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月刊中小企業レポート
更新日:2007/12/20

特集1 障害者の雇用と職能技能の向上をめざして

~第7回「国際アビリンピック」開催される~

第7回「国際アビリンピック」開催される

 障害を持つ人の職業的自立の促進と職業技能の向上、企業や社会一般の理解と認識を深めること、さらに国際親善を図ることを目的とする「国際アビリンピック」が11月14日から18日まで静岡市で開催された。
 1981年の「国際障害者年」を記念して日本が開催を提唱。同年東京で第1回大会が開催されて以来、概ね4年に1度開催され今回で7回目。今年は2年に1度、約50の国・地域の22歳以下の若者技能者が技を競い合う「技能五輪国際大会」と初めて同時開催された。
 長野県内からは、高橋君江さん(エプソンミズベ㈱)、小池誠さん、小出堅三さんの3選手が出場。高橋さんが「英文DTP」で県内選手初の銀メダルを獲得したほか、小池さんも「ポスターデザイン」で特別賞を受賞した。
 会場では技能競技のほか、国際アビリンピック派遣団や、障害者雇用に取り組む企業・団体等による展示・デモンストレーションなども行われ、多くの見学者でにぎわった。

28の国・地域から425選手が参加し、技能競技で熱いバトルを繰り広げる

 「アビリンピック」は、能力を表す「アビリティ」と「オリンピック」を組み合わせた造語。15歳以上の障害を持つ人に参加資格があり、職業に直結する「職業技能競技」(26種目)と、障害のある人の素晴らしい才能や感性を生かした「生活・余暇技能競技」(4種目)で腕を競う。
 職業技能競技は、英文DTP、ポスターデザイン、木彫、ホームページ作成、フラワーアレンジメント、家具製作、建築CAD、機械組立など多岐にわたり、生活・余暇技能競技は刺繍、編み物、絵画、陶磁器の4種目。
 日本での開催は第1回以来2度目。前回インド・ニューデリーで開催された第6回大会の23カ国・地域を上回る、28の国・地域から425選手が参加し、それぞれの種目で熱いバトルを繰り広げた。
 日本選手団は過去最多の82選手が全種目に参加。年代層も17歳から77歳までと層の厚さを感じさせた。県内から参加した高橋君江さん(エプソンミズベ(株))、小池誠さん、小出堅三さんもそれぞれ健闘。8カ国11人が出場し、コンピュータを使って印刷物を制作する「英文DTP」の競技では、高橋君江さんが見事銀メダルを受賞した。
 特に高橋さんと小池さんは「第29回全国障害者技能競技大会」(平成18年)で金賞を受賞した日本のトップ選手。高橋さんはまた、平成19年「長野県障害者雇用促進のつどい」で優秀勤労障害者として雇用開発協会長表彰も受賞している。

28の国・地域から425選手が参加し、技能競技で熱いバトルを繰り広げる

障害者の雇用および就労支援の事例、さまざまな工夫などを展示・紹介

 会場では技能競技のほか、約190のブース・特設ステージが設けられ、国内企業・団体・行政機関による「障害者ワークフェア2007」、国際アビリンピック派遣団による障害者の就業職種のデモンストレーション、展示、ステージイベントなどが行われた。また期間中、国内外の事業主、障害者、専門家、大会参加者が集まり、障害者の雇用事例や経験、専門的知識などの情報交換を行う国際会議も開かれた。
 障害者ワークフェア2007は、「職場」「支援」「テクノロジー」「ユニバーサルデザイン」「雇用の制度」の各テーマに130ブース・100を超える企業・団体が出展。障害者の雇用および就労支援、ユニバーサルデザインの取り組み事例や、障害者の仕事や生活をサポートするツール、最先端の技術・機器などを紹介した。
 なかでも「障害者雇用のソリューション提案」をテーマにした「職場」には、障害者雇用を積極的に進めている約60の企業・団体が出展。各職場での取り組み事例や、ソフト・ハード両面でのさまざまな工夫などをパネルや映像、実演で紹介し、来場者から高い関心を集めた。

国際アビリンピック派遣団による障害者就業職種のデモンストレーションも

 また、国際アビリンピック派遣団による障害者の就業職種のデモンストレーションも行われた。
 日本選手団は、アビリンピック国内大会の喫茶サービス種目メダリストによる接遇サービスのデモンストレーションや、会場内でのパン・クッキー焼きの実演、音声読み上げシステムを活用した視覚障害者によるPC操作のデモンストレーションのほか、着物のファッションショーなども披露、会場を盛り上げた。海外派遣団も15の国・地域が障害者の就業職種のデモンストレーション、展示、ステージイベントなどを行った。 
 さらに大会期間中、来場者が無料でものづくりを体験できる体験プログラムや、アート展、ポスター原画展なども開催された。
 大会最終日には技能競技の表彰等を行う閉会式にあわせて、「芸術・文化・国際交流」をコンセプトとする芸術祭が行われ、第7回国際アビリンピックのフィナーレを飾った。

国際アビリンピック派遣団による障害者就業職種のデモンストレーションも

第7回国際アビリンピックを観戦して・・・障害者の「技術」に驚愕・・・

株式会社 柿の木農場 代表取締役 柿島 滋

 先日、長野県雇用開発協会の呼びかけにより、11月14日から18日にかけて静岡市で開催された国際アビリンピックを観戦する機会に恵まれました。会場となったツインメッセに着いた時には、既にいくつかの競技が進められていました。私たちは、日本代表として長野県から参加していた3人の選手のうち、小池さんの「ポスターデザイン」の競技を観戦することができました。代表選手たちが真剣に競技に打ち込む熱気につつまれた会場の外では、アジア・アフリカ・中近東・ヨーロッパなど、世界各国の人々が、国や障害の違いにとらわれず、見学にきた中・高生なども巻き込んで、あちらこちらに交流の輪が広がっていました。そんな中にいると、いま、地球上で起こっているテロや戦争は何なんだろうと思わされるひと時でもありました。
 隣の会場では、働く障害者たちを紹介した「ワークフェアー」が同時開催されていました。北は北海道から、南は九州まで全国各地の中小の企業や大手企業の特例子会社などの各ブースでは、障害者雇用の先進的な取り組みが、パネルや映像、働く障害者の実演などで、様々な障害を持つ人たちが、それぞれの職場で責任をもって働いている姿が紹介されていました。昨年、障害者自立支援法が施行され、今まで施設で福祉的就労を余儀なくされてきた障害者が、それぞれの地域で、一般企業での就労やグループホームなどでの自立した生活を目指した取り組みが、各自治体主導のもとで進められています。私たち長野県の事業主も、障害者の働く場を提供していけるよう積極的に取組んでいかなければ、と考えさせられた二日間でありました。

アビリンピックを見学して思うこと

株式会社長野協同データセンター 総務部 西山 葉子

 11月15,16日の2日間、 第7回国際アビリンピックの視察という貴重な機会を頂きました。
 会場では建築CADから木彫、編み物に至るまで様々な競技が行われ、専門的技能や高い技術力に感動させられました。
 障害者の方々が活躍している就業職種の実演や企業紹介の数々のブースでは、私も障害者と共に働いている企業の一員として、非常に興味深く見させて頂き参考になりました。
 当社は重度障害者多数雇用モデル企業として平成2年、親会社である㈱協同測量社、長野県及び長野市の合同出資により第3セクターとして全国で17番目に設立された会社です。建物は完全バリアフリー、当初14名の重度障害者雇用からスタートし、ノーマライゼーションをもっとうに研修生、職場体験者等積極的に受け入れ今日に至っております。
 しかし測量・調査を柱とした情報システムデータ処理を主幹業務として展開している当社は時勢の変化により仕事の確保が非常に厳しい状況となっております。この大会の紹介企業では大手企業の傘下のもと十分な仕事量とサポート人員や環境の充実、障害者の方達も安心して教育訓練を得られることに羨望の思いが致します。業界での競争の中で仕事を確保し、利益を得るためには健常者・障害者問わず技術能力を持つ者が即戦力となります。
 当社企業自身の発展と情熱のある障害者積極雇用に今勇往邁進の時と感じております。
 この機会を頂き、足下土台に成らせて頂こうと気持ち新たに致しました。

ノーマライゼーションの実現に向けて

長野リネンサプライ株式会社 総務次長 宮崎史雄

 好天に恵まれ、穏やかであった静岡市。雪を冠った富士山も姿を見せた。
 障害者の雇用促進、ユニバーサル社会の実現を目指し、第7回国際アビリンピックが開催された。世界各国・地域から選ばれた障害のある方々が参加し、26種目の職業技能と4種目の生活余暇技能を競う大会に、学生や地元住民による総勢800人のボランティア、23の国と360人の参加選手たち、海外からの出場者を取材する外国メディアも多数訪れ、国際色豊かな雰囲気が漂った。県内からも3名が参加し、それぞれが好結果を残した。
 長野冬季オリンピックの時、一校一国運動があったように、アビリンピックでは、フレンドシッププログラムが用意され、静岡市内の小・中学校・養護学校が交流し、事前に各国の文化や様子を学び障害についての理解を深め、競技の応援に駆けつけた姿が見られた。また同時に国際アビリンピック派遣団、国内の企業や団体などの出展者が、デモンストレーション、展示、アトラクションを行なった。
 グローバル化が進み、単純な物作り産業は海外へとシフトし、付加価値を求められる日本の労働環境の中で、障害を持ちながらも専門性を発揮し、健常者と同等のスキルを持つ彼らを見ると、大会のメダルの数や結果ではなく、雇用に繋がる障害者の働く能力を正しく評価しなければならないと認識すると共に、障害者雇用が一層理解されるように努力をしていきたい。

国際アビリンピックに参加して

高橋 君江

高橋 君江 先日、静岡県にてユニバーサル技能五輪国際大会行われました。
 私は国際アビリンピックの英文DTP部門競技に出場しました。
 国際アビリンピックは初めての参加で英文DTPは競技課題全て英語なので、英語が苦手な私はとても不安が大きかったです。またデザインも日本と外国は違うので、外国でも通用するデザインは何だろうと悩みました。
 会社からは様々な支援をいただき、大会の一ケ月前から業務から離れ、集中できる場所で強化練習に専念させてもらいました。
 競技当日はたくさんの観客が見ている中で、競技をする緊張やプレッシャーがありましたが、皆さんからいただいたアドバイスを心にして、出来るだけ緊張せず平常心で最後まで諦めないで頑張ろうと思って、競技に臨みました。
 競技の翌日に結果発表があり、世界各国からハイレベルな選手が集まっているので、入賞は厳しいのかもと思い、半ば諦めていましたが、自分が銀賞という結果を見た時は、とても信じられなかったです。
 応援に来ていた母と共々喜びました。これもたくさんの方々が支援や協力して下さったから、良い結果となったのだと思います。
 また競技をすることだけでなく、世界の人々と交流することは、普段では出来ないので良い経験となり、忘れられない思い出となりました。
 入賞したことに満足せず、これからも技術を磨き、精進していきたいと思います。
 世の中ではまだ障害者に対して差別があり厳しいのが現状ですが、この大会で障害者でも努力すれば、健常者と同等にできる事が理解してもらえれば、全ての障害者にとって励みになると思います。
 最後に国際アビリンピックで支援・協力して下さった、家族・会社の人達を始め皆さんに感謝を言いたいと思います。本当にありがとうございました。

「第7回国際アビリンピック大会」に参加して

小池 誠

小池 誠 この度は厚生労働省、財団法人2007年ユニバーサル技能五輪国際大会日本組織委員会、中央職業能力開発協会、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構、その他多くの機関の皆様のご支援と仕事関係者皆様のご協力のお陰でこのような思わぬ体験をさせていただいた事に誠に感謝しています。
 体に障害があるとどうしても健常者の皆さんと一緒に外出したり、外に出たりすることが大変で室内に閉じこもり気味になります。そのような日常の中で静岡まで旅ができ、国内外のいろいろな方と出会え、競技を一緒にできたことは、人生において忘れがたい素晴らしい思い出となりました。
 また開会式・閉会式で各界の一流の方のパフォーマンスを鑑賞できたり、後の交流会で世界各国の選手と交流ができたことは人生の中で本当に素晴らしい出来事でした。
 このような機会も皆様の後押しがなければとうてい体験出来ることではないです。
 社会が障害者の皆さんに理解を示し、いろいろな形で社会参加を推し進めてくれることは私達障害者にとっては本当にありがたいことです。またいろいろな意味で社会全体の底上げにも繋がることだと思います。
 これからも日本、そして世界全体の生活の質の底上げを心より願っています。そして、私も自分の仕事を通じて微力ですがその一役が担えればと願っています。

障害者雇用納付金制度に基づく各種助成金

独立行政法人 高齢・障害者雇用支援機構の助成金資料から
http://www.jeed.or.jp/

障害者雇用給付金制度に基づく助成金とは

障害者介助助成金

障害者介助助成金

重度障害者多数雇用事業所設備設置等助成金

 

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