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月刊中小企業レポート
更新日:2008/10/20

元気な企業を訪ねて ―チャレンジャーたちの系譜―

「もったいない」精神で、不用と必要をつなぐ。
リサイクルビジネスで地球にやさしい環境づくりに貢献。


株式会社サンタの創庫
代表取締役 江口 光雄さん


長野県内「地域一番店」の
ポジションを確立

 「MOTTAINAI」−ケニアのノーベル平和賞受賞者、ワンガリ・マータイさんが2005年来日した折に感銘を受け、環境を守る世界共通語として広めることを提唱した日本語だ。日本人が昔から大切にしてきた「もったいない」の精神は今や、全世界の人々に響き渡っている。その価値観をそのまま体現しているのが、総合リサイクルショップ「サンタの創庫」だ。
 店内には、家電、家具、衣料、食器、雑貨、ブランド品、貴金属、オーディオ、楽器、文具、おもちゃなど、約5万点にもおよぶ商品が所狭しと並ぶ。いずれも新品・中古を問わず不用品を買い取り、必要によっては修理するなど再生し、販売しているもの。
 値段が安ければ新品でなくていい、何か掘り出し物を探したい−。それぞれ期待感をもって訪れる来店客は男女問わず、幅広い年齢層におよび、若いカップルも多いという。
 江口光雄社長は「サンタの創庫」の魅力を次のように話す。「何があるか分からない膨大な商品を見て歩くのが面白いんでしょうね。何か掘り出し物を見つけ出す楽しみもある。例えば古いテレビなど懐かしい物には、その商品についた値札の10倍以上の価値を感じる人だっているでしょう。だから値付けもあえてスタッフに任せています。そんなワクワク・ドキドキ感のある店づくりを大切にしているんですよ」。
 総合リサイクルショップ「サンタの創庫」は現在、長野県内20店舗、山梨県1店舗、岐阜県4店舗(FC)を展開。さらにリサイクル専門店として、中古ゴルフクラブの「ゴルフパートナー」、中古釣具の「タックルベリー」、中古パソコンの「ソフマップユーフロント」、古着の「サンタの古着屋KOMACHI」を出店している。2000年に第1号店をオープン以来、積極的な出店を重ね、長野県内「地域一番店」のポジションを確立した。
 もっとも江口社長の「起業家」としての足跡は、その10数年前にさかのぼる。

「儲かれば何でもいい」
時代の最先端のビジネスを次々と

 「世界で一番物流ビジネスが進んでいるのがアメリカ。
 長野市内の高校を卒業後、地元の百貨店に就職。主に婦人服の仕入れ、営業担当として流行の最先端で活躍しながら、その一方でつねに意識していたのが「独立起業」だった。ようやくその思いが実現したのは、サラリーマン生活も10数年を経た35歳の時。以来今日までに起業した事業は、実に28業種におよぶという。
 最初に手がけたのが、当時人気アイドルが愛用し話題になったパンティストッキングの個人輸入代行。これが当たった。商品の爆発的人気に円高差益も重なり、大きな利益を手にする。次に成功したのが、観光地の土産物店だった。スキーブームがピークを迎え、長野オリンピックの開催が決まるなど追い風を受けて大ヒット。北信濃の観光地に次々と出店し、6店舗まで増やした。
 その後、本のリサイクルショップ、アイスクリーム店、カラオケ店、持ち帰りピザ店、カニ食べ放題の店、ラーメン店、マンガ喫茶等々、まさに手当たり次第。いずれも時代の最先端をゆく目新しい事業ばかりで、マンガ喫茶は県内第1号だった。
 時代の先端をとらえる情報収集力は、百貨店時代に身につけた世界の最先端ファッションをリサーチする力と感性の賜物。そこに、もって生まれたビジネスとして“当たりそうなもの”をかぎ分けるカンが働く。江口社長は「最初はうまくいかなくても、最後にはだいたい成功している」と言ってのける。
 もっとも、今はそのほとんどの事業から撤退している。「いずれも数字に陰りが見えた時点で止めました。とにかく儲かれば何でもいい。時代の波に乗り、最先端のビジネスをやることが楽しく、その業種・業態に固執する気持ちもありませんでしたから」。
 こうして江口社長が会得した起業の極意。それは「起業資金は予算の3分の1に抑えること」だという。「起業で失敗するのは最初に予算を100%使い切ってしまうこと。事業がうまくいかなければ、すべてお終いになってしまう。私は何か新しい事業を始める時はまず失敗するものと思い、自分の能力と資金を、起業に3分の1,その事業の修正に3分の1、そして残りの3分の1を事業の拡大に使う。その配分で立ち上げるのが私のやり方です」。

社会に貢献し、世の中に必要とされる
事業でなければいけない

 「儲かれば何でもいい」−その考え方を大きく変えることになったのは、経営塾を主宰し経営者に信奉者が多い、稲盛和夫氏との運命的な出会いだった。1999年のことである。
 「稲盛さんにビジネスを何のためにやっているのかと聞かれ、『儲けるためです』と言ったら、『それは違う。社会に貢献し、世の中に必要とされる事業でなければいけない』と言われました。その時は正直言ってピンときませんでしたが、それを機に猛勉強。地域社会に貢献する会社でなければいけないのだと、考え方が大きく変わりました」
 その時、たまたまテレビでリサイクルビジネスの特集番組を見て、もって生まれた鋭いカンが働いた。「これからはゴミを減らし、資源をできるだけ活かすリサイクルの時代。この仕事は素晴らしい。これだと」。
 さっそく全国の同業者を視察したが、参考になる業者はなかった。業界の商品管理のまずさ、店舗づくりや接客態度のレベルの低さをあらためて実感しただけだった。「この程度だったら十分勝てる。独自のリサイクルショップをやろうと決めました」。




 しかし、総合リサイクルショップの経営は初めて。ノウハウもないまま2000年、長野市郊外に第1号店をオープンする。結果は、失敗。委託販売にしたため、高く売りたい人の値段と、できる限り安く買いたい人の値段が釣り合わなかったからだ。2店舗目はリサイクル品市場で仕入れた商品を並べた。しかし、再び失敗。オークションで競り落とすため仕入れ値が上がり、ほとんど儲からなかった。
 満を持して取り組んだ3店舗目は、全国でも珍しい独自の買い取りシステムをつくり、利用客から不用品を集めることにした。明るくきれいな店づくりをし、オープンチラシで大々的に宣伝。これが見事当たり、初日から来店客が押し寄せた。
 もっとも、身のまわり品からブランド品まであらゆる物を扱うため、膨大な商品知識が必要にも関わらず、対応できる人材がいない。百貨店時代の経験から、ブランド品から洋服までオールマイティに分かる江口社長が買い取り業務から売価決めまで行いながら、スタッフを文字通り手取り足取り教えていった。現在は独自の教育プログラムにより、未経験の社員でも半年ほどで一通りの知識が身につけられるという。
 そして、4店舗目にして旗艦店となる大型店を新築。これも当たり、以降、増えつつあった空き店舗を積極的に活用しながら怒濤の快進撃を続け、多店舗化を一気に推進していった。

気概のある人は
ぜひ経営者になるべきだと思う

 企業の目的は社会貢献や人のためにあるという理念を持つこと。それが経営者に一番大切なことだと江口社長は言う。「経営は大変なものだし、挫折も経験する。それを乗り越える力こそ、この理念なのです。儲ける気持ちだけでは乗り越えられませんよ。起業家をめざす人はそれを肝に銘じてほしい」。かつて「儲かること」を最大の目的にしていただけに説得力がある。
 企業を発展させるために欠かせないのが人材の育成。ここでも江口社長は理念の共有を基本とし、「この仕事が好きか、この仕事が自分の人生にどういう価値があり、それを通してどんな夢を実現したいのか。これを大事にしています」。
 現在、同社では新卒社員が3分の2を占める。江口社長は人材採用にも積極的に関わり、会社訪問の学生には2時間ほどかけて自らの熱い思いを語る。
 期待するのは、起業したいという夢を持つ人材。本気で独立をめざす社員は早くから店長に抜擢し、店の経営を経験させて鍛え上げる。「仕事は机の上よりも、現場で実際にやりながらの方が身につく。人は走りながら育つんですよ」。江口社長は将来サンタの創庫全店をFC化し、やる気のある社員に任せるというアイデアも持っているという。
 「私もサラリーマン時代、会社の文句ばかり言っていましたが(笑)、経営者になって相当勉強しました。企業規模に関係なく、経営者はみな対等。どんな経営者ともつきあえるし、それを通して自分自身が成長できる。そういう意味でも経営者になってよかった。だから、気概のある人はぜひ経営者になるべきだと思うんです」
 一方、物事にこだわりや深い知識を持つシニアの採用にも意欲を持つ。その知識と豊かな社会経験を生かした接客で顧客サービスの充実を図るとともに、若手社員の指南役への期待もあるという。

もったいない。
それは日本人の良心です

 同社は08年2月、カンボジア・プノンペンに初の海外店をオープンした。3階建て・延べ200坪の店舗には、中古家電やパソコン、衣類、楽器からおもちゃまで、日本から持ち込んだバラエティ豊かな中古品が並ぶ。
 同社は従来、利用客が持ち込む商品すべてを引き取っていたわけではなく、特に衣類は1割程度しか引き取っていなかった。しかしこれを機に、国内店舗に持ち込まれる商品を@買い取るものA無料で引き取るものB有料で処分するものに分けて100%引き取るシステムに改め、型式やデザインが古いなどの理由で日本で売れない商品をプノンペン店に供給することにした。
 日本からカンボジアに商品を運ぶ費用は年間600万円程度かかるが、これで年間2000万円程度かかっていた処分費用を半減できる見通しだ。プノンペンの店でも売れ残った衣料は赤十字に寄付したり、農村に無料で配り、現地社会から感謝されているという。
 「不用品を持ち込む人のほとんどは換金目的ではなく、捨てるのがもったいない、何かに利用してほしいという気持ちからだと思う。これは日本人の良心。リサイクルは日本の文化です。それをカンボジアで生かすことができたことで、社会貢献の理念に一歩近づいたかなと思っているんです」
 Reduce(ゴミ削減)、Reuse(再利用)、Recycle(再資源化)という環境活動の3Rを推進し、持続可能な循環型社会の構築をめざす世界的な活動として展開する「MOTTAINAI」と響き合う、同社のリサイクルビジネス。これからの展開がますます楽しみだ。




プロフィール
江口 光雄社長
代表取締役
江口 光雄
(えぐち みつお)
中央会に期待すること

中央会への提言
「長野ベトナムアセアン交流事業協同組合」設立には大変ご尽力いただき感謝している。今後も相談窓口としてさらにご支援をいただきたい。
サンタの創庫 長野南バイパス店
長野南バイパス店

経  歴   1952年(昭和27年)8月1日生まれ
出  身   長野市
家族構成   妻、長女、長男
趣  味   山歩きが趣味だったが最近はごぶさたしている。

企業ガイド
株式会社サンタの創庫

本  社   〒381-2217 長野市稲里町中央4-21-37
TEL(026)291-1797
創  業   昭和63年11月
資 本 金   5,000万円
事業内容   リサイクル事業 サンタの創庫(総合リサイクルショップ)、ゴルフパートナー(中古ゴルフクラブ買い取り・販売専門店)、サンタの古着屋KOMACHI(中古衣料買い取り・販売専門店)、ソフマップユーフロント(中古パソコン・デジタル家電買い取り・販売専門店)、タックルベリー(中古釣具買い取り・販売専門店)
店  舗   県内19店舗、岐阜・山梨6店舗、カンボジア1店舗
関連会社   (有)メディアネットワーク 、(有)サンタアカデミー、(有)サンタスタイルクラブ、(株)長野グルメランド
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