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月刊中小企業レポート
更新日:2008/06/20

ビジネスの視点

お客様が選ぶ商品を創る
~マーケティング志向の経営(2)~

開成経営学院理事長
滝澤 恵一

 マーケティングではターゲットという言葉を使います。自社の商品を買っていただきたいお客様のことですが、「企業側からみた」ターゲットを意味しています。しかし、ものがあふれ、さまざまな類似の商品が市場にあふれている現在では、ターゲットの意味が変わってきています。
 それは、お客様が企業を選び、お客様が商品を選ぶということです。企業が狙うターゲットではなく、逆に、お客様が、さまざまな企業のさまざまな商品からターゲットとして選ぶのです。ですから、自社が選ばれるような商品を開発、仕入れをし、プロモーションをすることです。
 では、商品とは何でしょうか。お客様の視点から商品を考えると、商品の核となるものは、お客様にとっての効用(便益性や問題を解決する機能、欲求を満たしてくれるもの)です。この核は商品テーマ(あるいはコンセプト)と呼びますが、お客様は商品そのものを買っているのではなく、商品を買うことによって得られる便益性や問題を解決する機能、欲求を満たしてくれる機能を買っているのです。
 たとえば、パソコン。お客様にとっては、パソコンを買って活用することが目的であり、表計算、ワープロ、eメール、インターネット検索など、さまざまな機能を使って仕事や生活に活かすことです。パソコンそのものではなく、パソコンが提供しているさまざまな機能を買っているのです。
 今、自社で販売している商品やサービス、今、自社で製造している製品についてお客様の視点からどのような効用があるのだろうと見直してみると、これまでとは異なった発想の商品開発、仕入れができます。
 この核であるテーマを商品として表現するには、テーマにかなった品質、効能、デザイン、仕様などといった本質的機能を明確にして具体化することです。特に、現在では、商品のネーミングやロゴ、パッケージのデザインといった感性的なものを表現することが求められています。類似のものがあふれている市場ですので、品質、性能などには明らかな差がないからです。さらに、これらに配送やコンサルティングといったソフト化された付随的な要素を加えることもできます。ものをつくるのではなく、お客様が望んでいるどのような効用を満たすのかを考えてみることが大切です。
 ところで、お客様に選んでいただくには、商品のさまざまな要素の中に情報を入れることが必要です。マーケティングにおいては、物理的効用についての情報と意味的効用についての情報をどのように商品の中に入れるのか、プロモーションで印象付けるのかが必要になってきます。
 物理的効用とは、技術によって創られ、苦痛の軽減や作業の効率化を生み出すものであり、品質や性能などです。意味的効用とは、精神的な満足や安定につながるような価値を与えてくれるものです。価値は不変ではなく、その人の置かれている、あるいは生きてきた環境や体験などから創られます。さらに、学習したことにより得られる知識から創られます。
 企業にとっては、自社の商品の効用を認識してもらうことが、まず、求められます。認識していただくことにおいては、物理的効用に重きを置くお客様もいれば、意味的効用に重きを置くお客様もいます。自社の商品にとってどちらに重点を置くのか、どのように知らせるのかを検討してみることが大切です。

信州ビジネスコンサルタント協同組合理事長
               中小企業診断士

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