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月刊中小企業レポート
更新日:2008/7/20

知財あれこれ

登録されない商標の出願は、
お金の無駄遣い

綿貫国際特許・商標事務所
弁理士 綿貫 隆夫

 Aさんは、家伝の商品(野沢菜の漬物)に「元祖野沢菜漬け」という商標を付けて販売してきた。最初に販売を始めたAさんは商標登録出願をした。しかし特許庁は、「元祖」はそれぞれの立場で誰でも使用する語であり、「野沢菜」は一定の野菜の普通名称であり、「漬け」は「漬物」を表しているから、これらの語を結合しても自分の商品と他人の商品を識別することは出来ないとして拒絶した。この種の商標は、自分が勝手に使用する分には問題ないが、独占して他人の使用を抑えるのは適当でないとして登録されない。Aさんの出願は費用の無駄になった。
 普通名称(りんご、温泉など)、慣用商標(観光ホテルなど)、産地、販売地、品質、用途、形状などに関する語、ありふれた氏または名称(鈴木、山田など)、(ローマ字2文字、○、△、□、☆、・など)、その他、誰かの商品・サービスの表示であると認識できないものなど初めから商標としての機能を認められない(独占不適応な)ものは無数にある。独りよがりで出願しても拒絶される。ボーダーのところで判断に迷うような標章は、経験豊かな弁理士の判断でかなりの精度になる。
 そのほか、わが国や外国の国旗、国連や赤十字のマークと同一または紛らわしいものや公序良俗に反する商標など国家的立場から見て登録するのに問題がある商標は登録しない
 法律上あらかじめ登録にならない商標は、出願前に登録商標の調査をしても見つからない。シメタと思って出願しても印紙代12,000円は無駄になる。(当然、その商標を使用しても権利侵害の問題は起きない)
 自他商品識別力のある商標(登録可能性のある商標)で特に不登録事由に該当しない商標は(商標、商品)の組み合わせで出願した場合、特許庁に(商標が同一・類似、商品が同一・類似)の組み合わせで登録が存在すれば、出願は拒絶される。たとえば「大地の恵」という商標を商品(野菜)について出願した場合、「地のめぐみ」なる商標が商品(わさび)に既に登録されていれば、拒絶になる可能性がある。
 出願したい商標と同一類似の関係(商品も含めて)にある登録商標の調査は絶対にしなければならない。他人の登録商標が見つかった場合は出願しても登録されないだけでなく、使用も出来ないことがわかる。特に市場では見当たらなかったが、実はドンピシャの登録商標があった場合などは使用者は大変苦しむことになる。
 商標調査は特許庁のHPのIPDL(電子図書館)やパトリスで行える。しかし商品・サービスのクラスや類似の関係は分かりにくく、商標の類似の判断も困難。大切な商標は、経験豊かな弁理士の調査と判断に委ねたほうが安心である。登録になるものと信じて使用を継続していたり、間違って本命でないところで登録されても大変危険だ。ご用心。

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