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月刊中小企業レポート
更新日:2008/09/20

知財あれこれ

紙製手提げ袋を商品としてA商標の登録をとっても、
袋の中の商品の商標Aを押さえることはできない。

綿貫国際特許・商標事務所
弁理士 綿貫 隆夫

 観光地のシンボルとして「ピンピン様」が有名なので、観光土産として「ピンピン様」という商標を菓子、野菜、果実飲料、日本酒、豆など多分類に亘る商品に登録しないで、紙製の手提げ袋に対する「ピンピン様( 図+文字)」という商標1 件だけの登録で間に合わせようとした。
 しかし菓子の包装箱に「ピンピン様」という商標を付け、これを上記紙製の手提げ袋に入れて販売している人に、紙製の手提げ袋の商標権の侵害ということは出来ない。商標が同じでも商品が、片や紙製の手提げ袋、片や菓子であるから商品が非類似で権利侵害にはならない。包装袋について「ピンピン様」の登録を取っている人は、包装袋を扱う業者として、包装袋自体を商品として販売する場合、自他商品を区別するために商標を付けるのである。結局菓子に「ピンピン様」の商標登録を取らなければ他人が菓子に「ピンピン様」の商標を使用することを阻止できないことになる。菓子、野菜、果実飲料、日本酒、豆のそれぞれの商品の分類ごとに「ピンピン様」の商標を登録するほかない。
 松本、安曇野地方で有名な道祖神についても、かつて紙製手提げ袋について「道祖神」という商標を登録した人がいた。お土産店を回り「道祖神」の図柄の記載のある紙製手提げ袋を使用していることを理由に使用料を要求した。お土産業界で騒ぎになり新聞のニュースにもなった。これを見た別の人がやはり包装袋に「松本城( 図+文字)」の商標登録を持っているとして松本市のお土産店へ現れた。結局、紙製手提げ袋は中に入れる商品のための包装袋である。
二人の登録商標はこの包装袋自体の取引の際、自他商品を区別するために使用するものである。特に観光土産を入れる手提げ袋の場合は、観光客にとっては手提げ袋に付加価値をつけるためのデザインとして使われていると認識される場合が多いから、袋の商標の使用とはいえないと説明した。それぞれの紙製手提げ袋の商標権者は納得して帰って行った。
 「巨峰」という葡萄がある。ある人が、ダンボールの包装箱について「巨峰」という登録商標をもっていた。ぶどう巨峰用のパッケージを売っているライバルがいた。パッケージの中央にぶどう巨峰の写真と巨峰という文字が表示されており、側面の枠の中に巨峰の文字とNET(g)などが記載されている。商標権者がこのライバルに商標権の侵害を主張した。しかし裁判所は、このパッケージの記載を取引者や需要者が見たとき、巨峰の写真と文字は包装箱の中身の商品「巨峰」を示すもの、側面の記載も包装箱の中身の商品の種類とNET( g ) などの内容を示すものであると認識し、ダンボールの包装箱の出所を示すために付したものとは考えられないから、ダンボールの包装箱の登録商標の使用と言えず商標権の侵害とは認めないとした。

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