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月刊中小企業レポート
更新日:2007/12/20

イノベーション

経済力の強化は、行動する事にある

 大ベストセラーの本『バカの壁』で毎日出版文化賞を受賞した著名な作家であり、医学博士であり東京大学名誉教授でもある養老孟司先生の講演を聴く機会がありました。
 『医療と経営の壁』というテーマでしたが、それは人間自体の在り方に疑問を投げかける内容でした。「脳はイコール筋肉である。人間は、使わない機能はどんどん省略していってしまう。」これが一番強調しておられたエッセンスでした。アフリカの人は視力が4.0もある。これを聞くと日本人は、自分たちの目が悪くなったのだとは考えない。しかし、日本人の目は、遠くを見る為に使わないから悪くなっていくのだそうです。
 聞いた音をそのまま再現できる絶対音感についても、犬などの動物は持っているし、人間も元々みんな持っていた。小さいうちに音楽で鍛えられた人については持っているが、普通の人は音の高さが違う場合に同じと感じる相対的音感になってしまうのだそうです。
 でも私たちが、文明と呼ぶものの多くは、本来、違うものをイコールしてしまう特性を持っていて、通貨や言語が代表例なのだそうです。お金で換算したときに、自分の1ヶ月の労働と、パソコンの値段となぜ同じなのかという感覚の方が自然なのだそうです。
 歩く事にしても、同じ堅さのアスファルトの地面ばかりを歩いていても、脳は発達しないのだそうです。水田のように、堅さがわからないでこぼこの地面を歩く事が一番脳の為には良いのだそうです。ちなみに、養老先生の趣味の昆虫採集は、でこぼこした地面を歩くので脳に良いそうです。したがって、バリアフリー住宅というのは、脳のためには良くなく、バリアオンリー住宅の方が好ましいのだそうです。逆説的な指摘の気もしましたが、確かに障害を何でも取り除くのではなく乗り越えて鍛えていく事も大切で、この事をおろそかにすると使わない機能はどんどん省略していってしまう。日本社会はナビゲーションがしっかりしすぎた社会で人間の依存心が強く自立的に物事を決めることの出来る人が少ないと指摘していたサッカーのジーコ氏の指摘にも通じるものがあるなと感じました。
 コンピュータや自動機などの文明の機器の導入により組織の生産性は格段に上がるはずなのに、一方でスタッフの演算能力やコミュニケーション能力はかつての手作業の時代の方が高かったという声をいろんな業界の経営者に聞く事にも通じる気がします。組織の生産性向上には一人一人の能力(脳力)の向上が欠かせません。日常の仕事の中にも手や足や五感をどんどん使って、誤りをおかしにくい、スピーディーでお客様から喜ばれる仕事のスタイルの確立をしていかないといけないなと感じました。

クレジットカードの「ご利用明細」保管していますか?

 最近では、クレジットカードを利用して商品や材料の仕入れ、備品の購入などをしている方も多いと思います。この時注意していただきたいのが、カード会社から送られてくる「請求明細書」が消費税法で定める『請求書等』に該当しないということです。
 どのような問題があるかといいますと、消費税の仕入税額控除を受ける(これを受けられないと消費税の支払額が多くなってしまいます。)ための要件として、「帳簿及び請求書等の保存」がありますが、カード会社から発行される「請求明細書」は、課税資産の譲渡等を行った事業者(販売店)から交付されるものではないため、要件に規定する『請求書等』には該当しないということです。しかし、カード利用時に販売店などが交付する「ご利用明細」であれば、一般的に要件に規定する『請求書等』に該当するので、販売店などが交付する「ご利用明細」を保存しておくようにして下さい。
 『請求書等』に該当するための要件は以下の4点になります。

  1. 商品を購入した先…「その書類の作成者名」
  2. 商品を購入した年月日…「課税資産の譲渡等の年月日」
  3. 内容と金額…「その内容及び対価の額」
  4. 購入した人、会社の名称(上様は認められません。)…「その書類の交付を受ける者の名称」

 右記の4点が網羅されている必要があります。
 一言に書類の保存と言っても書類の種類、それに関わる法律により保存期間は様々です。ここで、会社法、税法、労働基準法に規定する書類に保存期間について紹介したいと思います。

■会社法上は10年
 会社法においては10年間その商業帳簿(※1)およびその営業に関する重要書類(※2)を保存することを規定しています。
 この法律は、これらの書類を保存し、後日紛争を生じた場合の証拠資料とすることを目的としています。これらの帳簿を保存しなかったことを直接罰する法律規定はありませんが、何らかの訴訟になった場合に裁判所の商業帳簿の提出命令に対し、これらの書類を提出しなかった時、裁判所は文書に関する相手方の主張を真実と認めることが可能ですし、また、会社が破産した場合には、過怠破産(法律の規定により作るべき商業帳簿を作らず、これに財産の現状を知るに足る記載をなさず、または不正の記載をなし、またはこれを隠匿もしくは毀棄すること。)に問われるおそれがあります。
(※1)営業上の財産および損益の状況を明らかにするための会計帳簿のことを示します。
(※2)株主名簿、株主総会議事録、株主資本等変動計算書などが重要書類とされています。
■税法上は7年
 税法において青色申告法人は仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳などの帳簿や、請求書、領収書などの証憑書類は、7年間保存することが義務づけられています。
 これらの帳簿書類を保存していないと、税務調査があった場合に不利な課税をされたり、青色申告をすることで受けられていた優遇措置を取り消されてしまう可能性があります。
■労働基準法上は3年
 労働基準法においては労働者名簿、賃金台帳その他労働関係に関する重要な書類は3年間保存しなければなりません。労働者の死亡、退社または解雇の日が3年間の期間の起算点となります。
 保存期間が経過した会社の重要情報の詰まった書類の処分に頭を悩ませている方もいらっしゃるのではないでしょうか?現在では、機密文書の処理を請け負っているサービスがあります。例えばヤマト運輸で行っている「機密文書リサイクルサービス」は専用の段ボールに書類を入れておけば電話1本で回収に来てもらえます。未開封のまま溶解処理工場で処理し、「溶解完了証明書」が発行されます。クリップやホッチキスなどの分別も不要で、費用も1箱1,800円とコストも手間もかからず処分することができます。
 書類の保存の目的は以上のように法律で定められているから保存しなければならないということもありますが、債権が回収できなくて訴訟を起こすなど裁判になった際には有効な証拠となり得ます。自分を守る、会社を守るためにも書類の保存は重要になってきます。

※本文は、松本市巾上の税理士法人成迫会計事務所で執筆していただいたものを掲載いたしました。

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