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月刊中小企業レポート
更新日:2008/05/20

健康を考える

親しらずの抜歯は怖いですか?

健康を考える 今年4月20日付け信濃毎日新聞に「親しらずの抜歯には個人差」という記事がありましたが、お読みになられた方もいらっしゃることでしょう。今回はその記事に紹介しきれなかったと思われる内容についてご説明したいと思います。
 さて、そもそも親しらずは必ず抜かなければいけないのでしょうか?いえいえそんなことはありません。親しらずの状況に応じて判断します。完全に骨の中に埋まっていて、1本手前の歯の歯周ポケットと親しらずが全く交通していない場合、抜歯する必要がないと考えられます。一部交通している場合でも歯周病コントロールがよく、親しらずが悪い影響を与えていなければ抜歯の必要はありません。ただその時点では悪い影響を与えていなくても、歯周病の進行と共に影響を与えるようになっていくことがあり注意が必要です。ですから親しらずの抜歯が必要になってくるかどうかの判断には、歯周病の定期的なチェックが欠かせないということになります。

親しらずを抜くと腫れる?

 上顎にしろ下顎にしろ、埋まっている歯を抜歯するときは、歯肉の切開や骨の削除が必要な場合が考えられますので、腫れる可能性が高くなります。しかし腫れ方はその人の体質や体調、親しらずの埋まっている状況によって違ってきますので、一概に皆さんが噂で聞くように「すごく腫れて痛かった」となるとはかぎりません。どの程度が予想されるか、担当の先生の説明をよく聞いてください。また、きちっと生えている歯で特に上顎の親しらずの場合、抜歯はほんの数分間で済みます。非常に簡単な事が多いのに不正確な情報から過剰に怖がっている方も多くいらっしゃいます。その場合、全く腫れないのが普通です。

親しらずの抜歯によって神経が傷ついて
麻痺が出ることがある?

上顎の親しらずの抜歯では、神経損傷は通常おこりません。下顎の場合、特に深く横に寝転んだように骨の中に埋まっている親しらずの抜歯では起こる可能性があります。しかしその場合も頻度は高くなく、通常のX線検査で危険性が高いと判断された場合CTレントゲン撮影を行い、下顎神経と親しらずとの関係を立体的に調べ可能な限り安全に抜歯を行うことが最近ではできるようになっていますので、CTが開発される以前に比べ、神経損傷の危険性はずいぶん少なくなっているものと考えられます。ただし、舌神経麻痺はCTでも位置関係を確認することができない為、細心の注意を払っても起こってしまうことがあります。しかし、舌神経麻痺の頻度は非常に少なく、例えば当院の場合約1,000本の親しらずの抜歯で1度起こった経験があるだけです。
 そうは言っても親しらずの抜歯の中には、相当に危険なものもあります。抜歯によって発生するかもしれない合併症による不利益とその確率と、抜歯しなかった場合に起こりえる不利益との説明を十分に受け、その2つを天秤にかけて判断する必要があるでしょう。わずかな可能性しかない危険性を恐れるあまり長期間放置し、親しらずのみならずもう1本手前の歯までだめにしてしまわないようにしていただきたいと思います。抜歯経験豊富な担当医と十分に検討された上で判断されることをおすすめします。

長野県保険医協同組合
理事 小塚 一芳
(茅野市 たんぽぽ歯科クリニック代表)

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