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月刊中小企業レポート
更新日:2007/12/20

ビジネスの視点

厳しい経営環境下でのメイクマネー・マネジメントの実現

(有)エス・エム・エスコンサルティング 代表取締役 
中小企業診断士 関 信一

 厳しい経営環境下でのメイクマネー・マネジメントの実現も今回が最終回です。「TOCと原価管理」について説明します。筆者は、ここ数年、製造業における原価管理システム構築が主な仕事になっています。前回お話した金型製造業を始め多くの製造業が厳しい経営環境のなか頑張っています。つい先日も売上高約10億円規模の自動機の周辺機器を製造販売している社長さんから原価管理の診断を依頼されました。販売競争が激化している中どこまで価格を下げられるのか分からない。原価集計を指示しているがなかなか報告が出てこない。こういった問題は、この企業さんだけでなく中小製造業のほとんどがこうした悩みを持っているのが実情でしょう。このままでは、重要な意思決定がスムーズに行えないばかりか企業存続も危ういかもしれません。
 そこで、短期経営計画を作成するのに役立つ直接原価計算のお話を少ししましょう。直接原価計算とは、製造原価と販売費及び一般管理費を変動費と固定費に分解し、変動費のみを売上高に対応させ、固定費はすべて期間費用として扱う原価計算方法です。つまり、製造原価を変動費のみで集計を行います。だから、固定費はすべて原価計算期間の費用になるので、製造原価に固定費はない。あと、直接原価計算の目的は短期的に利益をいくら必要として、実際にどれだけ利益を獲得したいのか、そして、そのために製品をどれだけ製造して販売すればよいのかを考えるための原価計算ということになります。紙面の都合で詳細は専門書に譲ります。
 では、ここでTOCのメイクマネーの実現を考えてみましょう。メイクマネーは2つのステップで考えます。もっとも重要なものが、スループット向上です。スループットとは売上から資材費を引いたものです。売上から変動費を引いた租利益や限界利益と多少異なります。スループットでは変動費ではなく資材費のみを引きます。これには2つの理由が考えられます。例えば、変動費として扱う直接労務費。以前のように労働集約型の組立作業などでは生産数量と直接労務費はほとんど比例していました。ところが最近のように設備などを多用した生産においては生産量に比例しない固定的要素が多くなってきています。またエネルギー費用や物流費など変動要素も多いが固定的要素がないわけでもなく、条件によっても異なります。そこで、これらをすべて固定費と考えるのです。次の理由は資材費だけを引くことによって、算出が容易になるという点です。この結果、スループットは誰にでもすぐに扱えるようになります。日常業務において常にスループットを考えることが容易に実現できます。
 次が在庫削減です。在庫削減の目的は2つあります。第1はリスクマネジメントです。最近では在庫を持つことは非常にリスクが大きくなっています。消費傾向が激減する状況では、売れ残って廃棄しなければならないといった現象が容易に起こるからです。製造業におけるマネジメントそのものなのです。第2は売上増加の手段です。製造リードタイム短縮を実現させます。これによって資材調達を引き付けて実行できます。納入先や調達先に反映させれば、相手にとってのリスクマネジメントとなります。売上増加や調達条件の改善へつながる条件整備と位置付けることです。
 3回にわたり厳しい経営環境下でのメイクマネー・マネジメントの実現のためにTOCによる実現手法を紹介しました。是非この手法を使いメイクマネー・マネジメントの実現されることをお祈りいたします。

信州ビジネスコンサルタント協同組合理事長

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