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月刊中小企業レポート
更新日:2007/11/20

ビジネスの視点

厳しい経営環境下でのメイクマネー・マネジメントの実現

(有)エス・エム・エスコンサルティング 代表取締役 
中小企業診断士 関 信一

 今回は、TOC(制約条件の理論)をスループット会計上からキャッシュフローの極大化を図るための方策について紹介します。金型製造業を例に以下説明します。

 今、忙しい金型企業には2つのタイプがある。金型企業としての「知恵を売る」会社と「汗を売る」仕組みを整えた会社であるが、理想的には前者でオンリーワン企業であるが、現実的には後者のタイプが多い。
 日本にこれから残る金型の仕事は少量かつ単納期、これに対応できる仕組みを整えた企業に仕事が集中していく。例えば24時間年中無休工場で、期間当たりの付加価値を上げるには、手っ取り早くこうした仕組みで実現するか、人の力で実現するかの違いはあるが、仕組みを整えた企業の中には過去最高益を上げている企業もある。
 K社は、北海道にある年間売上高約20億円の金型製造業社。得意分野は、スイッチ、コンデンサなど電子部品の精密金型、金型を構成する精密部品の加工。新製品の開発競争が激しくなり「緊急発注」が増えている。「忙しいけれど儲からない」多くの企業はこう悩んでいる。K社では、個人力の介在を減らす取組みを行っている。注文書を受けると管理部は原則その日のうちに金型の加工にかかる時間を工程別に割り出す。そして見積を算出する。受注が決まればそのデータを工程管理システムに入れる。工程ごとの加工時間も入るため、工程ごとに、何時からどの製品の加工を始めて、何時までにどの工程に引き渡せばよいのかといった作業予定が自動的に出る。現場の技術者はパソコン上でその情報を確認し、その指示に従う。こうした工程管理表を以前は表計算ソフトで作っていたが、現在は金型企業向けの生産管理パッケージソフトをカスタマイズして使っている。ポイントは、変量、超短納期にいかに対応するかにある。最近の仕事は受注が安定せず、加工内容も変動が大きくなっている。企業規模にかかわらず、受注品が多品種になればそれだけ効率的に現場の生産情報を管理することが必要である。特に、中小企業の生産情報管理の問題点は、顧客からの問い合わせ時に必要な情報がすぐに検索できないことや、図面等の情報の再利用(流用)ができていないことにある。まずは、ユーザーニーズへの対応という目的にあわせた管理のため、情報を整理して使い勝手良く蓄積し、身の丈に合った見積の効率化等に活かすことが基本として重要である。その際、ツールとしてのIT活用も有効な手段である。
 この事例をTOC(制約理論)から考えてみると、ボトルネック工程を特定しTOCのスループットを高めるための障害となるものは、ここでは見積から生産までの処理にある。K社はこのボトルネックを解消し、スループット会計からのキャッシュフローの極大化に成功している。
 ここで重要なのは、①制約(ボトルネック)を見つけ出す、②これらボトルネックをどう活用するかを決めて、③他の全てのステップを②にあわせる(非ボトルネック資源の利用計画をボトルネックとなっている資源利用のペースに合わせる)④ボトルネックを解消するとした手順をしっかり踏んでいくことである。
 最終回は「TOCと原価管理」について説明したい。

信州ビジネスコンサルタント協同組合理事長

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