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月刊中小企業レポート
更新日:2008/07/20

イノベーション

特許を使って事業拡大!!

 最近、新聞等で特許に関する記事を目にする機会が多くあります。他社の特許を使って新事業を立ち上げようといった内容や、特許の申請から承認までの期間が短くなるといったものをよく目にします。その背景には、年間10万件以上登録される特許のうち、その大半は事業で活用されること無く休眠状態となっている実態があり、国としてもそれらの特許を活用し、企業を発展させていきたいという思いが伺えます。
 休眠特許のほとんどは大手企業が保有しているもので、これらの中には私たち中小企業にとってお宝となるものもたくさんあります。最近ではこれらの大手企業が手放した特許を活用し、自社の新規事業の確立に利用している企業もあります。

●導入事例
(1)
(株)ミスズ工業(長野県諏訪市)
 セイコーエプソン(株)の休眠特許を約20件活用して、実験動物の体内に薬液を送り込む、マイクロポンプを開発し、医療機器事業の拡大に役立てている。
(2)
しのはらプレスサービス(株)(千葉県船橋市)
 マツダ(株)の修理技術の特許を活用し、年商をこの10年で約2倍の24億円に伸ばしている。
(3)
(有)創健舎(三重県)
 特許技術を用いての起業を考え、何か良いアイディアが無いか探していた。「特許流通アドバイザー」に相談し、保冷効果を高くする特許を持っている企業を紹介してもらった。そのノウハウを利用して冷却まくらを製品化した。
(1)、(2)は4月30日の日経新聞に掲載。(3)は独立行政法人工業所有権情報・研修館の冊子に掲載。

●休眠特許はどうやって探すの?

 休眠状態にある特許をデータベース化し、インターネット等で仲介しているサイトがあり、誰でも気軽に休眠特許の検索をすることが出来ます。
  独立行政法人工業所有権情報・研修館の運営する、「特許流通データベース」(http://www.ryutu.inpit.go.jp/db/)では他社へ提供する意志のある特許を集めて掲載しており、無料で検索・閲覧することが出来ます。使いたい特許が見つかれば提供者と直接交渉することも出来ます。また、導入しても効果があるのか不安な方や、アイディアは持っているけど、どうやって製品化すれば良いのか悩んでおられる方は、特許流通アドバイザーに無料で相談することも可能です。

●支援措置はあるの?

(1)
異分野連携新事業分野開拓
 通称、「新連携」と呼ばれ、2社以上の中小企業が連携してノウハウや技術等の「強み」を持ち寄り、新たな事業活動を行うことを支援する、経済産業省が提供する制度です。承認を受ければ事業化に必要な補助金を受けることや、商社等の実務経験者や経営コンサルタントからマーケティング戦略面での支援も受けることが出来ます。
(2)
新事業活動促進法
 休眠特許を利用し、新たな事業を始める場合に適用を受けることが出来ます。この制度は、中小企業の新たな事業活動を促進するために定められた県が運営する法律です。経営革新計画を作成して県へ提出し、それが承認されると設備投資に掛かった費用の7%の税額控除や、国民生活金融公庫などの政府系金融機関から低金利で融資を受けることが可能になります。また、県のお墨付きがあるというブランド力もあります。
(3)
試験研究費の税額控除
 休眠特許を取得し、その技術を応用し製品化する場合に、その製品化に掛かった費用(人件費や材料費など)を試験研究費として計上し法人税額から一定額を控除することができます。また、今年の税制改正では、税額控除額の拡充が行われました。
 新事業の立ち上げというのはリスクが伴い、なかなか踏み出しにくいものです。しかし、私たち中小企業でも実際に休眠特許を利用し、新事業の確立に成功している事例もあります。
 自社にとって相乗効果の期待できる技術やアイディアがないか、探してみるだけでも価値があると思いますので、休眠特許の活用をご検討されてみてはいかがでしょうか?

※本文は、松本市巾上の税理士法人成迫会計事務所で執筆していただいたものを掲載いたしました。

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