が一事故ある時は他の組合員がその仕事を引き継ぐなどして組合全体で責任を負うことを要求しています。
    昨今は公平性、透明性を高めるために、一般競争入札が多くなり、官公需適格組合といえども一落札者に過ぎなくなっています。このような状況ではせっかくの制度が効果を発揮しません。官公需適格組合制度を活かした「受注の増大策」を強く求めるところであります。

  • 官公需適格組合の証明取得を受けるまでの流れ
    大まかな流れは下の図のとおりですが、まず中央会にご相談ください。
  • 官公需問題懇談会の開催
    官公需受注上の問題点を把握しその具体的解決策を探るために、年1回開催しています。
    今年度も11月11日に全国中小企業団体中央会連携支援部長大竹氏を講師にお招きし官公需問題懇談会が開催され、活発な意見交換がなされました。
  • 長野県官公需組合協議会の支援
    平成16年10月20日に官公需適格6組合と官公需に熱心な3組合を会員として設立されました。官公需組合の結束によって共通する諸問題の解決を図り、かつ会員相互の交流を活発にすることによって各組合の受注体制の整備、受注能力の向上を実現しもって官公需の受注を確保し、中小企業の経営の安定とその経済的地位の向上に資することを目的としています。
    平成20年11月11日に通常総会が開催され、設立当初より会長・副会長をお努め頂いた、佐藤信行会長、松澤一男副会長が共に退任され新会長・副会長に以下の方が就任されました。

     会 長  池 田 修 平  氏
          (長野設計協同組合理事長)
     副会長  吉 武 行 正  氏
          (長野市水道工事協同組合専務理事)

    現在、協議会会員が受注のための営業活動をしており、中央会も側面から支援しています。

官公需のことは中央会へご相談ください!!

経済産業省(中小企業庁)より以下の要請文が、10月1日付けで各都道府県に通達されております。

官公需における官公需適格組合の活用を始めとする
中小企業者の受注機会の増大に向けた施策への協力要請について

平素、官公需に関する中小企業者の受注機会の増大につきまして、特段の御配慮をいただき、厚く御礼申し上げます。
 御案内のとおり、国におきましては、本年6月17日、官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律第4条の規定に基づき「平成20年度中小企業者に関する国等の契約の方針(以下「国等の契約の方針」という。)」を閣議決定し、同日付け平成20・06・17中第2号をもって経済産業大臣から貴県知事あて、「国等の契約の方針を参考として、地域の実情に応じ必要な場合には中小企業者に関する契約の方針を策定する等中小企業者の受注機会の増大のための措置を講じ、適切な運用が図られるよう」要請したところであります。
 さて、2002年第一四半期から始まった景気回復は総じて外需依存型であり、家計全体はその恩恵を実感するにいたらず、こうした中、世界的な原油・食料価格高騰により、農林水産業者や中小企業者など、価格転嫁が困難な立場にある生産者の活動は大きな打撃を受けております。また、米国のサブプライムローン問題に端を発した世界経済の成長鈍化といったマイナスの影響を正面から受け、我が国経済は厳しい局面に立たされております。
 このような状況を踏まえ、先に決定されました「安心実現のための緊急総合対策(平成20年8月29日「安心実現のための緊急総合対策」に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議決定)」におきましても、各般の中小企業対策を講じることとしておりますが、中小企業者の官公需に対する期待は強いものとなっております。
 平成20年度も上半期を過ぎたところでありますが、上記の事情にもかんがみ、貴県におかれましては、引き続き、下記の事項を始めとして「国等の契約の方針」を参考として、中小企業者の受注機会の増大のための措置の導入等に積極的に取り組まれるようお願いいたします。
 なお、貴県下の市町村に対し、同様の趣旨を周知されますよう併せてお願いいたします。
 官公需適格組合への活用についての詳細は、
http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/index.htmlにあるのでご覧ください。
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