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月刊中小企業レポート
更新日:2008/11/20

特集2
労働契約法をご存じですか?

~労働契約法がスタート!~

 就業形態が多様化した今日、労働者の労働条件が個別に決定・変更されるようになり、会社と労働者が賃金や解雇等をめぐり争う事案が増えています。
 個別労働紛争の解決の手段としては、裁判制度のほかに、平成13年度から「個別労働紛争解決制度」が、平成18年から「労働審査制度」が施行されるなど、手続面での整備はすすんできました。
 しかしながら、このような紛争を解決するための労働契約についての民事的なルールをまとめた法律はありませんでした。
 このような中で、平成20年3月1日から「労働契約法(平成19年法律第128号)が施行され、労働契約についての基本的なルールがわかりやすい形で明らかにされました。
 本会では、全国中小企業団体中央会が行う「中小企業労働契約支援事業(厚生労働省委託事業)を実施することになり、本事業を通じて個別労働紛争が阻止され、労働者の保護を図りながら、個別の労働関係が安定することに努めます。

 厚生労働省ホームページ:http:www.mhlw.go.jpでは、最近情報(労働契約法について・労働契約法のあらまし)をみることが出来ます。なお、PDFファイルを見るためには、Adobe Readerというソフトが必要ですが、Adobe Readerは無料で配布されています。

 労働契約法における「労働者」とは使用者の指揮・命令のもとに働き、その報酬として賃金を受けている場合には、労働者として労働契約法の対象になります。(第2条第1項)
 なお、「請負」や「委任」という形式を取っていても、実態として、使用者の指揮・命令のもとに働き、その報酬として賃金を受けていれば、労働者になります。
 労働契約法は、労働契約の基本原則や過去の判例法理を体系化したものであり、これをマスターすれば「紛争の勝ち負け」を予測できます。
 裁判になれば、たとえ勝ったとしても、時間と手間の多大な浪費になります。労働者・使用者が関連する条文を参照すれば、紛争に至る前に問題を解決できます。
 労働契約法は、労働契約における権利義務を確定させる法的根拠を示すものです。罰則規定は設けられておらず、労働基準監督署の監督指導も予定されておりません。
 紛争が生じた際には、個別労働関係紛争解決促進法(正式名称は、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」で、都道府県労働局の指導・助言、紛争調整委員会のあっせん等により、トラブルの解決を図ります。)に基づき処理されます。
 「労働契約法」は、全部で19条で中身は5章に分かれたコンパクトな法律です。

第1章 総則(第1条~第5条)
第2章 労働契約の成立および変更(第6条~第13条)
第3章 労働契約の継続および終了(第14条~第16条)
第4章 期間の定めのある契約(第17条)
第5章 雑則(第18条~第19条)
◎雑則は船員や公務員の適用除外等を規定しています。

.労働契約の基本原則

  1. 労働契約の締結や変更にあたっては、労働者・使用者の対等の立場における合意によるのが原則です。
    (労働契約法第3条第1項)
  2. 労働者と使用者は、労働契約の締結や変更にあたっては、均衡を考慮することが重要です。
    (労働契約法第3条第2項)
  3. 労働者と使用者は、労働契約の締結や変更にあたっては、仕事と生活の調和に配慮することが重要です。
    (労働契約法第3条第3項)
  4. 労働者と使用者は、信義に従い誠実に行動しなければならず、権利を濫用してはなりません。
    (労働契約法第3条第4項・第5項)
    労働契約は、使用者と労働者がお互いに守らなければならないものであり、あとでトラブルになったりしないように、契約の内容をハッキリさせておくことが大切です。
  5. 使用者は、労働契約の内容について、労働者の理解を深めるように努めなければなりません。
    (労働契約法第4条第1項)
  6. 労働契約の締結や変更にあたっては、労働者・使用者の対等の立場における合意によるのが原則です。
     (労働契約法第4条第2項)
    具体的には、労働者と使用者で話し合った上で、労働条件を記載した書面を労働者に交付することなどが考えられます。
    有期雇用契約(期間を定めて締結されている労働契約)の場合には、契約期間が終わったときに契約が更新されるかどうかや、どのような場合に契約が更新されるのかなど、契約の更新についてもハッキリさせておく必要があります。
    上記以外に、有期労働契約(期間を定めて締結されている労働契約をいう)については、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準~平成15年厚生労働省告示 平成20年3年1日一部改正」において、使用者は、契約期間満了後の更新の有無等を明示、3回以上更新された契約や1年を超えて継続勤務している労働者の契約を更新しない場合、契約期間満了の30日前までに雇止めを予告、労働者の求めに応じ、雇止めの理由を明示、契約更新の場合、契約期間をできる限り長くするよう配慮することとされています。
  7. 使用者は、労働者の生命や身体などの安全が確保されるように配慮するように努めなければなりません。
    (労働契約法第5条)

.労働契約の成立

  1. 労働者と使用者が合意すれば、労働契約は成立します。
    事業場に就業規則がある場合で、就業規則で定める労働条件が労働者の労働条件になる場合は、次のような場合です。
    労働者と使用者が、「労働すること」「賃金を払うこと」について合意すると、労働契約が成立します。
    (労働契約法第6条)
    事業場に就業規則(労働条件などを定めた規則)がある場合には、次のようになります。
  2. 労働者と使用者が労働契約を結ぶ場合に、使用者が
    合理的な内容の就業規則を
    労働者に周知させていた(労働者がいつでも見られる状態にしていた)
    場合には、就業規則で定める労働条件が、労働者の条件となります。
    (労働契約法第7条本文)
  3. 労働者と使用者が、就業規則とは違う内容の労働条件を個別に合意していた場合には、その合意した内容が、労働者の労働条件になります。
    (労働契約法第7条ただし書)
    事業場に就業規則がある場合でも、労働者のそれぞれの事情に合わせて、労働条件を柔軟に決めることができます。
  4. 労働者と使用者が個別に同意していた労働条件が、就業規則を下回っている場合には、労働者の労働条件は、就業規則の内容まで引き上がります。 
    (労働契約法第12条)
  5. 法令や労働協約に反する就業規則は、労働者の労働条件にはなりません。
    (労働契約法第13条)

.労働契約の変更

 労働者が働いていく中では、賃金や労働時間などの労働条件が変わることも少なくありません。労働条件の変更をめぐってトラブルにならないように、労働者と使用者で十分に話し合うことが大切です。
  1. 労働者と使用者が合意すれば、労働契約を変更できます。
    (労働契約法第8条)
    事業場に就業規則(労働条件などを定めた規則)がある場合には、次のようになります。
  2. 使用者が、就業規則の変更によって労働条件を変更する場合には、次のことが必要です。
    (労働契約法第10条)
    その変更が、以下の事情などに照らして合理的であること。
    ○労働者の受ける不利益の程度
    ○労働条件の変更の必要性
    ○変更後の就業規則の内容の相当性
    ○労働組合等(労働者の過半数で組織する労働組合、その他の多数労働組合や事業場の過半数を代表する労働者のほか、少数労働組合や、労働者で構成されその意志を代表する親睦団体など労働者の意志を代表するものが広く含まれます。)との交渉の状況
    労働者に変更後の就業規則を周知させること。
  3. 就業規則の変更については、裁判で次のような考え方が示されています。
    [労働契約法の内容は、これら判例法理に沿ったものであり、これらを変更するものではありません。]

.労働契約の終了

 出向、懲戒や解雇については、労働者に与える影響が大きいことからトラブルになることが少なくありませんので、紛争とならないように気をつけましょう。
  1. 権利濫用と認められる出向命令は、無効となります。 
    (労働契約法第14条)
    出向命令が権利濫用に当たるかどうかは、その出向が必要であるか、対象労働者の選定が適切であるかなどの事情を総合的に考慮して判断されます。
  2. 権利濫用と認められる懲戒は、無効となります。
    (労働契約法第15条)
    懲戒が権利濫用に当たるかどうかは、懲戒の原因となる労働者の行為の性質や様態などの事情を総合的に考慮して判断されます。
  3. 客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は、権利を濫用したものとして無効となります。
    (労働契約法第16条)

.有期労働契約の締結

 例えば、1年の契約期間を定めたパートタイム労働者など有期労働契約を結ぶ場合には、契約の終了場面における紛争がみられることから、あとでトラブルになったりしないように、次のことに気をつけましょう。
  1. 使用者は、やむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができません。 
    労働契約法第17条第1項)
  2. 使用者は、有期労働契約によって労働者を雇い入れる目的に照らして、契約期間を必要以上に細切れにしないよう配慮しなければなりません。
    (労働契約法第17条第2項)

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