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月刊中小企業レポート
更新日:2008/11/20 |
イノベーション
中小企業や小規模組織でも出来る社会的責任の果たし方
京都議定書や洞爺湖サミット議長国という事を持ち出すまでもなく、食料などの資源の世界的価格高騰も続く気配ですし、異常気象の多発する地球環境を守るために、地球温暖化対応が市民社会でも切実な問題になってきています。長野県でも森林保護のために「長野県森林づくり県民税」の条例が制定され、平成20年4月に開始した事業年度から課税されるようになっています。小さな組織でも最低、年間1,000円は税負担する事になり環境に対しても真剣にコストを考えなくてはいけない時代になってきているなという感じです。
大企業のように資金力のある組織の社会貢献策は新聞紙上などで騒がれていますので、これらを参考にするのもよいですが、ISO14000を取得するとか、社会的責任に関係のある何かのイベントに参加する、寄付する等の活動の他にも、我々小さな組織でも身近にできる社会的責任の果たし方があるのでないでしょうか?
以下、中小企業や小規模組織でも出来そうな社会貢献に結びつく活動を列挙してみました。
① リサイクル出来る紙ごみを分別して授産施設などに寄付する
松本市を例にとると1人が1日あたりに、事業ゴミを643g、家庭ゴミを711g出しているそうです。地球温暖化の原因になる可燃ごみの半分は、紙ごみが占めていますので、この紙ごみをいかに燃やさずにリサイクルするかがポイントになってきます。そこで、パンフレット、書類や封筒、本などは分別して、授産施設に持ち込み、運営費にしてもらう事により社会貢献する。
シュレッダーされた紙もリサイクル可能です。今まで燃やしていたものを少しでも燃やさずにし、二酸化炭素(CO2)を出さないことで地球環境に貢献することが可能です。
② ペットボトルのキャップを分別して、学校やイオングループ等のお店に渡す集められたキャップは、ワクチン接種が可能となるように活動しているNPOに渡され、キャップ800 個から2000 個で1人の子供の命を救う事が出来ると言われています。スタッフの子供さんの中でペットボトルのキャップを集めている学校がありましたら、集める活動に協力することにより、スタッフの子供さんも鼻高々でキャップをたくさん持って登校できてそのスタッフの満足に結びつくかもしれません。
③ 平成20 年7 月7 日付の日本経済新聞によると、地球温暖化対策の隠れた対策として沖縄料理で有名な『ゴーヤ』を作ろうと言う記事がありました。全国どこでも育成でき、メンテナンスが楽で4メートルにも成長しますので、これを簾(すだれ)代わりに使ったらどうかという提案でした。ゴーヤに限らずちょっとした植物を育成するのも事務所や店舗のイメージアップという観点からも検討に値すると思います。
以上3つの事例を掲載させていただきましたが、これらの活動は、ゴミを分別するなど、今までの生活習慣を見直す事が大切になりますので、スタッフの意識のチェンジを起こしやすくなります。人間、何かを見直すと他も見直ししたくなってくるため、組織のモラルアップに結びつけていき、しいては生産性の向上に結びつける事も可能だと思います。
コストを、それほどかけなくても社会貢献出来る活動は無いのか、環境貢献し社会的責任を果たす事により、自分の率いる組織の対応力が強化されるような社会貢献が無いのか検討してみたいものです。
「ふるさと納税」は 建設業に追い風!?
「ふるさと納税」・・皆様も一度は耳にされたことのある言葉ではないでしょうか?これは地方自治体に寄附をした場合に、一定額を限度として、所得税と個人住民税から控除が受けられるという制度で、平成20年度の税制改正で、寄附金税制の拡充策の一つとして誕生したものです。実は平成5年、既に地方自治体に対する寄附金という形で住民税の所得控除を受けられるシステムができていたのですが、10万円超の寄附でないと控除の対象にならない等、使いにくさが指摘されていました。そんな中、個人の故郷への貢献意識の高まりとともに「もっと使いやすい制度を」との要望から生まれたのがこの制度です。
ではここで、制度の概要を簡単にご紹介しましょう。
控除対象者 |
個人で納税義務のある方 |
自治体の範囲 |
住所地に関係なく、応援したいと思う自治体を自らの意思で選ぶことができます。 |
控除方式 |
①「ふるさと納税」した年の分の所得税から「所得控除方式」で控除が受けられます。 |
②翌年度分の個人住民税から「税額控除方式」で控除が受けられます。
(住民税額そのものが控除されるのでメリットが大きいです!) |
控除される金額 |
「ふるさと納税」合計金額から5,000円を差し引いた額
(複数の自治体に「ふるさと納税」する場合は、その合算額を基に計算されます。) |
注 意 点 |
Ⅰ上記②の額は、個人住民税所得割額の10%が限度です。
Ⅱ控除対象となる寄附金額は、地方公共団体に対する「ふるさと納税」以外の寄附金と合わせて、総所得金額等の30%が上限です。 |
次に、実際に具体例を挙げて控除額の計算をしてみましょう。
モデルケース:給与収入650 万円で、夫婦と子供2 人のケース 個人住民税(所得割額)250,000 円 の場合 |
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ケースⅠ |
ケースⅡ |
「ふるさと納税」合計額 A
控除対象額B (A- 5,000円)
所得税控除 (B ×所得税適用税率10%)
住民税基本控除額 (B×一律10%)
住民税特例控除額※ (B×(90%-所得税適用税率10%))
※但し、上限は住民税所得割額×10%
税額控除合計 |
30,000円 25,000円 2,500円 2,500円 20,000円
25,000円 |
60,000円 55,000円 5,500円 5,500円 25,000円
36,000円 |
(控除されない金額(自己負担額)) |
(5,000円) |
(24,000円) |
ご覧のように、ケースⅠは、5,000 円を除いた全額が控除を受けられるのに対し、ケースⅡは寄附金の6割ほどの控除しか受けられません。つまり、多額の寄附をしたからといって、ほぼ全額が控除を受けられるとは限りませんので、個人住民税(所得割額)の10%程度を目安にされるのがお得です。
また、この控除を受けるためには、自治体の指定する事業を選んで寄附する事。また確定申告等で別途控除申請が必要である事等、手続き上の制約もありますので、各自治体までご確認頂くことをお勧めします。
以上がふるさと納税制度の概要ですが、次に、その良い点、危惧される点を再確認してみましょう。
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良い点 |
危惧される点 |
納税者 |
- 自分が応援したい自治体を自分で選択でき地域に貢献できるという満足感がある
- 税額控除等の特典も得られる
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- 人気のない自治体では税収が減る可能性があり、結果として住民サービス低下の影響を受ける可能性もある
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地方自治体 |
- 努力次第で寄付金収入を増やせる可能性がある(自治体によって特産物のプレゼントなど特典あり)
- 考える行政を行うようになり地域の活性化に繋がる
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- これまでの税収分がふるさと納税として他の自治体に流れる可能性あり⇒財政が逼迫⇒様々な予算を減らさざるを得なくなる
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なおご参考までに、現在までの自治体のふるさと納税額(入金状況)を3件ほど挙げてみました。(県外の方を対象にPR 活動をするなど、自治体それぞれに工夫をされているようです。)
長 野 県 |
1,062,000円 |
現在18件 県外の県人会からの寄附が主 |
長 野 市 |
300,000円 |
5 月~PR 開始 これから本格的に活動開始 |
松 本 市 |
1,575,000円 |
現在16件 県外からの寄附が主 |
~建設業に追い風!?~
公共事業の大幅削減で工事量が減り、その影響を肌で感じていらっしゃる建設業界の方も多いことと存じます。しかし、チャンスともいえます。なぜなら「ふるさと納税」はその使途が限定されており、その対象となる事業の中には、建設工事に関わるものも多く存在します。例えば松本市では、「ふるさ都・まつもと」のまちづくり事業として、交通、都市基盤づくり等が用途に挙げられています。これを好機と考え、まず、ご自身がその地域を応援するつもりで「ふるさと納税」をするとともに、業界団体などで結束して、民間主導で行政を盛り上げることもできるのではないでしょうか?
「ふるさと納税」の詳細につきましては、各県、市町村のHP などでも詳しくご確認いただけます。
※本文は、松本市巾上の税理士法人成迫会計事務所で執筆していただいたものを掲載いたしました。 |
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