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月刊中小企業レポート
更新日:2008/08/20

元気な企業を訪ねて ―チャレンジャーたちの系譜―

二輪・四輪の新車・中古車の販売から買取まで、
多彩なニーズに応える顧客志向のビジネスで新旋風。

有限会社原ホンダ代表取締役 原 義博さん
有限会社原ホンダ
代表取締役 原 義博さん


お客様が気軽に来店できる新しい店づくり

新しい店づくり 「アナタはガソリン入れるだけ!!」のコピーが思わず目に止まる。車検業界で今話題の「スーパー乗るだけセット」を展開するハラホンダの「となりの車やさん スマイル」のオープンチラシだ。
 かわいいキャラクターが目印のシンプルな看板は遠くからもよく目立つ。軽自動車がディスプレイされた、広々としたショールームはカフェテリアのようなしつらえ。好きな飲み物を楽しみながら自動車メーカー各社のカタログを見比べることができる。子どもたちが遊べるキッズコーナーもあり、ファミリーでの来店に好都合だ。ショールームに隣接するサービス工場では車検受付をはじめ、各種整備・点検やトラブルにスピーディに対応する。
 「近年伸びていない車検需要をどうしたら伸ばせるかと考えていたところ、この事業を知ったんです」。原義博原ホンダ社長はそう明かす。
 飯田車輌整備協同組合理事長という立場はもとより、二輪・四輪車の販売・サービス業界にとって車検需要の伸び悩みは大きな問題だ。詳細については後段でレポートするが、同事業は5年間の車両維持経費がセットになった一般向け車両リース事業。全国の自動車車検・整備事業者が注目する新しいビジネスモデルだ。
 原社長はさっそく事業化を決め、ちょうど空き店舗になっていた自動車ディーラーのショールームとサービス工場を取得。今年6月、オープンにこぎつけた。「販売台数が増え、今までのスペースではきめ細かいサービスに十分対応しきれないという問題もあった。効率だけを考えれば従来のままでもという考えもあったが、お客様が気軽に来店できる店づくりをしようと決断しました」。

入社間もなくから
会社の切り盛りを任される

入社間もなくから会社の切り盛りを任される 原ホンダは自転車店として大正7年に祖父が創業。昭和44年、父親の代に法人化し、バイクと自転車の販売および整備、用品・パーツの販売、自動車保険等の販売へと事業を拡大する。
 原社長が家業に入ったのは法人化したその年。高校を卒業して1年後だった。「3年間修業のつもりでバイクの卸会社に入社しましたが、家業が忙しく1年で呼び戻されました(笑)」。
 ちょうどバイクから軽自動車へと需要が移行し始めた時。自転車・バイクの販売から自動車販売へと転身を図る業者も少なくなく、同社もその流れにあった。しかし自動車販売に関しては素人だけに思うようにはいかなかった。「私はまだ19歳で営業経験もほとんどない。しかも当時、自動車そのものの信頼性も今ひとつで、お客様に説明し納得してもらい、販売にこぎつけるまでとても時間がかかりました」。その後もバイクと自動車の両輪営業が続く。
 そんななか、入社間もなくから実質的に会社の切り盛りを任された原社長はさまざまな「改革」を行う。
 「各社取り扱っていたバイクをホンダに一本化。不良在庫になっていた用品や部品などを整理し、名古屋の卸業者からの毎月の仕入れも必要なものだけに絞りました。決済の資金が足りず、銀行につなぎ融資を頼みに行くのもまだ20歳の私の仕事でした」
 原社長夫婦と両親の家族経営だったが販売は順調に伸びる。昼間は修理、夕方から営業や納車に出かけ、帳簿も自分でつけるという忙しい毎日。「毎晩11時まで仕事していました。メーカーの担当者から、従業員を入れてはと心配されるほど(笑)。でも大学に通わせていた弟2人が卒業するまではと頑張りました」。

オートバイブームをとらえ、
スポーツバイク専門店を出店

スポーツバイク専門店を出店 かつて何度かオートバイのブームがあった。第1次ブームは「暴走族」という呼称が定着した70年代。第2次ブームは走り屋系とツーリング系に二分し、全国にチームやクラブができブームが加速していった80年代。そんな空気が漂い始めていた昭和55年(1980年)、同社はスポーツバイクの取り扱いを始める。
 「ある日、30歳を過ぎたお客様がポツンと、中型免許を取りに行くんだ、と言ったんですね。何となくオートバイに乗りたくなって、と。それからそのお客様とツーリングに行ったんですが、思いのほか楽しくて。売れるかもしれないと思いました」。まさにブームをとらえた瞬間だった。
 取引業者から中古車を仕入れて並べた途端、すべて飛ぶように売れた。「すごい勢いでした。スポーツバイクの新車、中古車をどんどん仕入れて販売しました」。初めての従業員を採用したのもその頃だった。
 そして平成元年、スポーツ志向の強いオートバイ専門店「モトウィズ」をオープン。趣味で乗る人向けに高級品を主体に程度の良い中古車と新車を扱い、ヘルメットのほかブーツ、皮のつなぎなどツーリング用品の品揃えにもこだわった。
 「バイクと用品を一式揃えると100万円にもなる。そのくらい気合いを入れて揃えるバイクファンが多かったですね。趣味の人たちがメインだったので景気など関係なし。ツーリングクラブの人はオンロード、オフロード、ちょいのりと3台持っていました。ホンダも意欲的に新車を出したので毎年のように新車に買い換える猛者もいましたね(笑)」
 同店は現在もオートバイ全般を扱うショップとして人気を集めている。

「将来も安定した会社」をめざし、
中古車買取・販売事業に進出

 しかし平成4年をピークにオートバイブームは下降線をたどる。「趣味性の強いオートバイがこのまま売れ続けることは考えにくい。社員が定年まで勤められる安定した会社にするためには、もはや生活必需品である車の販売を主体にすべきだとずっと考えていました」。
 そんな平成7年のある日、目にとまったのが中古車買取・販売のフランチャイズチェーン「アップル」の募集広告。1カ月ほど考えた末に加盟を決める。しかしオートバイ中心で四輪中古車に関しては素人同然の経験のなさが正直に出る。買取価格の相場をちゃんと押さえていない、高級車の事故車を見逃すなど最初は失敗ばかり。2、000万円の売上げに対し、粗利で50万円の赤字を計上した。「甘く見ていました。この事業は人材の力がすべて。ヤル気のある優秀な人材を育てないとだめだと身にしみました」。
 そこで原社長自身、オークションの売買データを覚えるなど必死に勉強。さらにスタッフ全員で毎月ミーティングを行い、失敗事例と成功事例の共有に努めている。
 「中古車を買い取る際、商談を早く詰めたいので無理して高く買い取り、粗利を確保するため予想売り値を勝手につり上げてしまうことがある。それが買いたい病。それにかかると程度の悪い車も良く見えてしまうし、絶対100万円でしか売れないのに110万円で売れると考えてしまう。そうすると必ず損をする。その予防と治療のため、スタッフ一人一人が落札誤差分布図を作り反省するようにしています」
 落札誤差分布図とは、車ごとに想定した買取価格の相場とどれだけ誤差が生じ、いくら粗利が出たかを月単位に詳しく表にする同社独自の取り組み。「これで相場を想定する力がかなりついてきました。最近アップル加盟店のなかでも優勝劣敗がはっきりしてきた。この商売は人材に負うところが非常に大きく、まさに人間力が勝負のカギを握っています。それだけに効果に手応えを感じています」。
 また同社ではアップルの社内キャンペーンを年6回行い、各店舗の成績順に粗利に応じたインセンティブを与えている。さらに会社の利益の3分の1を期末手当として全社員に分配するという方針を貫き、成績優秀者には報奨金も出しているという。利益の分配は初めて社員を雇用した時からの取り組みだ。「社員も張り合いになると思うし、ヤル気を出してもらえます」。
 県内全域に9店舗を展開するアップル店をはじめ同社は現在、粗利益で22カ月連続前年度比アップを更新中だという。

マイカーリースの
新たなビジネスモデルに参入

新たなビジネスモデルに参入 今年6月新たに進出したのが、冒頭でふれた「スーパー乗るだけセット」の販売を主体とする「スマイル」店。
 「スーパー乗るだけセット」は車両本体と登録諸費用のほか、5年分の自動車税、車検・点検整備代から用品まですべて含めて、新車を5年間リースするシステム。車はメーカー、車種にこだわらず自由に選べ、月々定額の支払い以外、維持費はガソリン代だけですむというのが大きなメリットだ。
 「ガソリン代以外、税金、車検・点検といった余計な出費がなく、例えば毎月2万円だけ頭にあれば新車が維持できる。レンタカー感覚で5年ほど利用したいというニーズにも応えられます。しかもスマイル店1カ所で全メーカーの売れ筋新車を比較検討できるのでとても便利。お客様にとってはとても魅力だと思います」
 ディーラーや給油所、異業種からの車検事業参入で激しい競争にさらされている整備業界。この販売システムが整備業者に注目されている最大のポイントは、車検、点検整備、用品販売などの需要囲い込みができること。ユーザーのメリットはそのまま事業者のメリットでもあるのだ。原社長がこのビジネスモデルに魅力を感じたのもまさにそこだった。
 同社にとって有利なのは、リース終了後の車を「アップル」が買い取り、程度によっては買取査定額とリース残価の差額を”ボーナス“としてユーザーに提供できること。大事に乗ればそれだけボーナスも増えるので、利用者にとってはそれもまた大きなメリットになる。
 「現在、飯田下伊那地区の自動車保有台数は約15万台。その3%が当社のリースに切り替われるだけで十分ビジネスとして成り立つ。新車販売の差別化として、これをひとつの柱にしていきたい。さらに中古車・新古車も含めた、さまざまなリースのご相談に応えられる”リースのプロ“をめざしたいと考えています」。さらに同社はネットオークションでの割安な中古車販売にも今後力を入れていこうと考えている。
 二輪・四輪の新車・中古車をニーズに応じてさまざまなスタイルで販売し、買い取り需要にも応える、顧客志向に立った同社のビジネス。自動車販売および整備業界に新しい流れが生まれようとしている。


プロフィール
代表取締役原 義博
代表取締役
原 義博
(はら よしひろ)
中央会に期待すること

中小会への提言
 活性化をめざした組織づくりに今以上に力を貸してほしい。また組合員の後継者育成方法についての提案やセミナーの開催などの企画もお願いしたい。

ハラホンダ外観
ハラホンダ外観

アップル長野南バイパス店
アップル長野南バイパス店

 

モトウィズ外観
モトウィズ外観

外観スマイル外観
外観スマイル外観


経歴
1950年(昭和25年)2月15日生まれ
1969年4月 原自転車店に入社
1984年12月 有限会社原ホンダ代表取締役に就任
出身   飯田市
家族構成  
趣味   ゴルフ。忙しくなかなか行けませんが。

 

企業ガイド
有限会社原ホンダ

本社 〒395-0817 飯田市鼎東鼎94-5
TEL(0265)22-2096
FAX(0263)24-2096
創業   大正7年
資本金   300万円
事業内容   四輪車および二輪車の新車・中古車販売・修理、中古車買い取り、新車リース、自動車保険の販売等
事業所   本社(ハラホンダ)、アップル飯田バイパス店・駒ヶ根店・箕輪バイパス店・諏訪インター店・塩尻北インター店・松本店・豊科インター店・長野南バイパス店・上田18号店、モトウィズ(飯田市鼎一色)、スマイル(飯田市上郷別府)
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