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月刊中小企業レポート
更新日:2007/06/20

イノベーション

都市の盛衰

 日本開発銀行に在職中に東京大学で工学博士、定年退職と同時に名古屋大学で経済学博士を取得し現在、帝京大学名誉教授で都市の盛衰についての第一人者、佐貫利夫先生の著書『急成長する町、淘汰される町』によると、日本全体が人口減少時代を迎える中でも全国一律に人口が減少するのではなく、成長する都市と衰退していく都市とに分かれていくことが指摘されています。日本全体では、東京都の特に23区の夜間人口が急増中で都心回帰の動きが顕著で、あとは、愛知県の都市がトヨタの影響で成長都市が多く存在しているのだそうです。
 一方、秋田県の93%の都市が事前淘汰に向かっていることに代表されるように、総じて東北の県の都市は衰退に向かっているのだそうです。1093年日本の人口が1000万人だった時代に最大の都市は、もちろん京都ですが、その人口は16万人でした。その時代の第2の都市が奥州(岩手県)の平泉で15万人の人口を擁していたのだそうです。当時奥州藤原氏の拠点として、農業生産高が高く、金の生産力も高く、馬の生産力も高い経済と最先端の技術が集まる都市でした。それが、藤原氏の滅亡とともに衰退し、現在平泉には1万人も人口がいないのだそうです。一方の京都は、天皇が東京に移ったりいくつかの地盤沈下の要因を琵琶湖疎水などの様々な先進的開発事業でカバーして現在でも全国7番目の150万人の人口を擁する都市として実力を維持しています。琵琶湖疎水は、都市用水、工業用水、輸送用水路だけでなく発電にまで使い歴史的建造物は残しながらも成長発展させました。天皇のお膝元としての地位喪失という逆境をバネにしたチャレンジ精神が、京セラやワコール、任天堂といった京都発の企業に受け継がれていると言われています。
 この佐貫先生の本を読んでいて、都市の再生や都市が発展していくことは、企業経営と似ている部分が多いということです。環境変化に適応できずに何もしないで、緊縮財政だけをしていると縮小均衡の衰退路線でやがて消滅していくことです。むやみに設備投資をすることは、夕張や王滝村の例になるのでいけませんが、環境変化に積極的に適応していく投資は、どんどんしていかないと住みにくい町になってしまうということでしょうか。
 明治の初期に日本で一番人口を擁していた県は、首都圏ではなく新潟でした。農業が日本の基幹産業だったからです。今後の世界の中で、日本の中で地域の中で、どのような領域に生存領域を求めて環境適応を考えていくのか、企業のみならず行政も求められている時代です。
 長野県の成長都市は、軽井沢町や茅野市、安曇野市であり、長野市や松本市は残念ながら衰退都市に分類されています。自分の組織のみならず、地域の発展にも経営者としての意識を持ちたいものです。

もう資金繰りには困らない?!

~在庫担保で融資の道が広がります~

 経営者の皆様の中には、資金繰りにお悩みをお持ちの方が多いのではないでしょうか。そのような皆様へ、売掛債権に在庫を担保に加え、限度額を2億円まで受けられる制度が今年度から予定されています。この制度を活用することで、資金繰りの安定を図れるなど大きな効果があります。
 今までは売掛債権を担保にする制度でしたが、今回ご紹介するのはさらに在庫を担保に限度額が倍増する融資制度についてご紹介いたします。

  • 制度の概要

     銀行は融資を行う際、不動産担保や個人、第三者の保証を主な条件にしています。中小企業庁は、これらの不動産担保や個人保証に過度に依存している傾向を改善するため、売掛債権、在庫に注目して融資を支援していく方向になりました。
     現在、売掛債権を担保に融資を受け、仮に中小企業が借入を返済できないときは、保証協会が銀行に融資額の9割を保証して銀行と保証協会が一緒に売掛債権の回収をする制度があります。借入限度額は1億1、100万円で保証料は0.85%+銀行金利となっています。売掛債権には割賦代金や工事請負代金などの債権も対象になっています。
     建設業者の方で、公共工事が長引いて遅れたことによる立替金を売掛債権として400万円の融資を受けた事例もあります(中小企業庁HP参照)。
    制度の概要

  • メリット・デメリット

     この新制度のメリットは、①不動産担保や個人保証がなくても資金調達が可能、②資金の使途が自由、③通常融資では1.35%の信用保証料率が、この制度を活用することで引き下げるように検討されていることがあります。
     デメリットは、①在庫の価格変動リスクがあり、融資の金額に影響すること、②融資の使途を管理せず、仕入・外注以外に多額に使用すると資金繰りが圧迫することが考えられます。
     売掛債権や在庫の資産規模が大きい中小企業の皆様にとっては、資金調達の目的と資金の使途を明確にする計画を立て、この新制度を活用することで、今までより柔軟な資金調達と円滑な資金繰りが可能になります。会計担当者とご相談の上、ご活用を検討されてみてはいかがでしょうか。

※本文は、松本市巾上の税理士法人成迫会計事務所で執筆していただいたものを掲載いたしました。

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