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月刊中小企業レポート
更新日:2007/05/20

イノベーション

従業員関係の書類を作成しましょう

 毎年この時期は異動・入退社が重なり、新しい顔ぶれが揃う時期でもあります。手続きも様々発生しますが、採用・就労・退職に関する書類を、普段から作成・保管していますか?後付けで作ったりしていませんか?事務手続き上・法律上書類が必要だから作るのはもちろんですが、書面の作成は「残すこと」によりトラブルをなくすことが作成目的の1つです。1つずつ確認していきましょう。

■入社→労働契約書を作成する

 入社の際、労働契約の書面による明示が義務づけられています。トラブル回避のためやはり契約書を作成することをお勧めします。必ず明記する項目は、以下の4項目です。

  1. 労働契約の期間
  2. 就業場所・従事する業務
  3. 始業・就業の時刻、残業の有無、休憩休日について、賃金について、締め日と支払日
  4. 退職に関する事項

 従業員側の主張によりトラブルになる要因として、①入社前に聞いていた条件と違う②前の職場と扱いが違う、がよく挙げられます。契約内容を双方で確認をして、書面に残すことで上記のトラブルを未然に防ぎ、予防策を講ずることができます。
 労働契約にさらに追加したいのが、「試用期間」です。試用期間を設ける意味は、①仕事の様子・他の従業員とのバランスを見極めることと、②勤務態度・協調性などの問題から労働契約を解除したい場合に「本採用拒否」という手段を設けることです。ただし、2週間以上の試用期間を設けた場合は、試用期間中であっても一方的な解雇はできません。本採用と同じく解雇手当金(平均賃金の30日分)などが必要になります。
 重要なのは、試用期間から本採用に移行するタイミングで、双方の意志を確認することと、改善に向けて前向きな話し合いの場を設けるきっかけとなることにあります。

■退社→退職願を提出させる

 退職後のトラブルを避けるためにも退職願を提出させましょう。トラブルの原因としては、退職理由が会社都合なのに自己都合にさせられた、必要書類が集まらず手続きが出来ない、などがあります。事業主側としても、不用意に退職理由を会社都合にすると助成金が受けられないデメリットがあります。
 退職願には①退職理由(自己都合・会社都合)②退職日③提出日を書面で残します。また、貸与していた物品(制服・作業着・名刺など)の回収も忘れず行います。
 しかし円満に退職とならず、無断欠勤のまま退職となったり、本人と連絡が取れなくなる場合があります。それらの予防策として、入社時に「身元保証書」を提出させたり、就業規則に退職・解雇に関する規定を定めるといった方法がありますので、ご検討ください。

■通常時

 入退社時に限らず、就労関係の書類に不備はありませんか?税務調査でも就労関係の書類は必要になります。架空人件費の計上がないか調べるために、賃金台帳・出勤簿・タイムカード・組織図・配席図など、従業員であることを証明する書類を確認します。それらを何年分も遡って作成することができますか?また、助成金・雇用保険の手続き等でも労働契約書や出勤簿が必要になります。普段から作成し、保管できるような体制にしておきましょう。また証拠書類が残る点では、給与振込をお勧めします。給与振込控えが発行されるため、給与を本人に支給した証拠が残ります。
 従業員関連の書類を作成し保管することは、社内・内部トラブルを防ぐことであり、事業への信頼と従業員を守る手段の1つです。従業員には長く有益に働いて欲しいからこそ、特に節目には必ず書面を残す体制にしていきましょう。

※本文は、松本市巾上の税理士法人成迫会計事務所で執筆していただいたものを掲載いたしました。

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