MENU

 月刊中小企業レポート
> 月刊中小企業レポート

月刊中小企業レポート
更新日:2008/10/20

既に知られている発明は
特許されない

綿貫国際特許・商標事務所
弁理士 綿貫 隆夫

 発明は新しいものでなければ特許にならないということは大体の人は知っている。しかし厳密にいつの時点で問題にされるのだろうか。特許出願の審査において、その出願の日時より前に、その発明あるいはその発明と同一内容のものが既に日本国内または外国で知られていれば、特許庁はその「知られている発明」を示してその特許出願を拒絶する。特許庁は出願の審査の場合、その出願日前に刊行された特許公報や公開特許公報を見つけたときはその公報の番号を示す。公報には記載されている発明等の特許分類記号が付されており、また、公表の日が記載されている。審査官は特許分類番号から検索して入手し易いので、「知られている発明」として専ら引用する。
 しかし、知られている発明としては、特許公報に限られず、同一の発明が記載された雑誌や学術文献などの刊行物に記載されているものでもよく、その記載が外国語でもよく外国で刊行されたものでも良い。文献でなくとも、発明の内容が理解できる状態で人の目に触れた事実があれば「知られている発明」とされる。発明の内容のテレビ放映、ロシア語による文献発表やドイツで発明部品を搭載した自動車の販売などはすべて、後の出願を排除する。
 特許、実用新案登録または意匠登録のいずれも新しさが要求されている。したがって特許、実用新案登録、意匠登録の出願はそれぞれ出願前に、特許に関する公報のみならず、登録実用新案公報や意匠公報のいずれかに記載されていれば公知文献として扱われ拒絶される。
 「知られている発明」が他人のした発明だけでなく、自分の発明を出願前に公表しても特許にならない。自分の発明なら、公表しても特許出願の障害にはならないと思っている人がある。よく新聞などに発表した後に出願したいとか、取引相手に見本を見せて歩いたところ、ある人に出願しておいたほうがいいといわれたので出願したいといわれることがある。特許庁は公表の事実を知らなければそれを理由に拒絶することはないが、権利になってもそれを理由に無効にする可能性がある。
 なお、特に意匠登録出願については、他人の公知意匠に対し同一・類似の範囲の意匠出願は拒絶される。自分の意匠については公知になっても6ヶ月以内の出願ならば救済の途がある。
 以上のように「新しさ」が求められる出願については、公知の発明等の存在や自ら発明等の公表の事実は出願拒絶の理由になる。これを審査官が見落とした結果、権利が認められたとしても、後から公知・公用の事実を立証されれば、いつでも権利は無効にされ、初めからなかったことになる。したがって特許庁の審査官が権利を認めても、権利侵害の争いが起きた場合、費用を掛けても公知事実を世界中に求めて探し出せば権利を消すことも出来る。権利が取れたからもう絶対だと慢心するわけには行かない。
このページの上へ