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月刊中小企業レポート
更新日:2007/10/20

ビジネスの視点

厳しい経営環境下でのメイクマネー・マネジメントの実現

(有)エス・エム・エスコンサルティング 代表取締役
中小企業診断士 関 信一

 今月から3回シリーズで「企業が現在から将来にわたってもうけ続ける」ためのアプローチ方法としてTOC(制約条件の理論)を取り上げその活用方法についてご紹介します。
 第1回は、「TOCによる業務改革」、第2回は、「TOCとスループット会計」、第3回目は、「TOCと原価管理」です。

TOC(制約条件の理論)による業務改革

 海外で注目を集めた業務改革手法である「TOC(制約条件の理論)」。その提唱者であるエリヤフ・ゴールドラットの著書「ザ・ゴール」が2001年に日本でも翻訳出版され、日本でも注目を集めた。「ザ・ゴール」は、業績不振から3ヶ月後に閉鎖される生産工場の再建を主題とした産業小説である。ゴールドラットは、「企業の目的は現在から将来にわたって、お金をもうけ続けること」と定義している。

 TOCが注目されている最大の理由は、業務改革に対する視点が既存の手法と違うところにある。日本企業のお家芸である「カイゼン」は、品質管理学者のデミングが提唱したQCの基本的考え方を基に日本で発展した。カイゼンはシステムを構成する全てのプロセスを強化するが、TOCは、業務改革に際して、システムの最も弱いところだけに注目するという考え方である。また、TOCでは、「システム全体のアウトプットは最も脆弱な部分の能力によって制約される(一点に集中)」といった点を重視している。例えば、企画、開発・設計、製造、流通・サービスなどの機能組織をもつ企業があったとする。企業の業績を改善するためのアプローチとして、全社で全プロセスを対象に改善に取組むというやり方もある。

 だが、TOCではこれとは別のアプローチを取る。業績の制約となっている最も弱い部分はどこか、まずそこに注目して改善に取組むのがTOC流である。世の中には「部分最適が全体最適になるケース」と「部分最適が全体最適につながるとは限らないケース」がある。たとえば、いくつかのリングを直列につないで作ったチェーンの質量が前者。個々のリングを軽くすればチェーン全体の質量も軽くなる。これに対してチェーンの強度は後者。個々のリングをいくら高めても一つでも弱いリングが残っていればチェーンの強度は高まらない。TOCでは、前者(部分最適)を「コスト・ワールド」、後者(全体最適)を「スループット・ワールド」と呼んで明確に区分している。そして「お金をもうけ続ける」ことは、実はスループット・ワールドに属する事象である。TOCは前述したように根本的な制約を見出し、それを改善・強化することで業務改革を推進して行こうという考え方だ。

 そのため、制約を正しく見極めていくことが不可欠であり、既存の方針、つまり思い込みや暗黙の前提などの問い直しを重要なステップの1つとして位置づけている。具体的には、その制約をどうやって見つけ出すかであるが、3つの点に注目する。一つが物理的なリソース。具体的には設備、要員、原材料の供給状況など。二つ目が、市場。サービスや製品に対する需要である。需要が供給者の能力よりも小さい場合。三つ目が、方針である。ものの見方や考え方、評価指標、社内ルール手続きなど。TOCでは、思考プロセスという方法論を用いる。次回は更にTOCの理論紹介とスループット会計について紹介します。

信州ビジネスコンサルタント協同組合理事長

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