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月刊中小企業レポート
更新日:2007/11/20

イノベーション

プライド、誇りの持てる仕事づくり

 長野県NPOセンターの受託事業で厚生労働省の若年者地域連携事業という事業(フリーター対策が中心)で仕事の達人に『粘りの極意』を聞くというイベントがありました。そこでメインゲストで登場した一澤信三郎さんは、フリーター向けというよりも我々、経営者の在り方に参考となるものでした。
 信三郎さんは、京都の帆布屋さんの三男でもともとは事業を継ぐ気持ちはなかったのだそうです。職人の材料の袋やテントなど様々な用途に使われていたのが、化学繊維などへの代替により存在価値を無くしていき、お父さんの気持ちも消極的になっていき、またお兄さんがいたのですが、都銀に勤めていて家には近寄らないということもあり、ある種しかた無く事業承継したそうです。
 今まで職人向けの商売をしていたのが、帆布をバッグ(鞄:信三郎さんの鞄は「布」偏に「包む」と書いてカバンと読ませています。)を中心にして、顧客を職人達から一般ユーザーへ切り替えていきました。カジュアル化の波で男性もバッグを持つようになり、そのデザインと100%京都での手作りにこだわった姿勢が評価され、行列ができる鞄屋さんになりました。一時期ほどではないそうですが、今でも通販はしていませんし、1回に購買できる鞄の数の制限は3個になったそうです。布製のバッグが1万円とか2万円とかするわけですが、ブランド形成され売れ続けています。アジア化(中国発の価値破壊)の波で安いモノがはびこる中、高くても価値観に合った本当に良いモノを求める層に受け入れられたのだと思います。
 しかし、順風満帆というわけにはいきません。試練(ワイドショーなどで有名)が訪れます。実印を含め経営一切を任せてくれていた父親の死とそれに伴う相続問題です。父親直筆の毛筆で書かれた公正証書遺言より新しい日付の自筆遺言、それも父親が使うことの無いボールペンで書かれ、父のよく使っていた印鑑も押して無い遺言をもって、家に寄りつかなかった長男が登場します。そして裁判で負け会社を追い出されます。しかし、職人全員と最高齢の職人(亡くなった父の弟)は信三郎さんについていきます。相続対策の必要性を感じるとともに、ピンチのときは普段の経営者の姿勢が問われることを感じます。
 職人といえば3K業種的で今の若者は、敬遠する世界のように思いましたが、手作りで、その自分達のこだわりが評価される職場ゆえんでしょうか?職人になりたいと全国から若い人が丁稚奉公に来るのだそうです(松本からも1人いるそうです)。鞄を作るにも大手だとデザイナーが別にいて、作るのはアジアの国ですし、企画してから製作されるまでに何ヶ月もかかる。信三郎さんの工房だと若い人逹がデザインから意見を出して自分達で作ることが出来、自分逹で売るのでお客様の反応を実感することができる。そんな職場に魅力を感じて全国から若い人が引き寄せられるのでしょうか。
 「建設業は不況ということもあるが若い人がなかなか来ないし、来ても他業界にいってしまう。賃金のこともあるのだろうが、大工の世界から組み立ての仕事になりつつあり、誰がやっても出来映えに差がでなく、習熟するのも早い。職人としての誇りを持ちにくくなっている。」と指摘された経営者がいました。
 以上を考え合わせると、プライド、誇りの持てる仕事づくりというのは企業経営者最大の仕事なのではないでしょうか?また、その追求がアジア化(価格破壊)への対応であり、よく言われるオンリーワン企業への最大の近道なのだと感じました。

債権回収諦めてはいませんか?

 皆様の会社では債権の管理はどのようにされているでしょうか?私共が決算をさせていただく際、前年度の債権がそのまま残っているケースをしばしば目にします。また、その債権は回収できる見込みがないため、貸倒れ処理をしてくれという話もよく伺います。債権には皆さんの努力が詰まっているため、私共も貸倒れにしてしまうのは心苦しい限りです。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、売掛金には時効があり、売掛金2年、請負工事3年その他飲食費1年など期間が短く制定されています。
 NHKでも受信料の回収には苦労しており、支払督促の申立を段階的に実施すると表明しています。今回は法的機関の力を借りながらも、比較的簡単で安価に手続きをすることができる、支払督促と少額訴訟についてご紹介させていただきます。ポイントは弁護士等に依頼しなくても「自分でできる」点です。

  1. 債権の消滅時効期間を延長するには?
     時効期間を過ぎてしまうと権利は消滅してしまいます。しかし、書面により内容証明を送付した場合、相手に届いた日から時効期間内であれば6ヶ月間時効をのばすことができます。ただし、1度しかできないため、同じ債権に何度も内容証明を送ったとしても、最初に受領した日のみが有効になりますので注意が必要です。また、同一債権について一部でも回収できればそこから時効期間が起算されるため、分割でも回収できるように働きかけましょう。
  2. 支払督促と少額訴訟の比較
    下表参照
    支払督促と少額訴訟の比較
  3. 支払督促と少額訴訟どちらの方法が良いのか?
     内容にもよりますが、債務者が債務を認識しており、支払う意思があるにもかかわらず支払いがない場合は、異議申立てとなる可能性も低いことを考慮すると、支払督促がよろしいかと思います。
     また反対に債権額が60万円以下で、債務者との話合いでの難航が予想される場合には、少額訴訟をお勧めします。
以上のように、安価な費用と少しの手間で債権を回収することができるのです。裁判所というと怖くて行きにくいイメージを持たれるかと思いますが、実際は簡易裁判所の書記官の方達が親切に対応してくださいます。裁判所のホームページでもQ&A方式で案内があり、窓口でも心よく受付けてくださいますので、皆様の努力を無駄にしないためにも、諦める前にもう一度ご検討してみてはいかがでしょうか。

※本文は、松本市巾上の税理士法人成迫会計事務所で執筆していただいたものを掲載いたしました。

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