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月刊中小企業レポート
更新日:2008/10/20

ビジネスの視点

製造業のIT活用による原価管理

(有)エスエムエスコンサルティング
代表取締役 関 信一

 工業統計(平成17年)の「製造品出荷額の産業別構成比」によると、「加工組立型」の出荷額は全国平均では46.7%であるのに対し長野県では72%を占めている。また、大企業を含む加工組立型製造業の付加価値率を全国と比較すると一般機械器具製造業、電子部品・デバイス製造業、電気機械器具製造業、輸送用機械器具製造業において全国平均を上回っている。しかし、今後経済環境の変化に対応した経営戦略を立てる必要がある。特にコスト競争力を強化する必要がある。益々原価管理の重要性が増してきている。そこで、収益性を確保するための原価管理の方法についてITを活用した管理方法の要点と効果を述べたい。
 長野県内中小製造業の原価管理活用状況を支援する立場からみると以下の内容である。活用方法が断片的知識に基づく自己流となっている。原価と利益の関係が客観的(自社において具体的)に説明できない。形式的には原価を把握しているが、見積時の価格戦略に活用できる情報になっていない。財務計算を会計事務所で行っているが、日常業務に活用する原価管理を行っていない。原価数値に誤差が多く、正しい原価実態を掴んでいない。決算処理スピードが遅い。(月次決算ではあるが結果判明が3ヶ月程度後)小規模企業(従業員20人以下)においては、原価に関する情報が感覚的に経営者又はキーパーソンの頭の中に入っている。などである。
 情報技術に関連する近年の経営環境変化の特徴は以下のとおりである。顧客の変化があげられる。情報化の進展により流行の変化が激しい。もの言う消費者や自己の主張を広めようとする消費者が出現した。そのツールになったのがインターネット掲示板、携帯電話による気軽な口コミである。インターネット販売の普及。電子商取引の普及と企業間取引の構造変化があげられる。多品種・少量・短納期・多頻度供給などができる体制の実現化や購買候補グループに参加することによる差別化である。こうした取り組みは企業間どうしのシステム化によるサプライチェーンマネジメントの構築が必要になってくる。経済のグローバル化があげられる。中小・零細企業でも国際化が本格化した。海外工場との品質、コスト、納期等での連携も当たり前になってきている。
 一方、情報技術の変化をみてみる。情報関連産業の裾野が拡大した。情報処理技術、通信技術の高度化と低価格化、初期の省人化投資から付加価値創造投資へ移った。単なる手作業の置き換えだけでなく企業活動の多方面への利用法提供がある。高速インターネットの進展や携帯電話市場、携帯通信分野が進展した。コンピュータハードの低価格化である。ソフトウェアの低価格化により利用環境が発展した。
 製造業の原価管理の仕組みは以下のとおりである。アウトプットに発生原価額、科目別・期間別・担当者別・工程別・設備別原価を得るために、インプットとして部材費、外注費、人件費の予定と実績(時間・情報粒度別)、製造装置稼働情報、管理目的、目標、上位方針がある。原価の評価指標として、予算達成度、直接作業時間率、機械稼働率、ネック工程稼働率、不適合率、集計(決算)納期達成率、原価率(低減又は維持)を用いる。その手順・方法は、人容規模(専任担当又は兼任)、計画方式・計算方式、ネック工程重点管理、各種是正方法、適用範囲、管理情報粒度・時間粒度・人為作業程度がある。
 このように原価管理のプロセスをしっかりと社内に構築することにより、IT活用が行えることになる。IT活用のメリットを活用することにより前述の原価管理活用状況の課題を解決することが可能になる。原価管理システムの構築は、単なる原価の把握のみならず今後の経営環境の変化に対応したコスト競争力、販売力強化へ活かすことが可能となる。

信州ビジネスコンサルタント協同組合理事
中小企業診断士・ITコーディネータ

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