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月刊中小企業レポート
更新日:2008/09/20

イノベーション

方針浸透と目標設定で
強固な組織に

 経営者にとって悩みの1つは、従業員がなかなか期待通りの成長をしてくれないということではないでしょうか?まんべんなくどの企業でもお聞きする話題です。
 今のこの消費不況の世の中、何でも売れる訳でなく、良い商品、良いサービスを提供できる企業しか選ばれない時代が来ています。
 では、良い商品、良いサービスはいかにして生まれるのでしょうか?
 企業が人によって動いている以上、従業員の質を高めることが重要な要素ではないでしょうか?人が会社を辞めないで、能力、ノウハウ、技術等を蓄積し、還元していく終身雇用が当たり前でなくなり、働く場所の流動性が激しくなってきている時代環境の中、いかに従業員が定着していく組織をつくったら良いのでしょうか?
 人が会社を辞める要因は何でしょうか?

人が会社を辞める最も大きな要因が方針・価値観(考え方)の相違であると、かのGE元会長、CEOのジャック・ウェルチ氏は言っています。

京セラ会長稲盛和夫氏は、
 「人生・仕事の結果」=「考え方」×「熱意」×「能力」
 「能 力」:
才能、知能、先天的な資質
 「熱 意」:
事をなそうとする情熱や努力するこころ
自分でコントロールできる後天的要素
 「考え方」:
こころのあり方、生きる姿勢、哲学、思想、理念
 「人生・仕事の結果」は、「考え方」、「熱意」、「能力」の掛け算であると言っています。ここでも「考え方」について触れられているのですが、いかに能力があろうとも、企業と考え方が合わない(=マイナス)ならば、マイナスを増幅させるだけという結果になります。
 特に中小企業においては大企業に比べ、企業ブランドがある訳でないですし、従業員にとって経営者はより身近な存在です。その意味でも、経営者は従業員と、より方針・考え方・価値観の共有することが必要なのではないでしょうか?
最近のあるメンタルヘルス協会の研究の結果で、
 「やる気」=「価値」×「期待」という考えがあります。
 「価値」:
取り組むに値する行為だと認識する(価値を明確にする)
何のためかを明確にする
あるべき姿を描く

 「期待」:
成功可能性があること
その可能性を感じられること(実現可能性)
自分にもできると思わせること
達成に向けた道筋と手順を示すこと
 最近の若い人に多いようですが、自分にとって価値があると感じる納得感が持てないと動けない傾向が強くなってきているそうです。また「期待」とは自分が行うことに対する期待感のことで、達成への道筋が見えると期待感が増すとのことです。
 つまり、行うことの意味・目的を明確にし、達成に向けてのストーリー、シナリオづくりをきちんと行う(目標設定、計画作成)と、人のやる気は増すということです。
ここで注意すべきは、この「やる気」も、「価値」と「期待」の掛け算であるということです。たとえばこのどちらかが欠ければ(ゼロならば)、やる気もゼロになってしまうということです。
 以上を振り返ってみますと、従業員と企業経営者の中でまずできることは、方針・価値観を明確に示し浸透させ、目標設定を行い、それをP(計画)→D(実行)→C(チェック)サイクルで回していくことではないでしょうか?
 実際、長野県内の、ある中小企業は、経営者が方針の浸透に力を入れ、目標設定を行い、PDCサイクルを回し、成果を上げています。この動きに力を入れ始めた結果、経営者の考えが従業員に浸透し、一体感が生まれ、自ら考えて動き、今まで高かった離職率も低下しています。また、同業他社売上高が前年割れが当たり前の中、毎年10%程度売上を伸ばし続けています。
 ではいかにして社長の考え・方針を浸透させたのでしょうか?社長が考えたことを小さな冊子にし、従業員1人1人に1冊ずつ常備させ、常に振り返る。また日々の勉強会や朝礼で、その考え方の意味を伝え続けました。リッツカールトンのクレドは有名ですが、まさにこの会社の、この社長のこころの部分、考え方を従業員に伝え続けているのです。
 朝礼等で社訓や社是、経営理念を復唱する企業は多いと思いますが、ただ復唱しているだけで、果たしてその本当の意味を理解して復唱しているでしょうか?
 ある会社では考え方を浸透させるとともに、会社全体・各事業部・各人の目標設定も明確に行い、日々・月次・1年とその結果を振り返り、PDCサイクルを回し続けています。そして各人・各事業部・会社全体の成果が、各人に還元される仕組みになっています。全体の成果が上がった上での自分の成果配分のため、自分だけが頑張っても還元はほぼありません。必然的に、皆が協力しあい、回していく組織になっているのです。
 P(計画)→D(実行)→C(チェック)サイクルを回すといいますが、本当に常に実践し続けているでしょうか?計画を作ったが実行していない、実行したが振り返っていない。よく聞く話です。
 何か変わったことをしているのではなく、誰もが当たり前に知っていることを当たり前にやり続けている企業は、結果を残しています。
 差別化商品の開発に力を注ぐことは勿論なのですが、それと同様に、今一度価値観の共有、従業員の目標設定の共有から始めてはいかがでしょうか?

※本文は、松本市巾上の税理士法人成迫会計事務所で執筆していただいたものを掲載いたしました。

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