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月刊中小企業レポート
更新日:2008/02/20

特集 平成19年度 長野県における中小企業の労働事情 

 今回で44回目となる本調査は、従業員の規模、業種による分析を通し、中小企業の多様な実態や規模による格差問題等を明らかにするほか、小規模企業の現状を知る、数少ない資料としての特色を持っています。
 このような中で「労働実態調査」は、長野県中小企業における労働問題の論議を深めるための資料として広く活用され、企業の発展に寄与できる資料となることでしょう。本特集では、その調査内容から一部を抜粋してご紹介します。

I.調査のあらまし

  1. 調査の目的
     この調査は長野県内の中小企業における賃金・労働時間・雇用等の実態を把握し、中央会労務指導方針策定の基礎資料とするとともに、中小企業における労務対策の参考に資することを目的とする。

  2. 調査方法・集計
     長野県内の従業員300人以下の民間事業所(卸売業100人以下、小売業50人・サービス業100人以下)を対象に1,300事業所を任意抽出し、郵送により調査を依頼。
     有効回答421事業所(対象従業者19,202人)について集計した。
    (1) 集計事業所内訳   (2) 集計労働者内訳
     

  3. 調査時点
     平成19年7月1日現在

  4. 調査結果利用上の留意点
    (1)この調査で「常用労働者」とは、次のうちいずれかに該当する者をいう。パートタイム労働者であっても、左記のイ、ロに該当する場合は常用労働者に含みます。
    イ.期間を決めずに雇われている者、または、1ヶ月を超える期間を定めて雇われている者。
    ロ.日々または1ヶ月以内の期限を限って雇われている者のうち、5月、6月にそれぞれ18日以上雇われた者。
    ハ.事業主の家族で、その事業所に働いている者のうち、常時勤務して毎月給与の支払いを受けている者。
    (2)「パートタイム労働者」とは、1日の所定労働時間がその事業所の常用労働者より短い者、または1日の所定労働時間が同じでも1週の所定労働時間が少ない者をいう。
    (3) 「所定労働時間」とは、就業規則、労働協約などで定められている始業から終業までの時間から休憩時間を除いた労働時間。
    (4)「初任給」は、平成19年6月の1ヶ月間に支給した所定内賃金額(税込額)で通勤手当を除いたもの。
    (5)賃金改定結果は平成19年1月1日から7月1日までの間に定期昇給、ベースアップの実施、非実施を決定した事業所で、ここでの「平均所定内賃金」は、賃金改定後の数値。
本調査における賃金分類

II.調査結果の概要

  1. 中小企業の経営環境

    (1)経営状況
     中小企業の経営状況は「悪い」とする事業所は前年同期に比べ3.1ポイント増加し39.2%、「良い」とする事業所は0.5ポイント減少し14.7%となった。
     規模別には、規模の小さい事業所ほど経営状況が「悪い」とする比率が高く、業種別では、「金属製品」で経営状況が「良い」とする事業所が三分の一を占めるのに対し、「繊維」、「木材」、「窯業土石」「卸小売業」では「悪い」とする事業所が過半数を占めるなど、業種間格差も目立っている。
    経済状況 規模別経済状況
    業種別経済状況

    (2)経営上のあい路
     中小企業の経営上のあい路として、本年も「販売不振・受注の減少」が49.2%とトップにあげられ、次いで「原材料・仕入品の高騰」が43.1%、「同業他社との競争激化」が37.1%と経営環境の厳しさを反映した結果となっている。また、「人材不足」とする事業所も30.6%と、中小企業での、より質の高い人材への要請の高まりを裏付ける結果となっている。
     業種別では、「販売不振・受注の減少」が多くの業種で最大のあい路としているなかで、「窯業・土石」「金属製品」「機械器具」「その他製造業」では、原油高騰に伴う「原材料・仕入品の高騰」が、「運輸業」「建設業」「サービス業」では「同業他社との競争激化」があい路の一位にあげられている。
    経営上のあい路

    (3) 経営上の強み
     自社の経営上の強みとして、製造業では「製品の品質・精度の高さ」42.0%、「顧客への納品・サービスの速さ」33.1%、「生産技術・生産管理能力」29.4%の順となっているのに対し、非製造業では、「顧客への納品・サービスの速さ」34.2%、「組織の機動力・柔軟性」28.9%、「商品・サービスの質の高さ」22.8%となっている。

    (4)主たる事業の今後の経営方針
     企業が現在行っている主要事業について、今後の方針をみると、全体では「現状維持」とする事業所が64.1%と多数を占め、「強化拡大」が30.2%、「縮小」が4.0%、「廃止」が1.7%となっている。
     規模別にみると、規模が大きくなるほど「強化拡大」する方針をもっている事業所の割合が高い一方、事業所規模が小さくなるほど、「縮小」「廃止」とする事業所が多くなっている。
    経営上の強み

  2. パートタイム労働者の賃金・労働時間等

    (1)主な賃金決定要素
     パートタイム労働者の賃金決定要素は、「仕事の内容」が59.3%と最も多く、次いで「同じ地域・職種でのパート賃金相場」54.5%、「これまでの経験」25.6%が主要な決定要素となっており、「地域別・産業別最低賃金」は13.0%に止まっている。
    主要事業の今後の方針
    パートタイム労働者の賃金決定要素


    (2)賃金(時給)額
     パートタイム労働者の時給額は、887.6円となっており、製造業が864.1円、非製造業が933.6円となっている。なお、業種別で時給額が最も高いのは「情報通信業」1,290円、次いで「木材・木製品」1,091円で、最も低いのは「繊維・同製品」756.7円となっている。

    規模別にみたパートタイム労働者の賃金と業種別にみたパートタイム労働者の賃金

    (3)昇給の有無
     パートタイム労働者の昇給を実施している事業所は37.1%と少なく、実施していない事業所が62.9%と大半を占めている。
    昇給の有無

    (4)継続勤務年数
     パートタイム労働者の継続勤務年数は、「3年以上」が54.7%と半数を超え、「1年以上3年未満」が33.1%と三分の一を占めている。
    継続勤務年数

    (5)週所定労働時間
     パートタイム労働者の週所定労働時間について「30時間以上の人」が55.3%と最も多く、「30時間未満20時間以上の人」が35.6%、「20時間未満の人」が9.0%となっている。
     なお、製造業では「30時間以上の人」が62.8%と最も多く、非製造業では「30時間未満20時間以上の人」が41.3%と最も多くなっている。
    パートタイム労働者の週所定労働時間

  3. 技術・技能・知識・経験の承継

    (1)技術・技能等の承継状況
     団塊世代の大量退職によって、技術水準の低下や技能・知識知能・経験の承継が懸念されているが、「十分承継されている」事業所が17.3%に止まり、「部分的には承継されているがまだ不十分」とする事業所が57.2%と半数を超えている。
    技術・技能等の承継状況

    (2)技術・技能等承継への対策
     技能等承継のために何らかの対策を行っている事業所は64.0%と三分の二弱を占め、三分の一強の事業所は対策はしていないとしている。
     対策の内容としては「現場での実践指導」が79.9%と最も多く、「社内の教育訓練や研修」39.0%、「技術・技能のマニュアル化」32.3%、「技能検定などの資格取得の奨励」30.9%の順となっている。


  4. 最低賃金引き上げの影響

    (1)最低賃金引き上げの影響
     最低賃金引き上げによる経営上の影響については、「ほとんどない」、「全くない」が合わせて58.5%を占める一方、「大いにある」、「多少ある」とする事業所も合わせると35.2%あり、三分の一強の事業所が最低賃金の引き上げの影響を懸念している。
     また、「大いにある・多少ある」とする事業所は製造業で39.7%となっているのに対し、非製造業では27.6%となっており、非製造業に比べ製造業でその影響を懸念する事業所が多くなっている。
    最低賃金引き上げの影響

    (2)最低賃金引き上げの対応策
     最低賃金引き上げへの対応策については、「生産性向上の努力をする」が59.2%と最も多く、次いで「従業員数を減らす」33.3%、「新規雇用を控える」27.2%、「業務の外注を検討」23.1%の順となっている。
    最低賃金引き上げの影響がある場合の対策
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