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月刊中小企業レポート
更新日:2007/09/20

イノベーション

~信託の時代!?相続対策の決定版!?~

 日本の伝統であった家長制度、家督相続が廃止され、均分相続が当たり前になり、一人一人の権利が大切にされるようになったのは良いことですが、家の存続、事業の存続にはマイナス面も大きいと思います。
 日本でも世界でも事業体のほとんどは、マスコミで報道されるような、公開企業ではなく家族経営が中心の同族企業(ファミリー・カンパニー)です。したがって、家の存続や事業の存続に努力しリスクをとる人については、リスクを取らない人よりも優遇されるべきだと思うのですが、民法の均分相続により、相続権を主張し事業継続が困難になる場合が少なくありません。家庭用財産はともかく、事業用財産については、農地のような20年間相続人が農業を継続すれば納税義務を免除するような制度があれば良いのですが、事業用財産についても相続税はかかりますし、相続財産として遺産分割の対象になってしまいます。これでは、親がせっかく金の卵を産む鶏を育てたのに、一人の心ない相続人のために金の卵を産む鶏を、売ってしまうのか、分けてしまいもう卵を産むことのできない状態にしてしまうことと変わりない状態です。遺言など各種の相続対策はありますが、限界があったのも事実です。
 そこで、現在注目されているのが、去年の年末に改正された信託法の中の家族信託(ファミリートラスト)です。これには、遺言代用信託と跡継ぎ遺贈型受益者連続信託があります。
 遺言代用信託は、財産を委託し、受益権を生存中は自分で死亡後は妻や子供などへの指定が出来ます。跡継ぎ遺贈型受益者連続信託だと、妻が死亡後は長男、その後は、孫へと財産を継ぐ人を指定することが可能になりました。何よりも遺言による場合と違って信託だと、相続人に渡す財産のうち守るべき財産(つまり金を産む卵の鶏)が勝手に処分されず、自分の意思を後生に遺すことができるのは非常に大きいと思います。
 信託はイギリスで開発され、一般的な財産管理法になりアメリカに渡り大普及しました。アメリカの信託財産は1京円(日本国民の総財産8千兆円よりも多い)を超しており、家族信託(ファミリートラスト)の普及が信託財産を殖やす原動力となっています。日本で、どこまで普及するかわかりませんが、大切な事業、そして家というものを守るためにも検討が必要な制度ではないでしょうか。

続報!!経審見直し案!~Y評点の改正~

 国交省の経営事項審査の見直しに新たな動きがありました。6月13日に再度ワーキンググループが開催され、以前より具体的な内容が決まってきました。今回は、中でも具体的指標が発表となった経営状況分析(Y点)の改正案についてお話しします。

 Y点改正案では、①ペーパーカンパニーの過大評価を排除、②点数分布の適正化、③会計基準の差異が評点に与える影響を極小化することを目的とし、新指標の改正を行いました。
 今回、注目すべき点はいい会社であっても評点が下がる可能性があることです。
 表Aが新指標の一覧です。

〈新指標のポイント〉

 表Aの8指標のうち、5指標(X1、X5、X6以外)は今回新たに採用されることになった指標です。今回の新指標のポイントは①資産に対する指標のウエイトがかなり高くなったこと、②売上総利益の指標が導入されたこと、の2点です。

  1. 関係する指標:X3、X5、X6
    理由:算出式の分母が固定資産、もしくは総資本(総資産)
  2. 関係する指標:X3
    理由:算出式の分子が売上総利益

 X3は①、②の双方に共通している上に、点数配分21.4%と高く、Y点で大きな差がつく指標になりそうです。ある建設会社Zを例に考えてみます。
 表Bは建設会社Zの現状の財務状況(B/S)を表しています。表Cは現行の経審と新経審のY点を比較しています。
 表Cからもわかるように現行のY点が1、150点と高得点ですが、950点と大幅に減少しています。これは新指標では固定資産、総資本のウエイトが高いことが原因です。中でもこの建設会社の場合X3の指標は、点数配分のうち9%の30点しか取れない結果となりました。
 今回の改正案の対策は、資産の圧縮、売上総利益の増加です。資産の圧縮は不要資産の処分、工事未払金と、完成工事未収入金相殺など、また売上総利益の増加は完成工事原価の圧縮、営業外収益(家賃収入等)を兼業売上に計上するなどの対策が考えられます。

表A

表B,表C

※本文は、松本市巾上の税理士法人成迫会計事務所で執筆していただいたものを掲載いたしました。

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