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月刊中小企業レポート
更新日:2008/3/20

特集1 コミュニティカードで地域商店街活性化へ

~中央会支援事業から~

コミュニティカードで地域商店街活性化へ

 「ポイントカードはお持ちですか」。大手スーパーや量販店などチェーン店のレジでは、利用金額によってポイントが貯まるポイントカード利用を促すセールストークをよく耳にする。
 駒ヶ根市・飯島町・中川村および伊那市の個人商店などでも最近、これをたずねられる機会が増えている。駒ヶ根市などの「つれてって」(つれてってカード協同組合)と、伊那市の「い~なちゃんカード」(伊那市コミュニティカード協同組合)の加盟店だ。
 両カードは今年2月提携。買い物100円ごとに1ポイント(1円相当)貯まるポイント機能を、1枚のカードでどちらの加盟店でも利用できるようになった。地域商店街カードの提携は全国でも珍しいという。
 南信地域はもともと商店街のスタンプ事業が盛ん。事業に関する相談も多く寄せられていた経緯から中央会南信事務所では平成2年「南信地区スタンプ運営研究会」をスタート。商店街プリペイドカード事業に関する研究会を随時開き、各商店街のカード化への取り組みを支援してきた。
 本特集では、南信地区スタンプ運営研究会の活動と、長野県における商店街カード(コミュニティカード)の先進的取り組みである「つれてって」と「い~なちゃんカード」の提携について紹介する。

積極的なカード事業支援をめざして。南信地区スタンプ運営研究会の取り組み

 「商店街スタンプは今後、シールを台紙に貼ったりスタンプを押すというスタイルから、カード化されるだろうという方向性が見えていた。しかも、100円で1ポイントというようなシステムはどの商店街もほとんど同じ。ならば各商店街共通のテーマとして研究をしていこうと」。柳沢道夫中央会南信事務所長は、南信地区スタンプ運営研究会を立ち上げた経緯をそう話す。
 南信は昔からスタンプ事業が活発な地域だ。岡谷スタンプ(協)はピーク時、ローカルスタンプとして日本一の売上げを誇ったこともあるという。
 同研究会は中央会南信事務所が呼びかけ、南信地域でスタンプ事業を展開している組合や商店街のほか、専門家などが参加。諏訪、伊那、飯田など地区ごとに随時開き、全国の先進事例や最新情報の提供を行ってきた。会に参加している辰野ほたるシール(協)が平成4年スタンプ事業としては県下初のポイントカード「ほたるマイカード」を導入すると、参加メンバーのカード導入事例研究なども行うようになった。
 研究テーマも当初のプリペイドカードから、ポイントカード、コミュニティカードと進展。カード化への理解を深めるとともに、連携支援事業補助金を活用し先進地視察も積極的に行うなど、つねにカード事業の新たな可能性を探りながら支援を行っている。
 平成19年8月現在、南信地域でスタンプ・カード事業を行っている組合は、伊那市コミュニティカード(協)、つれてってカード(協)、岡谷スタンプ(協)、(協)諏訪サービスシール、茅野シール(協)、(事協)下諏訪商連、辰野ほたるシール(協)、マーくんカード事業(協)の8組合。
 それぞれ種類は異なるが、そのほとんどがカード化。市営の駐車場、温泉施設、税金等の支払いのほか、病院の支払いもポイントカードでできるなど、それぞれ地域住民にとって使いやすいカード機能を工夫している。

利便性を高め地域活性化をめざして。全国が注目する提携が実現

利便性を高め地域活性化をめざして。全国が注目する提携が実現 平成8年に相次いでICカード化した「つれてって」と「い~なちゃんカード」。それぞれ地域の信用金庫との提携をはじめ、ポイント、プリペイドなど多彩な機能を持ったカードとして独自の展開を進めていた。
 両組合は1年以上の準備期間を経て、平成20年1月に提携にこぎつけた。中央会南信事務所も積極的に支援した両組合の連携だが、その理由はどこにあったのだろうか。
 そのひとつは、運営システムは異なっていたがICカードを使ったコミュニティカードでは共通し、どちらも平成19年に老朽化したシステムの更新時期を迎えていたこと。そしてもうひとつには、より広域で使えるカードにすることで利用者の利便性をさらに高めること。それにより両地域商店街の活性化を図るというねらいがあった。
 新たなシステ構築に関しては「い~なちゃんカード」が先行し、NTTデータ信越(長野市)のASPを採用した。それを受けて「つれてって」も、同じシステムを使えばお互いにランニングコストの大幅削減になり、カード自体の汎用性も高くなると相乗りを決めた。
 「つれてって」は平成9年飯島スタンプ(飯島町)、平成10年中川スタンプ(中川村)とそれぞれ合併し、近隣3市町村にまたがる稀有な広域カードとして全国的に知られる存在。早くから広域カード化をめざしていただけに、今回もまず提携ありきといった感だった。
 利用者にとっては限られた地域よりも、より広い地域で利用できる方が使い勝手が良いのは当然。商店街も利用者の利便性が高まり積極的に使ってもらえれば、活性化に大きな効果が期待できる。どちらの側にもメリットは大きい。
 提携にあたって以前の多機能型から、ポイントとプリペイドを中心とするシンプルな機能にしたのも、利用者、加盟店双方にとってその方が使いやすいことが分かったからだ。
 そんな両者の思惑が一致し、全国の商店街、行政が注目するコミュニティカードの提携が実現したのである。

手間がかからず、ランニングコストも低く抑えられるASP

 さて、今回導入したASP(アプリケーションサービスプロバイダ)とはどういうものかというと。
 ASP事業者(NTTデータ信越)が管理するデータセンター内に設置されたサーバー上でアプリケーションを実行することによって提供されるシステムで、以下のようなメリットがある。
 ①コストが安い Webブラウザがあればソフトウェアを利用でき、月ごとに利用料を支払うだけで特別なハードやソフトを購入する必要がない。
 ②運用管理作業を一任できる サーバーなどの保守、ソフトウェアのバージョンアップ、カードの機能追加といったシステムの運営管理はすべてASP事業者が行う。組合内に担当要員をおく必要がない。
 ③導入が簡単で迅速 一般的に数日から数週間、複雑なカスタマイズなどがある場合でも2~3カ月でサービスを利用することができる。
 カードを運営する側にとっては、カードにかかるコストはできる限り抑えたい、というのが本音。独自サーバーを持つ必要がなく、手間もかからず、ランニングコストも低く抑えられるASPは、両組合も最適と判断し導入を決めた。
 コミュニティカードはまさに地域商店街活性化の切り札。両組合とも組合、加盟店が一丸となって利用推進に取り組んでいる。
 「い~なちゃんカード」との連携で、地域からは「行政の壁を越えてよくやった」という喜びの声を多くいただいています。我々としても、ようやく消費者意識に立ったカードができたのかなと喜んでいます。

手間がかからず、ランニングコストも低く抑えられるASP

カードはお客様と密につながるためのツール。

つれてってカード協同組合 矢澤哲也理事長

 4月からは「エコポイント」もスタートします。これはレジ袋不要や太陽光発電で売電した代金、さらに環境美化や資源節約などの活動をポイント化し、行政の予算を原資として還元していくもの。住民基本台帳カードがそのまま使えることもあり、行政も本気で普及に力を入れています。
 商店にとってカードのメリットは、利用してもらうことで顧客のデータベースが簡単にできること。それを活かして個店が売り出しの告知や、「今度の新製品は何ポイントで買えます」といった販促活動に積極的に活用し、固定客づくりに役立ててほしい。カードはお客様と密につながるためのツールなのです。
 加盟店、消費者はもとより行政の期待も大きいコミュニティカードですが、大事なことはいかに活用していくか。それだけに加盟店には、お客様へのカード利用促進を積極的に働きかけるよう申し合わせています。

◎「つれてって」

  • 発行枚数 約1万4,500枚
  • 利用可能店数 158店舗(小売店の7割)
  • 機能
    ・ポイントカード 100円ごとに1ポイント(1円分)
    ・プリペイドカード
    ・クレジットカード
    ・住民基本台帳カード併用可
    ・エコポイント(平成20年4月~)
  • つれてってカード協同組合
    TEL0265-81-7300(駒ヶ根商工会議所内 事務局)

 

カードが先ではなく、魅力的な店づくりが先。

伊那市コミュニティカード協同組合 中村紘司理事長

 家電店など高額商品を扱う商店での使い勝手を考慮し、プリペイドカードは50万円までチャージできるようにしました。加盟店にとっては固定客づくりにも効果的だと思います。また伊那市の市民課や温泉施設、伊那中央病院などでも利用できます。
 提携以前は信用金庫のキャッシュカード機能もあったため口座を開設する必要がありましたが、ポイントカードとプリペイドカードに絞ったシンプルな機能が良いというのが利用者の本音。そのため今後はより利用が進むと期待しています。
 もっとも商店街としてはまず、大型店では扱いにくいものや、より専門的なものを揃え、専門店としての特色を出していくことが大切。その上で、カードが使えるということです。つまりカードが先ではなく、あくまで品物、お客様に来ていただける店づくりが先。
 「つれてって」と提携したから、駒ヶ根・飯島・中川のお客様が伊那に来るというような安易な考えではだめ。どこからでも来てもらえるような店をいかに作っていくかが大事なのです。そのためにもカードを活用しながら、互いに切磋琢磨し、魅力的な商店街をつくっていきたいと考えています。

◎「い~なちゃんカード」

  • 発行枚数 約6,000枚
  • 利用可能店数 約140店舗
  • 機能
    ・ポイントカード 100円ごとに1ポイント(1円分)
    ・プリペイドカード 50万円までチャージ可
  • 伊那市コミュニティカード協同組合
    TEL0265-72-7000(伊那商工会議所内 事務局)

 

南信スタンプ・カード研究会

 当地区は、昭和40年前後からスタンプ発行事業のための協同組合が市町村単位に設立され順調に売り上げを伸ばすなど、古くからスタンプ事業が活発に行われていた地域でもある。
しかし、昭和58年~平成2年頃をピークとして、年々、右肩下がりの売上となってきた。この減少率を何とか食い止める方策を検討する中で、スタンプ・シールを証紙に貼り付けるのではなく、それをカード化(ポイント、プリペイド等)することにより、活性化のきっかけとなるのではとの思いから、同じ悩みを共に研究していこうと南信スタンプ・カード研究会を設立。支援事業を利用しながら、各組合の現状・活性化の方策・カード化への取り組みなどを専門家を交えながらほぼ毎年実施。
 結果、平成4年に県内初のカード化(ポイント)を実現した会員を始めとして、平成8年には、2組合が全国的にもまれなコミュニティカード事業(ICカード)を同時期にスタート。現在は当地区には様々な形態のカードが発行されるようになった。
 今回、両組合(つれてってカード・い~なちゃんカード)が実現した連携カードについては、当初より当研究会の目標(連携・提携・統合等)の一つでもあった。これをきっかけとして、この連携カードを徐々に拡大(行政区域を超えた)していきたい。このことにより、組合にとっても、お客様にとっても付加価値の高いカード(広域利用な可能な行政等公共機関、エコポイント等幾つかの機能を兼ね備えた)を最終的な目標としているところでもある。
 今後も、連携カードの拡大・次のシステムの検討、商店街の衰退への対応(組合員の減少)を含めた問題は山積している現実にあるため、引き続き様々な支援事業利用による研究会の実施により、名実ともに商店街の、商業・サービス業の活性化の最後の切り札となる、スタンプ・カードを創造し続けていきたい。


会報いな2008年3月号(第386号)表紙より

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