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月刊中小企業レポート
更新日:2008/04/20

イノベーション

社会を生き抜く力、情報編集力

 少子化のみならず子供の学力低下が問題視されているからでしょうか?今年の1月1日の日本経済新聞一面に、藤原和博氏の情報編集力の大切さが掲載されていました。
 藤原氏は、初めての民間(㈱リクルート)出身で国公立中学の校長になった著名人で、ゲーム手法を取り入れた総合的な学習『よのなか』の提唱で学校教育に大きな影響を与えています。藤原氏の考え方は、教育とは子供が自立し社会に貢献することで、信用を得られる人物となるために支援していく事であり、この自立と貢献が出来る人間になるためには、情報処理力だけでなく、情報編集力がとても大切になると述べています。情報処理力が入試突破力とか知識に置き換えるとしたら、情報編集力は、答えの無い社会を生き抜く力なのだそうです。
 子供の学力低下問題にでてくるOECD(経済協力開発機構)のPISA(The Programme for International Student Assessmentの略。学習到達度調査訳)の2006年調査で日本は2位から6位に低下しました。もっとも『科学知識と日常生活におけるその応用力』を注目するポイントとして決めているので、低く評価されているという意見も多いですが、この応用力こそ、まさに情報編集力や知恵に該当するのではと感じています。
 この応用力に弱さは、大人社会の在り方と裏表の関係にあるようにも感じています。仕事は指示がある事、決まった事しかやらない。しいては、指示された事も出来ない大人が増えてしまう。子供時代の教育の在り方にあるとも言えますし、目的に答えの無い世界で、自ら考え家族や会社、地域社会をどんどん変革していく意欲と思考を持った人物の少ない大人社会が、現在の子供の学力低下問題の根本原因とも言えるのかなと感じます。ですから、自分の率いる会社などの組織を一人一人が自立し貢献することを思考できる組織にすることはスタッフのみならず子供達や地域社会に対しても大きな貢献になると言えるのかなと感じました。
 では、どうしたら自立し貢献する人間になるための資質、情報編集力を高める事ができるのでしょうか。明治大学の斎藤教授(『声に出して読みたい日本語』の著者として有名)によりますと、出来る人は『まねる力』『段取る力』『説明する力』の三拍子が揃っている人が「できる人」だと定義しています。
 藤原氏の情報編集力と重ねますと『まねる力』は、『ロールプレイングする力』と『シミュレーションする力』に、『段取る力』は『ロジックする力』と『コミュニケーションする力』に、『説明する力』は『プレゼンテーションする力』に対応すると述べています。斎藤教授の三拍子、藤原氏の5つの力は、リーダーとしての資質とも言えると思います。
 すべての産業がサービス業化しています。年頭の挨拶でも「これからの○○業は、サービス業でないと勝ち残っていけない」というフレーズが多かったように感じています。画一的に生産出来るモノはどうしても中国などに移行していきますし、モノやサービスが売れない国内においては、絶対的な答えの無い対応を求められるサービス業としての思考がますます必要になり、これは応用力とも情報編集力とも言えます。
 映画化もされた高杉良氏の『不撓不屈』(新潮社)の主人公であり国とはじめて対等に渡り合った税理士飯塚毅先生(上場会社㈱TKCの創業者でもある)によると、どんな組織でもトップに立つ人に一番必要な資質は、先見力や洞察力だと述べられています。斎藤教授の『段取る力』に近いとも言えると思います。
 いずれにせよ、自分自身の率いる組織の成長と発展をデザインし、リーダーシップを発揮する事が情報編集力を高める近道であり、社会貢献にも繋がるため今年の大きなテーマにすべきだと感じる今日この頃です。

マップで「考える力」を引き出す

  冒頭で弊社代表が「情報編集力」についてご紹介しましたが、昨今のインターネットの発達により、検索サイトを使えば、誰でも瞬時に大量の情報を手に入れることが可能になりました。反面、溢れる情報の中から必要なものを選び出し、最大限に活用する情報編集の能力が求められています。『地頭力(じあたまりょく)を鍛える(東洋経済新報社)」の著者・細谷功氏は『「考える力」の有無による二極化の時代がやってきており、そこでは「自分の力で考え抜いて」新しい知識を生み出せる能力(地頭力)を備えた人間が必要となる』と述べています。
 そんな中、「考える力」を引き出す思考ツールとして注目されているのが脳と学習の分野の世界的権威トニー・ブザン氏が考案した「マインドマップ(R)」です。
 弊社でも昨年、トニー・ブザン氏マインドマップ(R)公認インストラクターである城村英志氏による講習を受けました。城村氏の描かれたマインドマップを拝見し、それまで箇条書きのノート術に慣れ親しんだ私たちは、そのカラフルさや見た目の独特さに衝撃を受けました。
 マップは紙の中心にイメージを描き、そこから放射状に枝を張り巡らせて、重要な単語やイメージをつなげていくのが特徴です。この「放射状」というのが脳の仕組み則しているそうで、脳への負担が少ない思考ツールといえます。さらにカラフルな色を使い、絵なども書き入れることも、記憶力を高めるうえで効果があるそうです。 「ザ・マインドマップ(R)」の日本語訳にあたった神田昌典氏は、従来の箇条書きのノート術に比べて、マップは1枚の紙に大量の情報が記録できる、いい企画が出てくる、内容が記憶に残りやすい、話し下手でも話しがしやすくなるといったメリットを挙げています。
 マインドマップは新しいノート術として、また思考のツールとして注目されており、ウォルト・ディズニーやGE、ボーイングといった企業をはじめ、韓国では義務教育課程にも取り入れられているそうです。
 弊社でも講習を受けて以降、ノート術、アイデア整理、問題解決や会議の進行など、業務の中にマップが取り入れられる場面が増えてきました。
 なかでもミーティングやセミナーの「ノート」としてこのマップが活用されることが多いようです。従来の箇条書きのノート術に比べ、枝を広げ関連するキーワードや絵を書き込むだけのため、負担が少ないということもありますが、話の全体像や流れを「理解しやすい」という実感が、ノートをとることを「楽しい」ことに変えているのかもしれません。
 また、新しい企画・アイデアを考える場面において、自分自身あるいは参加者の「考える」意欲を掻き立てるのに、マップは有効でもないでしょうか。
 アイデアを練る上でマップは、中心的なテーマから連想的にアイデアを拡散すると同時に、アイデアを整理し編集することにも優れているので活用のし甲斐があります。「アイデアは出るのだけれども、それをまとめるとなると途方にくれてしまう」という方は是非マップを書いてみてはいかがでしょう?

 さらに会議など複数人が集う場所でマップを活用するのも面白いのではないでしょうか。
 弊社でも実際に「(税務申告の)電子申告化への対応」を実現していく過程でマップを活用しました。暗中模索の取り組みで、解決すべき多くの課題に突き当たりましたが、その都度マップを活用することで、効率的にプロジェクトを進める助けとなりました。
 マップを活用していく中で感じた利点としては、出席者が会議の目的・全体像を理解しやすいのでスムーズに進められる、課題に関連した意見が出やすい、議事録として(デジタルカメラで撮影して保存するか、マップ作成ソフトを利用する)あとで見返したときに思い出しやすい、目に見えなかった課題が明確になったなどありますが、何よりもマップに参加者の意見が書き込まれ、考えが共有されていく過程は、チームのコミュニケーションを活発にし、一体感を増していくことにも力を発揮したように感じます。
 漠然としたアイデアを形にしたり、あるいはコミュニケーションの道具として自分の考えを表現したり、相手の考えを理解することができれば、「考える」ことはより楽しいものになるでしょう。個人と組織の「考える意欲」を引き出す新しい思考ツールとして、マップを活用されてみてはいかがでしょう。

役員さんは特別扱い!?知らないと損する労災保険

 最近、建設業者の労災事故の話を耳にする機会が増えました。中には、業務中の事故であっても労災が使えないケースもあり、そのことに気づくのは事故が起こった後がほとんどです。
 そもそも労災はすべての「労働者」は適用されますが、適用されない人もいます。それは、社長さんです。さらに役員や家族従事者も原則として適用されません。また事故が起こってから遡って加入することもできません。
 社長さんのように労災保険が使えない場合、健康保険で治療できると思いがちですが、健康保険は業務外の病気・ケガを補償するものですので、業務中の事故には使えません。つまり、全額自己負担で治療する事になってしまいます。
 しかし、社長・役員の方が労働者と同じ仕事をする企業が多いのも現実です。そんな方々の治療費を補償する制度が労災保険特別加入制度です。

~労災保険特別加入制度の要件~

  1. 労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託すること。
  2. 以下の条件に該当する事業主、もしくは一人親方、その他の自営業者であること。
  • 事業主の方
    事業主の方
  • 一人親方、その他の自営業者
    労働者を使用しないで事業を行う方が該当します。
    例:大工、個人タクシー業者など

~給付額と年間コスト~

 労災保険料は、通常、年間賃金総額に労働保険料率を乗じて求めます。
 しかし、特別加入者は労働者と違って賃金というものがないので、これにかわって給付基礎日額を計算に用います。
 給付基礎日額は特別加入を行う方の所得水準に見合った適正な額(3,500円~20,000円の間)を労働局に申請します。
 年間の支払保険料は次のように計算します。

(※労災保険料率は業種によって変わります。下記例は建設業の舗装工事業の労災保険料率を使用しています。)


(例)
給付基礎日額×日数×※労災保険料率= 支払保険料
10,000円×365日×1000分の14=51,100円


上記の例で、仮に30日間休業した場合には、
給付基礎日額10,000円×30日間×80%=240,000円
の休業給付金が受け取れます。
 建設業の労災は現場ごとに元請けの会社が労災保険の手続きをしますが、下請け業者の社長さんや一人親方は、特別加入をしていないと労災の適用となりません。一人親方の方が特別加入していなかったために、労災保険を使うことができないといった事例もあります。元請業者や下請業者は個人事業の大工さんが特別加入をしているか気に掛けてあげることも大切です。未加入の方がいた場合には、加入をおすすめ下さい。
 中小企業の社長さんは現場に出ることが多く、業務中は危険と隣り合わせです。労災は一般の医療保険など比べて補償期間が長いというメリットがあります。万が一に備えて、未加入の方は是非この機会に加入を検討してみて下さい。

※本文は、松本市巾上の税理士法人成迫会計事務所で執筆していただいたものを掲載いたしました。

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